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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第三章 爵位の意味を探して

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早々に問題が起こる

 あぁっ……! 何をいきなり言ってるんだ? 確かに結論から先に言うのは良いんだけどそれはこの問題以外での話だ。単刀直入過ぎる! あまりの自分の迂闊さに頭を抱えてヘッドバンキングしてしまう。


「ジ、ジン殿落ち着いてください」

「す、すいません結論から話してしまいまして。えっとですね、あー何というかその、宰相に目を付けられてるので安全の為に結婚して頂きたい訳でして。大変申し訳ないながら我慢して頂けると幸いなのですが」


「私はとても喜んでいますよ? ジン殿。出会ってそう間もないですが、貴方には多く助けられました。どうせ誰かの伴侶になるのなら、そう言う人となりたいと思っていましたので」

「そ、そそそそんなに大したものじゃないんすけどね!」


 大したものってなんだ。大したことはしてないと言いたいのか? と自分で自分に突っ込みたくなる。しないだけまだ理性が辛うじて残っていて良かった。やったら寒さで即日離婚もあり得る。


「今やジン殿はこの国の人々の希望の星。そのジン殿の妻として私も励まなければ」


 励むって何を……? そう思った瞬間邪な妄想が頭を過ぎりダッシュで壁に頭をぶつける。


「うぉ……」

「ジ、ジン殿!? 大丈夫ですか!」


「いや駄目みたいなので今日の所は御暇を……」

「では一緒に参ります」


「え!?」

「司祭からもう病人ではないので病棟を出て貰わないといけないと言われていたのです。金銭があればよかったのですが、生憎持ち合わせが無くて……。新婚早々申し訳ないのですがお世話になります」


 マジでか……頭をぶつけたからなのか分からないがくらくらしてきた。しかもよく見ればいつもと違って紺のワンピースを着ている……駄目だ体のラインを凝視しては! こ、こういう時何をすれば良いんだっけ!? お経を唱えっか!? あーっとえーっとまかはんにゃーはらみーたー。


「ジン殿、気を確かに!」

「あっちょっ近付いては困ります故!」


 いつの間にか至近距離に来て両肩を掴まれていた。困る困るよこんな距離で見られたら! 心臓の音が聞こえる気がする!


「ふふ、いつも折れずに真っ直ぐなジン殿とは違いますね。少しは意識してくれていますか?」

「そ、そそそりゃああ勿論! アリーザさんのような美人を意識をしない訳が無いです!」


「その割にはあまり会いに来てくれませんでしたね」


 肩から手を離し、拗ねた顔をして後ろを向くアリーザさん。勇ましいアリーザさんが通常なのでこういうアリーザさんを見るととてもドキドキします、はい。


「確かに……申し訳ないです。何やら歩く度に事件に巻き込まれるようで」

「いえ良いのです。英雄とはそう言う運命にあると昔何かの本で読みましたから……そう、ヤスヒサ・ノガミの伝記」


「英雄になんかなりたくないんですけどね、のんびり冒険者やって平穏に暮らせれば良い」

「私もそう願っています。いつか引退する年齢になったら御店をやったりしたいなって」


「御店はそう遠くない内に叶うかもしれません」

「あら、それはとても楽しみです」


 こちらを向いて首を傾けながら笑顔で言うアリーザさん。美人な上に笑顔も可愛らしいとは。向こうの世界の芸能人と比べても、アリーザさんに敵う人が思いつかない。


「では参りましょうか、荷物はあまりないので直ぐに出られます」

「あ、持ちますよ!」


 ベッドの近くにある荷物を片付けに行くアリーザさんに直ぐに駆け寄る。緊張感から解放された自分の足が軟体生物みたいになっているとは思わず、思いっきり転んで窓の下の壁に激突。アリーザさんと目が合い笑い合う。


さっきまでのシリアスな感じを吹き飛ばし和やかな空気になった。ずっこけるのも偶には役に立つもんだと思っていると、アリーザさんが真顔でこちらに顔を近付けて来た。え、あれ、何だこの雰囲気は!? 和やかな感じだったのに何故!? 右手で耳の後ろに髪を除けながらドンドン距離が近くなる。まさかこの体勢で……。


「ドーーーーーン!」


 あと数センチという距離のところに来た瞬間、叫び声を上げながら凄い勢いでドアが開け放たれる。あの声は間違いない、ベアトリスだ。


「何してんだこらぁあ!」


 アリーザさんは荷物を離し軽く口付けすると俺を担ぎ上げ飛び上がった。アリーザさんはこの前の花畑での攻防でも、大型スズメバチ多数を相手に一人で戦い抜いていたから強いのは知っていたがまさか防具付きのおじさんを抱えて飛び上がれるほど強いとは。


「諸々はもう済んだのかな?」

「ええ御蔭様で」


 入口で意地悪そうな顔をして微笑むシスターに対して余裕の笑顔で答えるアリーザさん。ヤダカッコいい! ってそんな場合じゃない。


「って!」


 ベアトリスの腰に差したショートソードによる一閃を、いつ見ていたのか分からないが俺の腰に佩いていたキャンプ用ナイフを抜き取り逸らした。それを見て目を丸くするベアトリスに対し、アリーザさんは冷静な表情で俺を抱えながら構える。


「私のお父さんを奪っただけじゃ足りないって言うのね」

「その件に関しては言い訳をするつもりは無いわ。だからと言って私の旦那様を渡す訳にはいかない。恨まれるのは仕方ないとしても死ぬ訳にはいかないので全力で抵抗させてもらう」


 これは不味い二人の間に入って止めないと考え前に出ようとするも部屋の外へ放り投げられてしまう。


読んで下さって有難うございます。宜しければ感想や評価を頂ければ嬉しいです。

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