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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第三章 爵位の意味を探して

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ベアトリス対アリーザさん

「やぁ色男お帰り」

「……誰が色男ですか誰が」


 そう小声で抗議したものの何故かシスターまで怒り気味である。口は笑っているが目は怒りながら見下ろされていてとても怖いです。


「ふぁ……何の騒ぎ?」


 呑気な声を上げながら良いタイミングで目覚めるシシリー。寝ぼけ眼で鎧の定位置から前を覗き込み、少しして驚きの声を上げた。それもその筈、目の前で繰り広げられている剣戟は凄まじいものがあり、自分も声を上げそうになる。


「凄いわねアリーザもベアトリスも!」

「まぁ色男の大事が掛かってるからねぇ」


 このまま色男呼ばわりされるのであろうか……堪えられないんだが。そう思って抗議しようとするも、シスターの表情を見て今は余計なツッコミは危険だと考えスルーして二人の戦いに集中する。ベアトリスはその太刀筋に迷いが無く狙いもしっかりしていて、今日まで大分鍛錬を重ねた様子が窺えた。


だがアリーザさんはそれを受けるのではなく的確に剣腹を弾き逸らす。力の差や鍛錬の年数の違いもあるのだろうが、何よりベアトリスの太刀筋自体が完全に見切られている印象だ。


「アリーザは強いのはこの前みたけどここまで強いのね」

「旦那の為に命懸けっていうのもあるけど、何処かでベアトリスの剣技を見たことがあるのかもしれないね」


「旦那?」

「ジンよ。シシリーも色々聞いてたでしょ?」


「あー」


 興味なさそうに返事をするシシリー。母親を名乗るなら興味持てよ興味を。


「興味なさそうねシシリーは」

「うん! だってジンは惚れて結婚する訳じゃないでしょ? そうなった時に改めて母親として厳しく採点するわ!」


 鼻息荒く胸を張り腰に手を当てて先日母親になったという設定を引き摺るシシリーは言う。いやいや欠陥だらけの人間に惚れるような人間は居ないし、相手を惚れさせるようなものは持ち合わせて無いから永遠に来ないと思うぞ? この国じゃ爵位はモテるステータスじゃないだろうし。


「ちなみにジンの母親とおっしゃるシシリーさんから見てあの二人はどちらに軍配が上がりますかね」

「そうね……アリーザの方が積極的だから長期戦で見たらアリーザじゃないかしら。ベアトリスはおこちゃまだもの」


「シシリー! 私の味方をしなさいよ!」

「嫌よ母親としては冷静に見ないと。そこに友情は無いわ」


 シシリー母様の冷静な分析に戦いながらベアトリスの抗議の声が響く。そして女の友情は母親と言う設定の前に砕け散った。


「シシリーにも認められ世間的にも認められ、サガラ夫人となったからには夫の武勲に負けぬようにせねば」

「でぇええええい!」


 素早く振りかぶり振り下ろしたショートソードに対して素早く対応し半身で避けてからバックステップで距離を取る。追撃も空振りしベアトリスは追おうとするも足を止め呼吸を整えた。


「冷静ですね」

「当たり前よ。アンタ私の剣技を知っているわね」


 それに対してアリーザさんは寂しそうに微笑む。ベアトリスの剣技は恐らく兄のルキナから教わったものだろうし、その大元は不死鳥騎士団の団長だった彼らの父親だろう。


「やはりベアトリスは筋が良いな」

「あらお兄様」


 いつの間にかルキナも来ていて挨拶すると殴りかかって来たので暫く相手をする。兄妹揃って修行していたようで前に会った時より強くなっていた。これならイグニさんも安心して眠れるだろう。


「チィッ! 相変わらず嫌な奴だ」

「そりゃどうも。嫌な奴序に言うがベアトリスは勝てないだろうな」


「勿論。俺たちよりあの人の方が父の剣技を良く知っている。一緒に教えて貰った事は無いし、イグニさんから聞いて知ったが」


 ルキナはこの国に来てイグニさんに会ってからアリーザさんに父親が剣技を教えていたと聞き、そこからイグニさんに師として剣技をチェックして貰ったという。そしてそれをベアトリスにも教えて今日に至るようだ。


「俺としてはお前にもう少しやり返せると思ったんだがまだ甘かった。精進あるのみ」

「偉いねルキナは。何時かは抜かれるから焦らずじっくりやってくれ」


「その上から目線が腹立つ!」


 とは言ってもなぁ事実だし。年齢も下だし小さい頃から剣を振って来たんだから何れは抜かれるだろう。勿論簡単に抜かれたりはしないが、ルキナは才能があるし何より背中に多くの人を背負っているから抜かれるに違いないと思っている。


「絶対何時か倒す!」

「何時でも……と言いたいところですが夫婦の時間は邪魔しない様に」


「キィイイイ!」


 歯を見せて悔しがるベアトリスを見ながら微笑むアリーザさん。父親がイグニさんを唆して団の崩壊を招き、そしてベアトリスたちの父親は見せしめに殺されてしまった。恨むべきはアリーザさんの父親と暗闇の夜明けだというのは二人とも分かっているだろうけど、これからも消せない部分が残ってしまうのは仕方ない。


それに関してアリーザさんが受け止める、ベアトリスはぶつける。そうすることで変に恨まなくて済むような関係を構築しているのかもしれないなと思った。


「で、何故付いて来るのです?」

「は?」


 お騒がせしてしまったので司祭や皆さんに謝罪し足早に教会を後にした。一応一軒家を頂いたがまだ見ても居ないので翌日となり、今日は一旦冒険者ギルドの宿を借りようとなる。



読んで下さって有難うございます。宜しければ感想や評価を頂ければ嬉しいです。

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