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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第三章 爵位の意味を探して

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何故か皆で御泊り

「ベアトリスたちもここだから」

「あ、そうなのですね。まだその辺り良く分かっていないもので」


「そうそう、ここでは私の方が先輩なんだから何でも聞いてよ!」

「いえ、夫に頼みますので」


 さらりと煽るようにすぱっと断るアリーザさん。すぐさま反応しいきり立つベアトリスをルキナが羽交い絞めにしながら冒険者ギルドに入る。


「あ、ジン殿おかえりなさい」


 ジョルジさんがこちらを見ると戸惑ったような声でそう言った。これは何かあったな事件かなと思い深呼吸してからカウンターに近寄る。今度は何が来たんだ? 暗闇の夜明けの再襲撃だろうか。


「今度は何処でしょう直ぐ向かいます」

「ジン殿はギルドで役職を得られ家も頂いたとか」


「はい……まさか緊急事態でしょうか!?」

「それがその……」


 ジョルジさんは言い辛そうにカウンターの引き出しを開け、一枚の紙を出す。それはここの利用書であり、そこには”ギルドの役職を得た者は利用不可”と書いてあった。何故に……。


「恐らくミレーユ殿もジン殿に言い忘れたのかもしれませんが、ギルドの役職を得ると言う事になりますと本部側、所謂運営側となりましてギルドから通常手当が出るのです。そんな立場の方が格安宿を利用するとなりますと色々……」


 て、手当なんて聞いて無いし役職は保留だって言ってたけどと言うと、辞令が出てるのでそれの取り消しの知らせがない以上無理らしい。これはショックだ……これから宿を探さないと。


「近くに宿ってありますか?」

「勿論、これからご案内致しますのでどうぞご用意下さい」


 ジョルジさんの御厚意で町の宿を紹介して貰い何とかギリギリ確保できた。何でもそろそろ町の祭りが開催されるらしく、他の国からも人が沢山訪れるようでこの先も止まる予定だと予約のお客が居るので出て貰わなければならないと言われた。


「そうなると直ぐにでもその御屋敷を掃除しないと寝泊まりする場所が無くなってしまいますね」

「寝て起きたら雑貨屋に行って箒や塵取りを買って行きましょう」


「じゃあ最初に起きた人が皆を起こしてね」

「俺は自信が無いから頼む」


 二人部屋を頼もうとしたところ何故かベアトリスルキナ兄妹も付いて来て泊まると言い始めた。流石に宿もあるし帰るよう説得したが、無理やり帰すなら暴れるという始末。コンビを組んでいた時と違うベアトリスに困惑し兄のルキナに視線を送るとつまらなそうに欠伸をしている。


改めて連れて帰るよう言うと、妹が暴れると面倒なので拒否するという保護者としてあるまじき言葉を吐く。


「お前保護者だろうが」

「お前の観念は知らんがこの世界に保護者の義務など無い。世間的に非難されるかもしれんが法で処罰を受けるような立場でも無いしな。お前が面倒を見ていたあの兄妹の保護者は誰なんだ?」


 痛いところを突かれた。最近ジョルジさん筆頭に宿の人たちや徐々に親交を深めているコウガに任せきりだが、ルキナに責任を求めるなら俺にも責任がある気がするぞ血の繋がりは無くても。


「御屋敷の広さを見て広ければ改めて御屋敷で一緒に住むのを提案してみては如何でしょう」

「さんせー」


 ベッドに寝ながら賛同の声を上げるベアトリスに対し、横のベッドで横になっているアリーザさんは真顔で視線を向ける。明らかにベアトリスは屋敷に住み着くつもりだなこれは……。


「お前は来ないだろうな流石に」

「当然。俺にはやるべき仕事があるからここにも長居は出来ない。お前が面倒見てくれるなら大助かりだ。嫁さんも居るなら妹に手は出さないだろうし」


 俺はソファでルキナは床に布団を敷いて寝ながら会話をする。暗闇の夜明けを追っているが、連中は表立って動くのは珍しいので探すのに苦労しているという。資金も底を突いたので一旦帰って来て冒険者家業をしながら稼ぐという。


「毎回どれくらい必要なんだ?」

「あればあるほど良い。お前も分かるだろうが、タダで教えて貰える情報なんて罠や嘘が多い。ゴールドで買ったからって真実とは言わんが、それでもタダよりはマシだろう」


「暗闇の夜明けの情報を売って稼ごうなんてリスクが高過ぎるんじゃないか?」

「連中が皆の支持を集めているならな。例の国を魔法の暴発によって消滅させた事件や、不死鳥騎士団壊滅事件は未だに凄まじい衝撃として残っているから協力者は多い。だが皆も生活しなきゃならんしある意味持ちつ持たれつさ」


 ルキナの子供っぽい一面を多く見ていたが、必ず暗闇の夜明けを潰すという目的の為に冷静に物事を見れる面もあるんだなと思い認識を改める。思えば幼い頃に親を亡くし妹の面倒を見ながら旅をして来たんだから、サガ同様俺よりも強いよな。


自分は要らない子供だったが、幸いなことに保護してくれる園があったから生き残れた。この世界で彼らと同じような境遇になっていたら生き残れただろうか、そして真っ直ぐ生きられただろうかと考えてしまう。


「ジンおじさんが真面目に考え込んでるわね」

「基本真面目よジンは。毎日司祭と鍛錬をしてるんだから。仕事に直結するとは言えメインでもないのに毎日通える?」


「確かにシシリーの言う通りですね。ジン殿の真面目さに皆心打たれて支持が広がっているのでしょう」


 鎧を脱ぐとシシリーはアリーザさんの横に行き布団に入った。それが気に入らないのかベアトリスはシシリーを取り戻すべくベッドに移動。小競り合いの末三人纏まって一つのベッドで眠り始める。空いたベッドはルキナに使うよう促し、やっと長かった一日の終わりを迎えられたとホッとしながら眠りに就いた。



読んで下さって有難うございます。宜しければ感想や評価を頂ければ嬉しいです。

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