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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第三章 爵位の意味を探して

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きな臭い周辺

「おはようございます代行!」


 代行が当たり前になっているのが嫌すぎる。昨日も付いてくれた青年が椅子から立ち上がり駆け寄っってくると、これまた当たり前のように応接室へ促され臨時の机に座らされて報告を聞く。ほとんどは受付嬢と同じ内容だったが、最後に事務員さんたちの予想を付け加えてくれる。なんと一番早いのがヤマナンさんの回復という厳しいものだった。


「ヤマナンさんの体調そんなに悪いの?」

「あの人は体調を崩さないのが最大の取柄って自分で言うくらいなので」


「ダンドさんのはそれより悪いのか」

「はい。隣国との関係は悪くない……というか互いに流通を止めて得をするようなことは一つもないので、今回の件はギルドに対する抵抗なのかもしれません」


 隣国は政治情勢が芳しくなく、ギルドとしても滞在に注意喚起を始めていてそれが観光客の減少に繋がり睨みあう事態になっているというらしい。


「いきなりギルド長とミレーユさんだけでなくダンドさんも足止めとか何があるやら」

「何事もないのを祈るほかありませんが、それでもこの町のギルドを止める訳にはいきません。冒険者の皆さんの生活もかかっていますし」


「俺の生活もかかってるんだけど」

「勿論代行にもお給料はお出ししますからご安心ください」


「依頼より高い?」

「全然」


 笑顔で即答する彼の全然が安いというのは察した。とは言え冒険者の生活があるのは間違いないのでここは安くても頑張る他無い。


「君名前は?」

「……た、大変失礼しました! 私ヒイロと申します! 以後お見知りおきを!」


 何度も頭を下げてそういうヒイロ君に、皆を集めて朝礼をしたいというと直ぐに準備しますと答えてくれて部屋を後にした。そんなに間を置かず準備が出来たというので事務室へ行くと皆立ち上がり挨拶をしてくれる。


「そんなに長い間ではないと思うけど宜しくお願いします、ジン・サガラです。昨日に引き続き依頼のチェックをしつつ、時間が空いた時で良いので依頼書の仕様について相談があるので担当者の人お願いします」

「こないだの荷受け場で揉めてた件ですか」


「そうです。揉め事をゼロは無理でもなるべく少なく出来ればそれに越したことはないので、出来る範囲でやって行きたいと思います。皆さんから何かありますか?」


 特になしとなり業務が再開される。応接室へ戻ると同時に皆が次々入って来て書類とサインを求めて来た。ただサインするのは怖いので内容をさっと読んでみる。


「これ、宿の修理代って書いてありますけど」

「二階の客室で汚れと破損があったらしく、修繕しようにも積立から足が出るみたいです」


「あとで現場を見に行くので保留で。次の人……これは?」

「ギルドの運営資金で貸し付けを行っているのですが、返済が遅れているので状況確認のために人を派遣したいので許可を頂ければと」


「元冒険者でヤマナンさんの知人か……詳しく調べて貰いたいとギルド長代行が望んでいると付け加えて下さい。次」


 ぱっと見た感じそれ以外には問題になるような案件は無かったのでサインに応じ依頼書の確認を進めていく。シシリーも手伝ってくれているとはいえ、昨日の件もあるし出来れば人手が欲しい。子爵にならなかったらこの件で悩む必要はなかったんだけどな、と思った時ふともう一人新しく子爵になった人間を思い出す。


「ヒイロ君、あとで御城に使いを出したいんだけど」

「どんな御用でしょうか」


「陛下に事情を話してエレミア・アナヒルの召喚を。流石に欠員が多くて国家運営にも影響が出かねない」

「心得ました。私が行ってまいります」


 ヒイロ君は一礼して部屋を出て行った。依頼書の確認をしつつ不備にチェックを入れ、事務員さんに手渡して新しいのを貰うというのを三往復ほどしたころで応接室のドアがノックされた。


「どうぞ」

「お連れ致しました」


「何なのよ!」


 兵士とヒイロ君に囲まれてエレミアが部屋に入ってくる。ソファに座るよう促すと鼻息荒く勢いを付けてどかっと座るエレミア。苦笑いした後、兵士とヒイロ君に対して頷くと一礼して部屋を後にした。 


「私を呼びつけるなんていい度胸じゃない。死にたいの?」

「死にたくはないけど忙しいから協力してくれこれも子爵の仕事らしい」


「一人でやりなさいよそんなの」

「良いのか? 陛下からのお達しを今無視して。怪しいなと思われてる程度じゃ済まなくなると思うけど」


「……覚えてなさいよ!」

「頭が悪いから忘れるよ。それより仕事を頼む」


「何をするのよ」

「ギルドで配ってる薬草の管理と、依頼で怪我をした人の状況を確認して欲しいんだ」


「……あら苦情処理でもさせられるのかと思ったわ」

「これ以上余計な仕事は増やしたくないよ。そんなのよりエレミアの得意分野なんだからよろしく頼む。何か改善点があれば教えてくれ。ヒイロ君!」


 再度ヒイロ君を呼び出しエレミアが担当するために必要なレクチャーをお願いした。代行になってみて改めてギルドって細かい仕事までしてるんだなと感心したし、ギルド長がどんな人なのか興味が出てきた。



読んで下さって有難うございます。宜しければ感想や評価を頂ければ嬉しいです。

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