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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第三章 爵位の意味を探して

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アリーザさんの下へ

「そう言うところを気にするお前なら義理の母も住んでも怒るまい。お前の事だから優遇される訳にはとか考えているだろうが、そこで一つ提案がある。いつぞや店をやりたいと言ってたが」

「はい、まだ具体的に何とは決まってませんが、御店をやりたいなと思っています」


「その時に良ければうちの娘の商品も扱ってくれないだろうか」

「扱うのは全く問題無いのです。しかし御屋敷を店舗用に改装しても問題無いでしょうか」


「構わんよ。何なら一から立て直しても良い。もしそうなら娘にも相談してくれると嬉しいのだが」

「御代金は御幾らで? まさかただでは無いですよね?」


「代金なら気にするな、国から貰う。大分宰相と陛下が揉めているが、その間お前が割を食うのは違うしな。後で金額が出たら知らせるしその時他の物件と照らし合わせて多ければその分払おう」

「あ、ありがとうございます! 町長も聞いてらっしゃると思うんですがアリーザさんの件で……」


「聞いている。お前は本当に難題を抱えさせられてしまう運命の下に生まれたのだな。陛下や私からしたら感謝しか無いが」

「いえそれは問題無いです……本人の気持ちを確認しないといけませんが」


「一応結婚式などもしなくて良いと宰相閣下は仰せだ。そこに思惑があるんだろうが、私たちもバックアップはする。何かあれば言ってくれ。お前は子爵で私は公爵。同じ貴族だし頼ってくれて良い」

「有難う御座います!」


 こうして会談は終わり、本日一番重い案件に向かう。何も知らない訳は無いだろうと考えれば言うのも簡単なんだろうが、実際はそうはいかない。元の世界でも独身で彼女も居ない。それがいきなり……。


とても足取りが重い。正直こういう難題が積み重なる日というのはもうこれっきりにして欲しいと願わずには居られない。こういう時恋愛経験が多そうな既婚者にアドバイスを頂きたいが、思いつく人が数人しかいない。


一番聞き易そうな人はやっと幸せが訪れてゆっくりしているところなので、態々そこに嵐を起こしたくない。そうなると自分らしくまっすぐ行くしかないと覚悟を決めて歩く。


「そうは言ってもなぁ」


 急に行って結婚してください、はいきなりすぎて断られるだろう。付き合いったって日数にすれば一週間とかそんなもんなんだし。かと言って陛下の言い方からしてもう猶予は無い。となるとやっぱりしっかり事情を話して受け入れてもらう他無いな。


事態が解決したら自由にというのを最初に伝えておけばクライドさんのように後にバレて喧嘩になったりもしないだろう。


「そうかなぁ……何か違うなぁ」


 ぼやきながらも正解が全く分からない。だが形だけでもしておかないと宰相の道具にされてしまうのは間違いないし、暗闇の夜明けにも利用されてしまうだろう。もううだうだ言わずに行くしかない!


改めて気合を入れて教会へと向かう。ここで足を止めたら行けなくなりそうだ。


「あらジン、何処へ行くの?」

「ちょっと教会へ」


 気付かない内に町をうろうろしていたらしく、いつの間にか北門にまで来てしまっていたので引き返す。防具屋の前を通ると店じまいしていたマリノさんに声を掛けられた。だが口だけ微笑んでそう答え足早に去る。


「おやジン、こんな時間にお出掛けかい?」

「教会まで」


 今日の最終納品なのか馬車に乗ったアイラさんが通りかかり声を掛けてくれたが、一言だけ言って足早に去る。ここは勢いで行くしかないんだ……!


「ジン久し振り!」


 先の方から久し振りに見る二人、ベアトリスとその兄であるルキナが居て驚いた。何てタイミングで会うんだ。別に後ろめたいことなど何も無い筈なのに何か後ろめたい。だがここでも立ち止まる訳にはいかない!


「ちょっと教会に行かないと。また後で」

「何で教会に行くの?」


 さっきの二人と違い食い下がってくるベアトリス。その上何故かこちらの顔を覗き込んでくる。敢えて気にしない様にしながら歩きつつ、用事があるから行くんだよすぐ終わるからと告げると


「じゃあ私も行こうかな久し振りに」


 と言い始めた。おいおい何で今日教会に行くんだ。ベアトリスは教会にそんなに行って無かったのに!


「俺も行こう。司祭には世話になった」

「くんなお前」


「何だと!?」


 ルキナまで一緒に来る始末。今日一日重い案件ばかりだったのに、この上ラストがこれとは明日から暫く寝込むかもしれんな。なるほどこれが結婚の大変さか……。俺はあまりの事態に気が遠くなりそうになりながらも堪えて進む。


「こんばんは」

「おや夜分遅くに団体さんですか?」


「いえこっちは序で。自分は他の用で」


 教会に着きドアをノックすると司祭が直ぐに出て来てくれた。ここに来るまでずっとベアトリスが顔を見てる。凄い圧を感じるのは気のせいなのだろうか……いや気のせいだきっとそうに違いないそう思う事にする耐えられない。


「そうですか、ではベアトリス殿とルキナ殿はこちらへどうぞ。ジンは病棟でこないだの怪我の具合を見て貰ってください。その後でその用とやらを伺いましょう」


 司祭はベアトリスとルキナを最初に中へ入れ、俺に対して笑顔で小さく頷いた。分かってるんだ……この人に師事しててこんなに良かったと思ったのは初めてかもしれない……神よ!



読んで下さって有難うございます。宜しければ感想や評価を頂ければ嬉しいです。

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