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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第三章 爵位の意味を探して

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夫婦の時間

「さぁ取り合えず皆の部屋割りを決めるわよ!」


 何故か親父さんたちと住んでいる家があるマリノさんの音頭で、この家の部屋割りが発表される。サガとカノン、マリノさんとイーシャさん、ベアトリスとアリーザさんが二階の部屋を使用。一階はオッサン二人。個室だからまだマシだが同室だったら地獄である。


「俺も良いのか?」

「ああ、どうせ力を貸してもらうから家賃も要らん。その代わり飯は折半な」


 コウガはちょっと前にペアで動いていたし、戦闘能力に関しても信頼がおける。今もサガたちの面倒を見て貰っているし、いざという時には力を借りたいので家賃なんか貰えない。


「そんなものはお安い御用だ。何だったら狩りして取ってくるぜ」

「僕も行きますよ」


 コウガとサガが取って来てくれれば御飯代も多少浮く。後はこの土地の中で家庭菜園も始めたい。町内菜園に行って係の人に相談してみよう。


「じゃあ其々荷物とか持ってきて入れ込みましょう。鍵は人数分作ってくるからジンは家に居てね」

「いえすまむ!」


 シシリーもベアトリスたちについて行き、完全に一人になるようなので皆を見送ってからは居間のソファに寝そべりのんびりする。今日に関して言えば歩けば何かに当たる気がしてるから余計な行動はしない。


「何か飲みますか?」

「おわっ!?」


 ソファの後ろから悪戯をするようにぬうっとアリーザさんが出て来たので驚き、ソファから転げ落ちる。


「だ、大丈夫ですか!?」

「え、ええ大丈夫です。それより荷物は?」


「私は生憎荷物らしい物は何も無くて。村が燃えた時に何もかも無くしてしまいましたから」


 確かにそうだ。アリーザさんは荷物を取るなんて暇もなく、目を覚ました時には村が亡くなっていた。そうなると着替えとか困るだろうな。


「そしたら後で買い出しに行きましょうか」

「ですがお金が」


「いやいや夫婦何ですからお金は自分が出しますよ。子爵の癖に甲斐性が無いというのも情けない。その上年上ですし」

「そんな……有難う御座います」


「えっと、あれば紅茶を頂きたいな」

「畏まりました!」


 ちょっとしょんぼりしていたので飲み物を頼むと、元気に返事をして台所へ行くアリーザさん。この世界に来たばかりで右も左も分からなかったが、彼女に出会えた御蔭であの村にも行けてこの世界の事も知れた。何より当座の資金も稼げたのが助かったし、町へ向かう途中に奥様を助けられてこの篭手も貰えた。


あそこからこの世界が始まった自分からすると、アリーザさんは恩人だし助けられて本当に良かったと思っている。


「あっと」


 篭手を見ようとして腰の袋に引っ掛かりカーペットの上に落ちた。口が開き中から綺麗な石が出て来る。


「それはまた珍しい石ですね」

「アリーザさんはこれ知ってるの?」


 音がしたので気になったのか、パタパタと駆けて来るアリーザさん。落ちている石を見ると知っているみたいだったので尋ねてみる。これは鉱山で暗闇の夜明けの二人組を退けて出た際に、鉱山管理人のアイザックさんから貰った石だ。


「知っています。風の石である風来石。実際に見るのは初めてです」

「そんな貴重なんだこの石」


「はい。一説には魔法石に該当するとも言われています。昔はそれを用いることでまだ魔法の心得が無い子供にも魔法が使えたという、魔法入門の石だとか。ですが御伽噺レベルの話なので本当かは分かりません。ですので珍しくて貴重ではあるのですが、明確な使い道があまりないので所によっては捨てられている場合もあるとか」

「へー、アリーザさんはこういう宝石とかに詳しいんだ」


「家が代々国の要職についていた家系でして、家の蔵にはそういうものがあり商人も売りに来たので、知識を得る機会が偶々あったのです」

「これって指輪とかに使えるのかな」


「え!?」


 動揺して飛び退いて行くアリーザさん。何故そんなに驚くのだろうか。


「この世界の高価な指輪とか分からないけど、これなら見栄えするよねきっと」

「で、ででですが加工するのが難しいとか」


「そっか……今度聞いて回ろう」

「有難う御座います!」


「? あ、お湯沸いてるよ」

「あっ! はい!」


 湧水を汲んで来たものを鉄瓶に入れ、キッチンのかまどに火をつけその中にある網の上に置いていた。シュウウウウと言う水の沸騰する音にアリーザさんは飛び跳ねて駆け寄って行く。


こういう光景はとても良い。そう言えば一軒家に住むのも初めてだし自分の持ち家も初めてだ。自分一人の城ではないので、園に似た感じの大所帯になったなと思う。あの時と違うのは一緒に居る人たちは自分から関りを持った人たちだけという点だ。


共同生活は人生の半分の時間を過ごしたので慣れているし、こういう時代だと何があるか分からないので信頼出来る人たちで周りを固めるのは安全の意味でも良いなと思う。


「ど、どうぞ」


 御祖母さんが残したであろう、花柄の綺麗なティーカップに紅茶を入れてアリーザさんが持って来てくれたので、ソファから起き上がり頂く。二人で並んでゆっくりお茶をするのは初めてな気がする。そう思うと面白くて小さく笑ってしまった。


「どうしましたか?」

「いや、こうして二人でゆっくりするのも初めてなのに結婚したんだなぁと思って」


「そ、そそそそうですね」

「その上さっきは死刑にされかけた」


「あ、あれはその……ジン殿がいけないんですっ」


 そっぽを向くアリーザさん。何が悪いのかは分からないがとても可愛らしくてほっこりする。こういうまったりした日常は悪くない。だが彼女が現れたからにはそうのんびりもして居られないだろう。出来れば早めに体制を固めて、何があってもある程度は大丈夫なようにしないと。



読んで下さって有難うございます。宜しければ感想や評価を頂ければ嬉しいです。

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