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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第三章 爵位の意味を探して

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やっと城からギルドへ

 密やかな攻防が続く陛下の執務室。陛下は喜怒哀楽がはっきりしている方だが終始涼しい顔をしていた。それほど気の抜けない相手なのだと分かる。


表には出さないだけで心の中は激しく怒っているだろうし、この後荒れるだろうなぁと思うと個人的にはさっさとここから帰りたいと願う。違う部署の課長同士が案件で揉めてるような状況は本当に苦手だ。結局その怒りは下に来るし、時には理不尽な勝負が始まったりもしたし。


「エダンは兎も角、宰相の仰るような若者が考える力を失っているとすれば、それは我々為政者の問題ですよ?」

「ええ、ええ分かっていますとも。ですからこそ我が神の布教を軸にテコ入れをしている次第」


「ここ最近一定の国から我が国への流入が増加しているのもその為ですか?」

「さて、何の事やら」


 笑顔で白を切る宰相閣下。こんな分かり易い自白も無いもんだ。よく国を愛して止まない国王に対して国家不要論を唱えられるもんだ。やれるもんならやって見ろって感じだし、事実出来ないからこそここまで出れるのだろう。こうなってくるとこの人にどんな力があるのか知りたくなって来たな。


「……まぁこのような話はまた別に席を設けて致しましょう。ジン・サガラ殿のような優秀な外の方に聞かせる話ではない。では失礼致しますよ陛下、お邪魔しました」


 気が済んだのか宰相は一礼して立ち上がり、また部屋をぐるりと見回してからこちらを見てニヤリと笑うと部屋を出て行った。足音が遠くなるまで身動き一つせず、聞こえなくなった瞬間大きく息を吐く。


陛下はすくっと立ち上がると部屋を出て行った。シンタさんに座って少し待つよう言われてソファに腰かける。どっと疲れた……これまでで一番精神的に来た。鎧の中の定位置に居るシシリーを見るとぐったりとしていたので声を掛けると、蚊の鳴くような声で大丈夫だという。


「大丈夫には見えないな……今はゆっくり休んでてくれ、もう大丈夫だと思うから」

「有難う……」


 そう言って気を失う様に目を瞑る。シシリー程では無いがかなりキテいるので目を瞑りながら陛下の帰りを待つ。少しでも回復しておかないと何が起こるか分からない。


「失礼致します! 陛下が御戻りです!」


 そう言われて目を開け姿勢を正す。中へ入って来た陛下はラフな格好に着替えており、ストレスは無いようだった。何とかあたられずそう長くもならずに帰れるようでホッとした。


「すまんな待たせて。ダッシュ&ランと組手を気が済むまでやって来た」

「それは良かった。ストレスを溜めると良くないですから」


「ここのところ大人しかったんだがどうもお前を男爵に推した辺りから元気でな。一度くらいの嫌味ならどうということもないのだが」

「陛下だけでも冷静で頂ければ問題ありません」


「……巻き込むのは本意では無かったからこそ男爵の爵位を送るのを迷ったのだ。お前は国民からは他所から来た人間として認識されている。今後連中の旗頭として担がれないとも限らない」

「それに関してはジン殿がどうする事も出来ぬ問題。我々としても出来るだけジン殿に対してフォローしていきたく思っています」


「フォローの方法に関してはこれからこっちで頭捻るから、少し時間をくれ。何をしても相手の手札になる気がして選ぶのに時間が掛かってる」

「分かりました。出来れば穏便で良い方法をお願いします」


 こうして陛下との会談は終わった。嵐が去ったと思ったらまた次の嵐。中々のんびりさせてくれないものだなぁと思いながら、警戒しつつ城を出てこれ以上面倒に巻き込まれないよう足早に町に戻る。

 

「ど、どうもこんにちは」


 この世界に来て初めてレベルにハードな日々が続いていたが、あと二つで一息吐けそうだ。ギルドに恐る恐る入りカウンターでミレーユさんに挨拶する。笑顔で頷き扉を指さされたので応接間に移動する。


「早速だけどギルド本部から貴方に関する連絡が来たわ」


 個人的に考えてデカい事件に絡み過ぎだしいきなり男爵になるしでそのままってことはないだろうなと思ってたから仕方ない。


「貴方は本日付けで名誉男爵に昇格です」

「……はい?」


 ギルドにまで男爵があるとは……だけど名誉男爵なんで名前だけのものだろうと思っていると、ミレーユさんが説明してくれた。名誉男爵とはギルドの正規会員とは別で、例のレアアイテムをギルドに納めると貢献度が上がり役職が付くという話を、前にスライムの核を売った時聞いたがアレらしい。


「男爵と言うと貴族で一番下なんだけど、ギルドには早々居ないのよ」

「全然問題無いですよ名誉職だろうし」


「それがね、一応有事の際にはギルドの指揮権が与えられるの」

「えぇ……」


 えげつない話が飛び出してきて閉口する。現在このギルドは見た覚えが無いけどギルド長が居て、有事の際には指揮を執るが何かあって出来ない場合二番手になるという。


「自分で言いたくないですけど、一応今度子爵になるらしいんですが」

「それはおめでとう。ヨシズミ国はギルドとも竜神教とも友好関係にあるから、そこも決め手になったみたいね。一応これが冒険者名簿でこっちが職員名簿。これは会計帳簿ね」


 

読んで下さって有難うございます。宜しければ感想や評価を頂ければ嬉しいです。

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