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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第四章 光を探して

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一撃の伝言

 場所に当てがあるのか狭い路地を迷いなく進んで行くクルツ・リベリ。やがてギルドから少し離れた住宅密集地の中にぽつんとある空き地に到着し、そのど真ん中に二つあった岩に腰かけながら向かい合いつつ話す。


「お前に用があるのは他でもない、うちの祖先が残した話をしに来た」

「御眼鏡に叶ったということかな?」


「認めざるをえまい」


 さも当たり前だと言わんばかりの表情であっさり認めたのが意外過ぎてこっちが驚きを隠せない。ギルドで見た時は再戦を申し込みに来たのかと思って無視したんだが、悪いことをしたなと思い少しバツが悪い。


「じゃあありがたく情報を教えてもらおう」

「まぁお前もわかっての通り、すべて詳しく伝わっているわけではないからあまり期待するな」


 クルツ・リベリ曰く、祖先である”一撃”のショウはヤスヒサ・ノガミの師匠で武術を一から教えた人物だという。統一にも貢献し巨竜戦争の際には年老いてなお壮健で、弟子と一番槍を競ったという逸話が残っているようだ。


巨竜戦争を制し竜族との同盟が成った翌年、ヤスヒサ・ノガミはカイビャクを統一した。さらに年月が過ぎカイテン王ソウビが亡くなった時に跡目争いが勃発してしまう。あくまでカイテン側の争いとして介入をしなかったが、”一撃”のショウの助言と妻の一人である華夫人の要請により介入する。


元々カイテン王ソウビに次いで人気も高く、竜族と同盟を結びカイビャクを統一したヤスヒサ・ノガミに対してカイテン国民は統治を希望した。”一撃”のショウはそれを断りカイテン第一皇子ソウコウの忘れ形見を王に着けるよう進言し、ヤスヒサ・ノガミは受け入れたそうだ。


「ヤスヒサ・ノガミの陰に”一撃”のショウありってことか」

「まぁその辺は子供でも知ってる話だ。その後結局忘れ形見の後見人が謀反を起こし内乱が再度勃発してしまう。二人は率先して鎮圧したが、何度も内乱を起こされてはたまらないというカイテン国民の要求をのんで併呑しついに両国を統一した。不可侵領域は両国の間にあり、情報の共有は行われていなかったが、統一により共有が進む」


 ”一撃”のショウはヤスヒサ・ノガミに申し出て役職を全て辞職し、人生最後の仕事として不可侵領域の全容解明に当たった。調べた資料はネオ・カイビャクの図書館に貯蔵してあるが、それ以外に子孫に対して遺言というか予言のようなものを残していたという。


「神が現れた後、一年の間に不可侵領域でワルプルギスの夜を行えば望みは叶うだろう。妖精と聖刻を受けし少女と旅をする冒険者と会い、それを必ず伝えるようにと言われた」

「俺が妖精と旅しているのはそんなに有名なのか?」


「私はヤスヒサ・ノガミの師匠である”一撃”のショウの子孫だからな。ノガミ一族とも当然旧知だしゲンシ・ノガミ様は私の上司でもあり師匠でもある」


 世間は狭い、というか師匠に弟子が多いからそう感じるのだろう。まさか兄弟子だったとは……今後は師匠の名を名乗った方が後を考えるといい気がして来た。兄弟子だからといって許せることと許せないことはあるにせよ、だ。


彼も言っていたが存在が稀な人物であったし、それを知りようもなかったらゴブリンという種族のこれまでの行いを考えれば話し合う余地はないわけで。


「すみません兄弟子とは知らず」

「兄弟弟子など世界には幾らでもいる。ソイツが悪党かどうかは戦ってみなければわからぬことも多いので気にしていない。だがゴブリンを倒したことで殴ろうとして来た奴は初めてだがな」


「彼にはゴブリンの集落を教えてもらった恩がありましたので。人間とゴブリンの関係を思えば兄弟子の行動は正しいですしわかっていますが、自分としてはせめてと」

「お前とゴブリンの奇跡のような交流を考慮して誰もが対応できるほど人間は強くはない。私たちはそれに対応できるくらいには強いがな……そう考えると私にも悪い点がある」


「塀の中のギルドや住民からは竜騎士団(セフィロト)の評判が芳しくないようですが」

「だろうな。私はそうあるべきだと思って行動している。シャイネンが魔法の最先端都市であり竜神教が魔法の拡散を禁止している以上、何事にも厳しく取り締まらなければならない。シンラが起こしたような事件が再び起きないためにもな」


 クルツさんが教えてくれたが、シンラが事件を起こす前は今ほど厳しい対応は取っていなかったという。シンラが魔法書をシャイネンから楽に持ち出せたのも、竜騎士団(セフィロト)側の警備にも問題はあるが、住民やギルドが手を貸していたのが大きな要因になっているようだ。


物事は右や左からだけでなく、上からも下からも見た方が良いと先生も言っていたなぁといまさらだが思い出す。竜騎士団(セフィロト)側から嫌な対応をされてそれが基準となってしまい、住民側の意見をそのまま鵜呑みにしてしまったが、改めて聞いてみると住民側にも原因があったと知れば竜騎士団(セフィロト)の対応も仕方ない部分はある。


「いずれ魔法は広く世に使われて行くだろうが、シンラの件もありそのまえに法律などの整備を行わなければならないと竜神教は考えている。しっかりしたものが出来上がるには後数年はかかるだろうな」



読んで下さって有難うございます。宜しければ感想や評価を頂ければ嬉しいです。

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