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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第三章 爵位の意味を探して

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中庭での獣族との戦い

「宰相閣下が敵にやられては不味い! 探しに行け! 私はコイツらを捕まえているからっ!」


 ライオン男の指示を受けて信者と兵士が城の中へと移動し、王妃様と王女様がはっきり見えるくらいに相手が減った。


「私が相手の気を逸らすからその隙に」

「頼む」


 シシリーはゆっくり茂みから出てライオン男たちの間を飛び回る。急にそんなものが現れれば何かと思って混乱するだろう。兵士と信者たちはまんまと混乱し騒ぎだす。ただライオン男は鎮まれと言いながら周囲を警戒していた。まだ飛び込んでも無理だろうと考え、茂みを移動しギリギリまで近付く。


「こんな小さな子を人質に取るようなお前たちは地獄に落ちるぞ……神は卑怯なお前たちをお許しにならない……家族にもきっと害が及ぶ」

「ひ、ひぃいいいい! お許しを!」


 女優シシリーの低い声での演技が冴えわたる。こういう場合人間教の信者にはこの手の話は刺さるだろう。特に人間族に繁栄をもたらすきっかけを作ったヤスヒサ・ノガミを神と崇める者たちには卑怯と言う言葉は重い。


「に、逃げるな人間教信者ども! いまさら逃げたところでお前たちの罪は……糞ッ! 皆も落ち着け! これはまやかしだ!」

「ま、まやかしって魔法ってことですか!? 魔法使いがいるのか!?」


 俺が失言を突くと兵士たちはさらに混乱して行く。魔法使いとは大多数が竜神教であり、魔法によるものであれば竜神教が介入したと受け取られても仕方がない。竜神教に睨まれるとなると話はこの国だけで済まなくなる。


「お、お前たちまで逃げるな! 戻れっ!」


 ヨシズミ国だけの反乱ならまだしも魔法を使う人間たちまで敵に回したら、家族が生き延びる場所がなくなる。兵士たちは敵対するリスクよりも逃げる方を選択し逃げ出した。ここがチャンスと直ぐに覆気(マスキング)し茂みから飛び出す。


「や、やはり貴様!」

「やはりってなんだ……よっと」


 縄で縛られていた王妃様と王女様を抱えて飛びのく。急いで下ろし先ずは王妃様を野宿用のナイフでロープを外へ引っ張り切る。王女様も解放しようとするが、黙って見ているはずもなくライオン男が突撃して来た。王妃様にナイフを渡しライオン男を迎撃するべく間合いを詰める。


「おのれぇ!」

「待たせたなライオン男!」


「我の名はベア伯爵! 子爵如きに後れは取らん!」


 ライオンなのにベアとか俺を笑わせに来てるのかと思ったが、それを帳消しにするほどの唸る拳が向かって来た。半身で避けて鎧越しではあるが思い切り蹴りを入れる。獣族な上にガタイも良いので、人間族なら吹き飛んでるレベルの攻撃でも対して飛ばない。


腹部を抑えているが、痛いのではなく鎧の損傷確認だけというのはこちらを見る目でわかる。生き生きとした目をしていて、戦うのが本職と言いたげな顔をしてニヤリと笑う。


「ふん、力だけはあるようだがこの程度では我を倒せんぞ?」

「全力で頑張らせてもらう。だがアンタがここで釘付けになってノービル殿下の勝率は上がるとは思えないが良いのか?」


 言われて気付いたみたいな顔をしたベア伯爵。リアクションを見るにノービル殿下側の大きな戦力としてはこの人が一番なのかもしれない。


「直ぐに片付けてくれるわ!」

「全力で来い!」


 焦ればミスが出るのは周知の事実。体術がメインではないのか腰に付けていた剣を振り回し始めたが、王妃様たちが危険なのでおるべく思い切り剣腹を強打する。剣はベア伯爵ほど強靭ではなく、なんとかヒビを入れることに成功。振り回し続けている間に何度もヒビの入ったところを集中的に殴り続けると、こちらが避けてベア伯爵が地面を強打した瞬間、バキンと音を立てて剣は折れた。


「くっ……やはりただの人間族ではないと言うことかっ!」

「さっきからやはりやはりってなんなんだ」


「どこの生まれかもわからんただの人間族がいきなり貴族になれるほど安くはない。度重なる功績も仲間の援助などと断っていたとも聞いている。調べれば竜神教の教会にも入り浸り研鑽を積んでいるとわかった。これでただの人間族なら我々獣族など入り込む隙間もあるまい!」


 獣らしく縄張り意識が強くそれを護る為に危険な要因は見つけたら徹底的に調べているというわけか。貴族主義でなければ国のためになる重要な人物っぽいのに残念だ。


「今からでも遅くない、陛下に投降する気はないか?」

「問答無用!」


 拳を前に突き出し吠えるベア伯爵。あくまで武人としての優劣を今は決めたいんだな。身体能力的にはただの人間族では相対したところで直ぐにやられてしまうだろう。真っ直ぐ受けてはこっちの腕も持たなそうだし化勁を使って無力化しつつ、ダメージを蓄積して行くしかない。


「ウォオオオオオ!」


 咆哮を上げてから突っ込んでくるが、真っ直ぐには受けずに円を描くように移動していく。相手もそれを見てゆっくりと間合いを詰めて来た。覆気(マスキング)なんてしなくてもその気が体から溢れているのが見える。


本能的なもので気を放出しダメージを軽減しているのかもしれない。こうしていると獣族に人間族が勝るものなんてあるのか疑問に思ってしまう。



読んで下さって有難うございます。宜しければ感想や評価を頂ければ嬉しいです。

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