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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第三章 爵位の意味を探して

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どこまでも怪しい宰相閣下

 目的を達し得ないとわかっていたがノービル殿下たちを止めはしなかったのか。上手く行けば勝ち馬に乗る作戦だった……というわけでもない感じがより不気味さを感じさせる。この人の目的は一体何処にあるのだろうか。


「陛下がどこにいらっしゃるかご存知ですか?」

「無論だ。だが騒動が収まっていないのなら教えるわけにはいかない」


 口振りからして陛下の行方を知っているらしい。怪しいっていうジャンルがあるなら最上級の人物だったはずなのに本当に今回の件は関係していないのか?


「うちの師匠……ゲンシ・ノガミも場内を探して移動しておりますし、中庭にノービル殿下一派も倒れています。その間に人間教は相当数追い払いましたから大丈夫かと」

「確かにな……ベア伯爵はどうした? ノービル殿下一派の主戦力のはず」


「なんとか辛くも勝利致しまして、城の外へ飛ばしました。戻ってくるにしても正面の入口にはクライド殿がいらっしゃるので難しいのではないかと」

「ふむ。ジン・サガラの言に偽りなしと信じるとしようか」


 宰相閣下はそういうと立ち上がり、目の前にあった机の横へ移動すると押し始めた。ズズズッと音を立ててずらして行き、一つ分ずらすと宰相は机のあった場所にしゃがみカーペットをつかんでどかす。床が現れたが一メートル四方の切りこみがあり、中央には金属部分があった。


金属部分の端を押すとくるっと周り取っ手が現れる。それをつかむとバカッと開いた。こちらを見て宰相はニヤリと笑う。陛下より前からこの国の宰相をしているのだから、隠し通路くらい知ってて当然と言ったところか。


蓋を完全にどけてから脇へ移動し片膝を付いてから床を二度叩く宰相。暫くすると蓋をどかした場所から陛下とシンタさんが出て来て混乱せざるを得ない。皆が黒幕と疑っていた宰相がまさか陛下を匿っていたとは。案の定陛下もシンタさんも苦笑いしてる。


「さぁ陛下、城内の動きも大分落ち着いて来たようですので沙汰をお願い致します。ジン・サガラ、陛下の前に立ち賊からお守りせよ」

「は、はっ!」


 よくわからないが従う他無いと考え立ち上がり部屋の扉を開けて外に出る。動く敵の兵士はおらず中へ視線を向け頷くと、陛下と宰相そしてシンタさんが出て来た。行く先を尋ねると状況を問われたので得た情報を全て話す。先ずは城の入口へという宰相の言葉を聞いてその方向へ歩き出した。


師匠も助っ人として来てくれていたのでだいぶ静かになっている。特に邪魔も入らず城の入口へ移動し、そこにいたクライドさんと王妃に王女と合流した。感動の家族再会の横で宰相はクライドさんに詳細な情報を求め、人間教とノービル殿下一派の捕らえられる限りは捕らえたと伝えた。


宰相閣下はノービル殿下はどこかとクライドさんに問うと、中庭で寝転がっていたノービル殿下を回収しようとしたところ、突然ワインレッドのローブを纏う者たちが現れ連れ去られたと言う。


「残念だったなジン・サガラ。手柄を一つ失った」


 皮肉を言う宰相に対しどう答えて良いかわからず苦笑いする。ワインレッドのローブとなればもう暗闇の夜明け以外の何ものでもない。連中がノービル殿下を連れ去ってなんの得があるのか。手柄なんて少なければ少ないだけ嬉しいくらいだが、暗闇の夜明けの不可解な動きに困惑している。


「まぁ皮肉はさておきここから忙しくなる。シゲン・タチにも連絡し兵士を回してもらうように。ジン・サガラはギルドへ行って非常事態宣言の発令を伝え、ギルド員総出で国境の封鎖と逃げ出そうとする人間教や兵士の捕縛に協力するよう依頼を私名義で出してくれたまえ。よろしゅうございますな、陛下」


 家族との再会を涙ながらに喜ぶ陛下に対して問うと頷き、宰相閣下も頷いたのを見て早速言われた通りにするべくギルドへ向かう。ギルドに居たダンドさんとヤマナンさんに言われた通りの内容を告げると、受付にクローズドの立て看板を立てその横に非常事態宣言発令中の張り紙も出した。


ギルド内にいた冒険者たちに早速各門に居る兵士たちと交代するよう指示を出し、それを受けて慌ただしく冒険者たちも動き出す。女性の事務員さんたちには女性の冒険者たちと共に、一般国民へ声を掛けて回るべくギルドから出動した。


皆の素早い動きに感心しつつ、動き始めた報告を宰相閣下へすべく一旦城へ戻る。道中でクライドさんに会い、城があれているため仮本営を議会場に設定しそこで兵士たちから報告などを受けていると聞いてそちらに向かう。


報告のために多くの兵士たちが並んでいたので一番最後尾に並ぶと、どうぞどうぞと言われあっという間に先頭まで来てしまう。難しい顔をした宰相閣下にギルドの動きを告げると頷き、家が火災したそうだから見て来いと言われる。


気を使わないで欲しいというも、アリーザさんの件があるから言っていると言われ慌てて敬礼しその場を後にして家に戻る。町長に犯人たちの確保を頼んだし、まさか二度もうちには来ないだろうと思いながらも家路を急ぐ。



読んで下さって有難うございます。宜しければ感想や評価を頂ければ嬉しいです。

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