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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第四章 光を探して

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竜騎士団ーセフィロトー

「ジン、面白そうなのと話してるわね」

「おや、お連れさんは理解がありそうだ」


 シシリーは頑なに話をさせたくなさそうだ。妖精と言うのは悪戯が大好きで他者を貶めるのを生きがいとしている側面がある、というのは以前シシリーが話してくれたものだ。今目の前に居るゴブリンぽい者は悪戯が生きるメインになっているような存在だと思うし、だからこそ話をさせたくないのだろう。


二、三言葉を交わしただけだが、最初の感じと違いなぜか敵意や悪意を感じられない気がする。一応聞いてみようとシャイネンディアが森から畑に出て来るという話をすると、彼はこの奥に他の地域から流れて来たゴブリンの群れがその原因じゃないかと言う。


「どうする?」

「ギルドに報告するべきだろうな。依頼がなくなるのは残念だけど、これからを考えれば対策をしてもらった方が良い」


「アンタ変わった人だね」


 目を丸くしてゴブリンぽい者がこちらを見ながら言う。戦ったところで全滅させられなくて逃がしてしまうと、他に被害が及ぶ可能性があるからだよと告げるとニヤッと笑った。


「なにが可笑しいのよ!」

「可笑しいだろ? こんな時代に自分より他人の明日を心配するなんてよ。妖精がくっついてる理由がわかるぜ」


「ゴブリンたちの群れがいる位置を教えてもらえるか? 一応視認して位置を把握して報告したい」

「序だ、案内しよう」


 ゴブリンぽい者に案内してもらい、相手から見えないギリギリの位置に移動し視認して集落に戻ることにした。去り際に礼を言い好物は何かと問うと、無いと言うがもう一度訪ねると渋々りんごだと答えてくれたのでそれも感謝し去る。


地主にも調査した結果を告げギルドにも報告するというと、どこかほっとしたような顔をした。地主なのだから不味いしいわけでもないだろうに……正確に報告するのが嫌な理由があるのだろうか。どこか違和感を感じながらギルドへ戻り報告すると、ギルドは慌ただしくなる。


何度も別の職員が本当なのかと問いただしに来たので、都度状況を説明し視認したことと場所を記した地図をみせた。


竜騎士団(セフィロト)が出て来るぞ……」


 少し離れたところでギルド職員がボソッと言ったのを聞き逃さなかった。竜騎士団(セフィロト)ってなんだ? ギルドが恐れるくらいの存在なんだろうか。解放されずにその場で三人でのんびりしていると、ギルドの入口からプレートアーマーを着た者たちがどかどかと入ってくる。


「おい、お前が報告者か?」

「そうですけどどちら様ですか?」


「名乗る必要はない。さっさと内容を話せ」


 なるほど、地主が報告を渋って冒険者にさせようとしたのが今わかった。こんな武装したチンピラと誰だって話したくはない。とはいえここで揉めるのも面倒なので同じ話を繰り返した。


「地図を寄越せ」

「どうぞ」


 差し出すともう用はないとばかりにひったくって外へ出て行った。あまりの態度に苦笑いしながらエレミアとシシリーを見ると二人とも自分の代わりに憤慨してくれている。


「あの御爺さんの弟子って名乗れば連中の態度も変わったんじゃないの?」

「そうよそうよ!」


「こんなことで師匠の手を煩わせる必要はないさ。俺たちが少し我慢すれば済む話だし」

「こんなところじゃなけりゃわからせてやったけどね」


「ぶっ飛ばすわ!」


 二人を宥めて少し落ち着かせてからギルドを後にする。あまりよくない感じで目立ってしまい、翌日以降仕事をもらえるか心配だったが、考えても仕方がないので居住区側のレストランで三人で食事をし宿へ戻って就寝した。


翌朝目覚めたのが少し早かったようで、シシリーもエレミアもまだ寝ていた。宿の外に出ると朝靄がかかっていたので、うろつかずに宿の前で背伸びをしストレッチを始める。暫くストレッチしていると、その朝靄を吹き飛ばす様にプレートアーマーの集団が走ってきた。


昨日の様子からして向こうが避けるはずはないなと考え宿へ入りその様子を伺って居ると、集団の中に一人だけ馬に乗っている目立つ人物がいる。おかっぱの金髪で目付きが鋭く歯がサメのようにギザギザした人だった。


来ている鎧は他と違い金色で正直近付きたくないなと思ったのでなるべく視界に入らないよう隠れる。


「朝から竜騎士団(セフィロト)か……お客さん悪いもの見たね」

竜騎士団(セフィロト)ってなんでしょう」


「連中は竜神教の守護騎士だよ。竜神教が悪とするものを問答無用で切り刻む集団で、ギルドとも揉めることが多いだけでなく一般市民も絡みたくない連中さ。結果的には良いことをしてるんだろうが、絡むと高圧的で威圧的でとにかく疲れる」


 宿の親父さんが声を掛けてくれたので尋ねると説明してくれた。地主が消極的な態度だったのも竜騎士団(セフィロト)が理由なら仕方ないなと思う。あんなの自分だって絡みたくない。なんであんな態度なのか知らないが、とても好かれるような存在ではないし好かれようとも思ってないのは確かだ。


「出来れば絡みたくないなぁ」

「冒険者やるなら他所が良いよ。ここは形式的にやってるだけで、ほぼ竜騎士団(セフィロト)の下部組織みたいになってる。以前あった魔法強奪事件もマラニア崩壊事件も、その根っこは竜騎士団(セフィロト)の横暴があると思うがね」


「魔法強奪事件とマラニア崩壊事件、ですか」

「ああ。これに関しては新聞で軽く報じられた程度のこと以外は喋れない。知りたければ王様に聞くのが良い。あの人でなきゃ今頃竜騎士団(セフィロト)に全員が暴動を起こしてる」




読んで下さって有難うございます。宜しければ感想や評価を頂ければ嬉しいです。

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