表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第四章 光を探して

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

179/616

稽古二本目

「では次は自分と手合わせ願います」

「是非!」


 一旦距離を取り一礼してから構える。シシリーにもナビを頼んで草原駆ける鳥(メドウ・テバチャ)対策をしてから突っ込んで行く。稽古を付けてもらう方が受け身なんてありえない。そういう意味でもエレミアは実に稽古を受ける者らしかった。


「一閃!」

「ジン、後ろへ!」


 一閃の動きはさっき見たので一瞬足を止め間合いを図り飛び込む機会を窺っていたが、シシリーの合図通り後ろへ飛び退く。草原駆ける鳥(メドウ・テバチャ)が拳を地面に叩き付けていた。あんなムッキムキな体でこちらの攻撃を素早く察知して動き、無駄なく攻撃してくるなんて驚くしかない。


二人の攻撃を避けて一撃入れるにはこのままでは不可能と判断し、フルパワーで覆気(マスキング)をし肉体強化をして再度懐へ飛び込む。


「一閃!」

「ジン、左側面!」


 一閃が放ち終わるとそれに合わせて草原駆ける鳥(メドウ・テバチャ)が追撃に来る。鞘へ刀を納めるまでの大きな隙をカバーする存在という実に理にかなった相棒だ。だが!


「うおおおお!」


 うちの相棒シシリーに予め来る方向を聞いていたので、刀が戻るとの同じ速度で間合いを詰める。一閃はマテウスさんの通常斬る間合いよりも広い場所への攻撃であり体も前のめりになり、そのまま納めずに攻撃を繰り出すには相当な腕力が必要だ。


ダークエルフはエルフよりも体力的に勝っているが、人間より勝っている訳ではない。一度刀へ納める動作に入ってしまえばそれを変更するのは至難の業。ここを抜ければ一撃入れられる。


「無茶な真似を」


 草原駆ける鳥(メドウ・テバチャ)の唸る拳が左側面から迫り当たる瞬間、左足を思い切り地面に着きながら前傾姿勢を取りつつ、右手で持つ不死鳥騎士団の盾へ左腕を押し当て体重をかけながら受けた。拳が戻るのを待たずにそのまま右足で地面を蹴り、目と鼻の先の距離まで詰め切る!


マテウスさんは慌てず、先ほど見せたように刀を鞘ごとこちらのアゴ目掛けて突き出して来たが、読んでいたので避けつつ風神拳の構えを取りながら背後に回り込む。マテウスさんと草原駆ける鳥(メドウ・テバチャ)が同じラインになった瞬間、風神拳を放った。


あと少し距離があれば避けられたかもしれないが、距離的に避けられず草原駆ける鳥(メドウ・テバチャ)と共に吹き飛ぶマテウスさん。この空間が何かで隔離されていて本当に良かった。


「な、なにしてんのアンタたち!?」


 急に入口と思われる場所が現れ、さっきのダークエルフの女性が入って来て叫び声を上げながらマテウスさんに近付いき、草原駆ける鳥(メドウ・テバチャ)を押し退けて介抱し始めた。


「なにって稽古を付けてもらってたのよ、ねぇ?」

「そうそう。マテウスさんにこちらの実力を知ってもらうためのものだけど」


「だからってなにも殺さなくてもっ!」

「死んでないで御座るよ?」


 むくりと起き上がるマテウスさん。というか草原駆ける鳥(メドウ・テバチャ)が出てるのを見れば気さえ失っていないことくらいわかりそうなもんだけどな。


「いやぁ二人ともお見事。どうやら拙者見誤ったようで御座るな」

「いえいえ多少なりとも知って頂けたなら何よりです」


「刀も使えて精霊も使えるとは流石キーファス家の人ってところかしら」

「あまりキーファス家だからというのはないで御座るよ。色々な人に鍛えて頂いたからこそ今があるので……暫く先生のところにいらっしゃる間、相手としては不足かも御座らんが、拙者が組手の相手をさせて貰うで御座る」


「ありがとうございます!」

「さて、とりあえずお互い手の内をある程度晒して紹介も済んだのであれば、町に出て日頃生活していく上で必要なところなぞを案内させて頂くで御座る」


 こうしてマテウスさんの後に続いて鍛錬ルームを出て町に戻る。あとから例のダークエルフの女性が何故がずっと付いて来てあれやこれや文句を言っていたが、構わず近所の便利な八百屋さんとかお肉屋さんを教えてもらい、冒険者ギルドにも顔を出した。


シャイネンのギルドでも普通にシルバーランクとして扱ってもらえ、何か依頼を受けたければどうぞと言ってもらい胸をなでおろす。エレミアもシルバーランクとして師匠の計らいで登録して貰えるようだ。


「今は図書館が見れるようになるのを待つしか無いわね。例の不可侵領域について少しでもわからないと相手の良いようにされてしまうかもしれないし」

「この世界を作ったという男を倒す手段かもしれないからね」


 エレミアはその言葉を聞いて頷く。彼女がどうして長い時を生きて来たのがわからないが、神に関係しているのはそのこだわりからなんとなくわかる。師匠は祝福を受けたとか言っていたので知っているのかもしれない。


自分としてはあえて無理に聞き出す必要はないと思っている。あの男は危険だという認識は同じだし、アリーザさんを救うためには倒さなければならない敵の一人だろうし。不可侵領域に眠るものが彼を倒すための力であることを祈らずにはいられない。


「真ん中……と言うか全体の南側は観光地で御店と宿、それに遊興施設が多く、北が居住者の区域になっているで御座る」

「案内有難うございました、助かりました」


「案内完了ということで一旦城へ行くで御座る。今後のことを詳しく決めねば。ジン殿たちはここにずっといるわけではないので御座ろう?」

「はい、調べ物が済めばネオ・カイビャクに行きます」



読んで下さって有難うございます。宜しければ感想や評価を頂ければ嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ