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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第三章 爵位の意味を探して

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迷い子たち

「良いわね貴方も宗教嫌いみたい」

「信仰を強要したり生活を壊す程の寄付を数人で囲んで強要したりとか、そう言うのは有り得ないし好きじゃないね。人間教は同じかは知らないが創立からして邪悪すぎる」


「性質が悪いのは教義に尤もらしい事を並べてしっかり取り繕ってるところよね。それを盾に引き込んで真面目に拝んでいる人もいる。年数が短いのに手口が巧妙でよくやるなって感心するわ」

「で、それに協力するのは良いのか?」


「協力して良くなることばかりじゃなくない?」


 楽しそうに笑う少女。この子見た目と違って大分邪悪だな。どんな戦い方をしてくるのか考えるだけで恐ろしい。


「ではまた会いましょうジン・サガラ。私の名前はエレミア・アナヒル、導く者(プロフェット)と呼ばれているわ。覚えておいてね」


 少女がそう告げると、人型流体金属ぽいものは彼女を包み込み球体になるとそのまま山の方へ飛び上がって消えた。どうやって倒したら良いのかさっぱり分からないから殴る他無いんだけど、改めて自分は脳筋だなぁと思いもう少し賢そうな手段を取れないものかと考え込んでしまう。


「くっ……逃げられた!」


 口惜しそうに言いながら体中に葉っぱや蜘蛛の糸などを付けてルキナがどたどたと戻って来た。そんなにぼろくもなかったマントと布の服がボロボロになっていて、彼女が出していた魔法生物であろうものの凄さが伝わる。


「ルキナ、何処か怪我は無いか?」

「あれくらいで怪我するほど軟じゃない。だがあれで欠片も力を入れてないとなると、あの生き物相当な馬鹿力だぞ」


「そうだな……何とか勝負できると良いが」

「弱気になるな。掃除はお前に任せて俺は城へ報告に行ってくる。自分の分の報告もあるし」


「あんなのが来たばかりだし一緒に行こうか?」

「俺を殺したところで事件の開始にはならないから大丈夫だろう。それより今は中の問題をどうにかした方が良いぞ? 尾を引く」


 ボロボロになった服が何とかならないかと弄りながらルキナは去って行く。さっきの踏み込みは鋭かったしベアトリス同様鍛錬を積んで来たのが分かるから、エレミアでなければ大丈夫だろうと思い一番重い案件の処理に向かう。


「そ、外の掃除終わりました~」


 恐る恐る中へ入って行くと、女性陣は談笑していた。だが同じ轍は踏まない。反応が無いので抜き足差し足で視界に入らないようにしつつ台所などを見に行く。


「おい母親起きろ」

「んぁ?」


 敵が来てものんびり寝ていた自称母親。眠い目をこすりながらゴロッと寝返りを打つように体を半回転させ鎧の縁に顎を乗せて前を見る。


「だ、大丈夫?」

「分からん」


 そこが家の中だと分かったらしく、眠い目を擦るのを止めて縁にしがみ付く。そして引きつった笑顔をしながらこちらを見た。前回大丈夫だと思って突っ込み、見事撃ち落された人物に確認する方が間違ってる。問いに対しての答えを聞き事態を把握したシシリーは、急に挙動不審になり鎧の中から出て肩に座ると引っ付く。


「ああ怖いわ……生まれて初めてレベルの恐怖を感じるわ」

「一応見たら楽しそうに話していたから、大丈夫な可能性も捨てきれない」


「捨てた方が良いわそんな可能性。万分の一だもの絶望的だもの!」


 どんだけだよと思いながらも、なるべく危険は回避した方が良いのは間違いないのでその間に他の部屋の掃除をする。台所も綺麗に片付いていて調味料の瓶も空で少し埃が被っていたの払う程度で済んだ。


音を立てない様に外に置いてあった湧水を汲んだ桶と雑巾そして洗剤を中に持ってきて拭き掃除を始める。町長たちが偶にギルドに依頼して綺麗にしていたのであっという間に終わってしまう。こうなると手持無沙汰だが、女性陣の所へ行くのは流石に勇気が居るので整える為に二階の部屋にあったベッドに腰かける。


「何か絵があるわ」


 シシリーが肩から飛び立ちその部屋の壁へ移動して指さした。あまり大きくない絵で、座っている位置からは見え辛い為そこへ移動して見ると息を呑む。絵は一族の集合絵のようで十人くらいが描かれていたが、その全員がエミリアと同じ格好でしかもそのうちの一人は完全にさっき見た人物だったのだ。


「あら、戻ってらしたんですか?」


 お化け屋敷の中で話しかけられたような感じで驚いてしまい、飛び跳ねた後で壁へ背中を付けてへばりつく。


「そんなに驚かせちゃいましたか?」

「え、ええ……いやその、すいませんちょっと驚いちゃいました」


 声を掛けて来たのはイーシャさんで、今日最初に会った時のような感じではなくなっていてホッとする。さっき見た人物と似ているのは伏せて絵の関して質問ところ、これはイーシャさんの御母さんで町長の奥様の家族を知人に描いて貰った絵だという。


「この子は?」

「この方は御婆様の妹さんです」


「今どちらに?」

「昔ヨダの村に薬草を摘みに行ったきり、消息が分からなくなったと聞いています。御婆様は亡くなるまでずっと気にかけて居ました。事有る毎に”妹はエミリアは生きている”って」


 寂しそうに微笑むイーシャさん。こっちは引きつった笑顔しか作れない。何しろそれに瓜二つの人物と会ったし、またヨダの村かよと思うと薄気味悪いというかなんというかで言葉が見つからない。



読んで下さって有難うございます。宜しければ感想や評価を頂ければ嬉しいです。

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