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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第四章 光を探して

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シャイネンでの仕事

 城へ着くと門兵に今朝の件を詫びられた。師匠が偉いからと言って弟子である自分が偉いわけではないので謝罪は必要ない旨を伝え、師匠の様子はどうかと尋ねると騒動は収まったらしいが相変わらず入出禁止らしい。


教団の仕事とか国の仕事が止まるんじゃないかと聞くと、こういう時のために色々対策を練っているらしく大臣以下心得て動いているようだ。どうするかなぁと考えていると門兵から師匠の伝言があり、なるべく早くするように頑張るので待っててくれという話だった。


宿については国の指定のところに泊まるなら無料らしい。エレミアとも話し、ただ待っているだけというのも暇なので依頼を受けようとなった。マテウスさんとダークエルフの女性は国の仕事があるので一旦解散となり、また明日の朝稽古を付けてくれると言って去っていく。


「出来れば色々食べ物屋さんとか雑貨屋さん回りたいわ」

「良いと思うけど、妖精って悪戯だけが趣味じゃないの?」


 エレミアも他所で妖精と出くわし酷い目に遭ったことがあるそうだ。シシリーのようなタイプの妖精は初めて見ると言われ、自慢げに胸を張るシシリー。


「いつかシシリーと御店を出したいなって話をしててね。その視察みたいなもんだよ」

「妖精の作った物を売って平気なのかしら」


「というと?」

「そのアイテムに魔力がこもるんじゃないかってこと」


「特殊なアイテムを使わない限り平気だと思うけど。ジンのシャツも破れた部分、私直してるし」

「ジンて裁縫苦手なの?」


「苦手なわけないだろ? 昔から一人で生きて来たようなもんだから、数ある中でも裁縫は得意な方だ。次に料理かな」

「どうもジンとシシリーって規格外よね」


 よくわからない理由で呆れられつつギルドへ一旦向かう。なにかあった時のために少しでも残しておきたいし、出来る時に稼いでおこうと思ったからだ。ギルドの受付に冒険者証を提示して依頼書の束を借りる。


ヨシズミ国のギルドとは違い、今は信用も無いので一般的に出回っているシルバー級の依頼だけだ。採取などは土地勘が無いので現段階では避け、討伐系の依頼のページを集中的に見る。


「このあたりから始めて見たら?」


 エレミアが指さした依頼は十ゴールドで、シャイネンディアというシャイネンの周辺に生息するシカを討てというものだった。農作物への被害が多いので至急お願いしたいというものだった。料金よりも困っている人を救うのは冒険者の役目だろうと思い、早速カウンターにシャイネンディア討伐を受けると申し出た。


依頼の紙と地図をもらい早速三人で移動を開始する。町の中を出る時に冒険者証を門兵に提示すると、次回から必要無いですと丁寧に言われ敬礼された。師匠の取り計らいかなと思ったが、あまり特権みたいにしているのも嫌なので見せるだけ見せようと思う。


「こんにちは! シャイネンの冒険者ギルドから来ました!」


 高い塀に堀から少し離れた場所には集落があり、そこの更に北東にある家が依頼主だ。周辺の畑を管理している地主だというお爺さんが出て来てシャイネンディアについて話をしてくれる。元々シャイネンディアは居たし、被害が大きくならないうちはそのままにしておいたが最近荒らされる頻度が高くなったので依頼を出したようだ。


お爺さんの予想では、他所から何かが来たかで森の中の勢力図が変わったのではないかと言う。その話を基に三人で畑の先にある森に捜索するため入る。


「良いように使われ過ぎじゃない?」

「なにが?」


「この依頼よ。達成目標はあくまでもシャイネンディアの討伐にあるわ。でもあの口振りからしてあの地主は別に原因があるのをわかっていて、あえて安く済まそうとしてこの依頼を出しているのは明白」

「とはいえ今具体的な証拠はないだろう?」


「なるほどね」


 エレミアは納得してくれたようで、周囲を見ながらなにか痕跡がないか探して始めた。自分としてもエレミアの意見はもっともだと思う。ここは竜神教大支部直轄の都市。事が大きくなるような事案は竜神教大支部で対応するはずだ。


考えをめぐらすと、大支部が対応するとなった場合住民にとって金銭とかの面で不都合になる点もあるのかなという点に至った。まだ来て一日で事情も把握していないので、具体的な証拠をつかんでからそのあたりを尋ねないとただの陰謀論者になってしまう。


「おや、こんなところでピクニックかい?」


 シシリーも出て来てくまなく探していると、不意に暗がりから声が掛かる。視線を向けた瞬間、シシリーが前に出て視線を遮った。


「アンタなにか用?」

「なんだお仲間か。人間を連れてどこの谷に落とそうっていう算段だい? 協力しようか?」


「あっちへ行きな」

「あら怖い。後ろの御大臣の顔くらい見せてくれてもいいだろう?」


 シシリーにフェイントをかけてどかし、顔が見える。ゴブリンというにはあまりにもやせ細り、より深い緑色をした目付きの悪い者が現れた。黒いローブを纏っているからただのゴブリンでないのはわかる。


「……人間、なのかい?」

「え、一応」


「ジン、見ちゃダメ!」


 急いでシシリーが前に来て隠してくれたが、特に見てもどうにもならないんだけどなにかあるんだろうか。


「なにかさがしてるのか?」

「さっきから質問ばかりね! あっち行ってよ!」


「森に起こってるであろう異変を探してる」

「へぇ……異変ねぇ。まぁ人間からして異変なら日常茶飯事だが、そうではないのだろう?」


「ジン! こんなのと話したら駄目よ! どうせ騙すんだから!」

「言う通りだが、お前さんも元は同じだろう?」



読んで下さって有難うございます。宜しければ感想や評価を頂ければ嬉しいです。

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