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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第三章 爵位の意味を探して

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絡まる糸

「私から提案したいのは、外国人に対する爵位取得の緩和でございます」


 宰相からの提案に場内はざわつく。原因は彼が貴族連合の纏め役であるからだろう。昔からある貴族を大事にし利権を取り戻そうと活動しているのに、外国人の爵位取得の緩和は真逆の政策だと思われても仕方がない。話が進んでいくと、必要性と重要性を説くところで俺の話題が出された。良いように利用されては堪らないと考え手を上げて発言の機会を求めたが無視される。


「宰相閣下、あなたの提案の肝となっているジン・サガラが発言権を求めているが?」

「陛下、ジン・サガラはまだ国の内情や仕組みそして国際的な状況をわかってはおりません」


 陛下が見兼ねて促したがそれでも拒否する宰相。いまいち理由がわからなくて手を上げ続けた。


「だからこそ彼の意見は貴重なのではないかな? 我が国特有の諸々を知らない方が良い意見がだせるかもしれない」

「それは楽しみですな。ではジン・サガラ、意見を」


 陛下が言うならばと仕方なさそうに答えこちらを見ながら頷く宰相。なんだかえらい期待値を上げられてしまったが、そんな上等な意見を出そうと考えずに思ったままを述べる。自分としては外国人だからどうとか国がどうとかではなく、住んでいる場所お世話になっている人々の為に戦いそれが功績に繋がった。何人だから緩和させるとかいう話になると逆にそれが差別につながるのではないか、と伝える。


「能力でヨシズミ国人に勝てるから余計な真似は不要、と?」

「何人かで拘りをみせ執着する行動には付き合えないと言っているのです。宰相も御存知の通りヨシズミ国には優秀な人たちが大勢います。この国はこの国の人々のものであって外国人のものではありません。不当な扱いを受けているならまだしも不必要な厚遇は余計な軋轢を生む温床となりえます」


「不当な扱いを受けた時に貴族がいれば頼りになるのではないかな?」

「貴族でなければ何も出来ない国であればそうでしょうが、ヨシズミ国は違う。それに自分も貴族になる前はなにかあった際には他所の国に移動しようと考えていました。ですがヨシズミ国に代々根を張る人たちはそんな簡単に移れない。国から厚遇を受けるのであれば自分も国に貢献すべきです。それはヨシズミ国人であろうと外国人であろうと変わらない筈。そこを履き違えてはならないかと」


「貴族には貴族たらんとする気概が必要である、と言いたいのか? ジン・サガラ」

「立場が上がれば上がるほど責任も大きくなりますから、緩和して爵位を得た貴族に貴族の責務が果たせましょうか。自分にはそれが可能とは思えません。よって緩和に付いては反対させて頂きます」


 場内に拍手が鳴り響く。別に大したことは言っていない。陛下が日頃示しているように帰属意識、国に対する責任を果たすなら国もそれに応えるというのを、提案の件に当てはめて言っただけだ。そしてあわよくば自分の爵位もなかったことにならないかと思っている。


「となるとサガラ子爵はご自分の爵位を返上なさるのも辞さないので?」

「ええもちろん……! なんでしたら今すぐ返上いたしますとも……!」


 ノービル殿下がそう聞いてきたので目を閉じ拳を握って悲しそうなそぶりをしつつ力説して見た。町長に頂いた家に関しては稼いでお支払いするし、町長も言っていたが冒険者として稼いでいた方が儲けが大きいので商売する時に面倒かもしれないが返上しても困らない。


「と、いうわけで言い出しっぺの法則で自分から爵位を返上したく思いますので許可頂けますでしょうか」


 提案するも何故か誰も答えてくれない。せめて返上しろと言った本人が許可すると返してくれないと困るんだが何故か寝たふりをしている。陛下も宰相閣下も俯いて何も言わない。なんか学級会で余計な話題を出したみたいな雰囲気になってるんだが宰相が提案した議題なのに!


「あの、聞いてますか? 本日付けを持ってジン・サガラは爵位を返」

「次の提案を。マスラダ子爵!」


 はい! と上の方から元気な声が飛んで来て新しい提案の話に移ってしまった。粘っても空気読まない奴みたいになるので仕方なく着席する。こっちが爵位を返上すれば宰相側が許可を求めたエレミアの許可も場合によっては取り消しになるから許可できなかったのかもしれないな。


ただこれで例の緩和は潰したし俺の返上をスルーしたからには外国人に優先して爵位を与えられないはずだ。恐らく成立をさせて人間教の信者を山ほど引き入れる作戦だったんだろうが潰せてなにより。


そのまま議会は微妙な雰囲気のまま時間は過ぎていき、最終的に多数決を取って行くと宰相やノービル殿下とその周りの提案は全て否決されて終了しようとしていた。政治力お化けと言われる宰相をもってしても提案は可決しないのは、内容が駄目だからだけなのだろうか。


どうもそこのところがいまいち腑に落ちない。何か提案の中にヒントがあるんじゃないかと思って記憶の中を探っていると


「最後の提案になる。最近国の中が何やら騒がしい。その点に関して私はジン・サガラに警備を託したいと思うのだが如何だろうか」


 急に宰相の声が飛び込んで来て驚いて立ち上がってしまう。このまま黙っているとやる気満々

人間だと思われてしまうと考え


「お断りします戦力がありません新参なので!」


 と早口で理由を述べて断り着席した。城の兵士を纏める人もいるし何より一介の冒険者に過ぎない自分にさせる仕事ではない。ひょっとするとこの提案は宰相の最終的な狙いに繋がるものなのかもしれないと考えると、これこそ全力で阻止すべき提案だと思い気合を入れる。




読んで下さって有難うございます。宜しければ感想や評価を頂ければ嬉しいです。

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