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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第三章 爵位の意味を探して

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貴族様の御戯れ

「失礼が多々あるかもしれませんが、無知故のものとしてご容赦頂ければ幸いです」

「ほほう多少の礼儀は弁えているようだ。やはり小汚い冒険者などとは元が違うようでなにより。我々も付き合いやすいというもの」


 貴族や王族は圧倒的強い立場から引きずり降ろされてしまった現在、自尊心を保つ為にはそれしかないという結論に至ったのかもしれないと思うと可哀想ではある。


「ノービル殿下はこのような犬とお付き合いなさるおつもりですか?」

「おやぁ? 犬とは何かな? 私は彼の犬と付き合うつもりは……おっとそうか。彼も犬だったな。ゲマジューニの」


 後ろに居た目付きの一番悪い男に問われノービル殿下とかいう人はそう答えて皆笑い出す。面倒なので一緒に笑って見た。


「何が面白いのだ? 貴公」

「え、ノービル殿下たちが面白そうに笑っているのでお付き合いしてみました」


 頑張って笑っていると彼らが先に笑うのを止めてしまったのでこちらも止めた。怪訝そうな顔をして聞いてきたので正直に答えると不穏な空気になる。なにが気に入らないのかなぁさっぱりわからないなぁ。先に笑ったから付き合っただけなのに。


「……どうやら子爵はとても変わり者らしい」

「そう思いますよ」


 事実そう思っているから同意したのに舌打ちをされてしまった怖い。この手の人は基本謝罪しようが下手に出ようが気が済むってことを知らない系なので、近寄らない方が良いぞと思って頂けるなら儲けものだ。


「陛下、行きましょう。このような男に構っては我々まで可笑しな目で見られます!」

「確かにそうですよ! ノービル陛下も奇人変人だと思われては大変です!」


 お付きの貴族がさらっと陛下呼びしてたのに乗っかって煽って見ると、凄い形相で睨み膝を上げてから大きく地面を踏み鳴らした自称陛下ことノービル殿下。震脚ならわかるけどただやるだけだと結構膝にくるんだよなあれ。


「くっ……糞ぅ……覚えていろ!」

「御達者で~」


 お付きに肩を借りながらこちらを睨みつつ皆で去っていく貴族連合御一同。この国もまだまだ平和そうだなと思いながら殿下たちが移動し終わるのを待っていた。


「随分気を遣ってやっているじゃないか」

「陛下」


 甲高い声が後ろからかかる。振り返ると陛下とシンタさん、それにクライドさんが並んで立っていた。


「しっかしノービルのあんな顔を見たのは初めてだな」

「いつもニヒルな感じですからね。ジン殿お手柄でした」


 真顔で拍手をしながら頷くシンタさん。初めて褒められた気がする。


「全人類と仲良くできるのが理想なんですけどね」

「それはまた傲慢な」


「シンタ……お前真面目過ぎるぞ」

「まぁ良いじゃないか。シンタのその生真面目さが我が国の財政の健全さに繋がっているのだからな」


「それは王妃様の手腕もあると思いますがね」

「それは否定しません。王妃様が場を引き締めてくださるからこそ官僚一同政務に取り組めるのです。何しろ巨大な糞……もとい邪魔者がうろついておりますからな」


「おや、道の真ん中で四人で仲良く世間話ですかな?」


 陛下たちの後ろから声が聞こえるとシンタさんとクライドさんは廊下の端に移動して頭を下げたのでそれに倣う。


「宰相閣下、随分とお早いですな」

「それはもう。色々と提案したくて詰めていたのですが熱中しすぎて遅れてしまいました」


 クライドさんとシンタさんが小さく息を同時に吐いた。まぁ聞かなくてもわかるきっと碌でもない提案なんだろうなと。


「それは素晴らしいですな」

「陛下は何か提案は?」


「私は即位直ぐに勤勉さを使い果たしたので宰相閣下のご提案に対し意見を述べるだけに留めております」

「御冗談を。さぁ参りましょう」


 陛下と宰相閣下に続き議会場内奥へと進み、大きな扉の前に立つと兵士が扉を開けてくれた。


「おお……」

「なかなかのものであろう? 我が国が他国に自慢できる一つでもある歴史ある建造物だ」


 歌劇場の様な作りになっている場所が現れ感嘆の声がつい出てしまった。かなり前に国の事業として建てられたもので、屋根以外は石で作られているという。議会が行われる際には板を張って座り易くしているようだ。


「石のままだと不味いのですか?」

「人が座ったり触ったりすると削れるでな。なるべく長く残したいものだからこそ丁重に扱っている。人間の作った物にしては実に芸術的で神々しいとは思わんかね?」


 なんだか違和感があるように聞こえるがそれには触れず笑顔で頷く。陛下と宰相は歌劇場の舞台に当たる場所に設けられた机と椅子に其々座り、クライドさんとシンタさんに続いて舞台を下りた正面の席の左端に座る。


例のノービル殿下たち貴族連合は同じ列の真ん中に陣取っていたのでなるべく距離を取った。暫くすると続々と中へ他の貴族たちも入って来て少しの間賑やかになる。


「静粛に!」


 宰相の言葉が歌劇場に木霊すると声は消え静かになる。


「これより第百二十三回、ヨシズミ国議会を開催する」


 陛下の宣言が終わると拍手が起こった。その後は提案がある貴族毎に発言が行われその提案に対して挙手制で質疑応答が始まる。最初はノービル殿下や宰相の様な感じの提案が多いのかと思いきや、関所の通行料が安すぎるといった意見や作物の面積が狭いので新しく開墾してはどうかといった生活に直結する意見が多くてつい聞き入ってしまう。


合間合間にノービル殿下たちの一派による貴族がなんちゃらというのもあったが、面白いぐらい議会内はシーンとしていて仲間内で拍手しスルーされ次の質問に移って行く。



読んで下さって有難うございます。宜しければ感想や評価を頂ければ嬉しいです。

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