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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第三章 爵位の意味を探して

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新たな技の習得へ

「あ、有難う御座います! ちょっと準備をしますので失礼します!」


 ジョルジさんにお礼を述べながら一礼し、急いでその場を後にする。目覚ましとか無くてもこれまで一日くらいで目が覚めてたから行けるだろうとか思ってたが、ひょっとするとヤバいくらい寝てたのかもしれない。


部屋に入りシシリーに声を掛けながら準備する。幸い洋服は着たまま寝ていたので、シシリーは鎧の定位置に入れておけば良い。


「ふぎ……」


 断末魔の様な寝声を上げるシシリーを定位置に放り込むと食事もせずに宿を出て先ずは教会へと向かう。人がまばらだったので間違いなく明け方で、寝て直ぐ目を覚ました訳では無くてホッとする。まだ三十代だから大丈夫だろうけど、年齢を重ねていくと寝にくくなるっていうし。


「おはようございまーす!」

「おや、もうお目覚めですか?」


 教会の前に着くと司祭が掃除をしていたので元気に挨拶をする。司祭の口振りからしてどうやら一日か二日くらいで済んだようだとホッと胸をなでおろす。


「大分鍛錬が身について来たんでしょうね。一週間寝続けるかと思いましたが六日で済んだ」


 全然大丈夫じゃなかった。一週間と六日じゃ一日しか差が無いしめっちゃ寝てた! その間トイレとかどうしてたのか聞きたいような聞きたくないような。部屋は汚れて無かったがトイレに立った時に他の宿泊客に迷惑をかけて無ければ良いんだけど……。


「ここのところ風神拳を気軽に打っていたようですからね。それも最大出力だったり覆気(マスキング)せずに打ったりときちんとした打ち方をしていなかったんじゃないですか? そろそろ疲労も蓄積されてピークに来ると思ってたんですが意外に持ちましたね」


 意地悪そうに笑いながら頷く司祭。確かに急を要して乱暴に打った覚えはあるし、敵が強いので集中して気を高め放出し右拳に集めて全力で打った。六日も寝てたのは知らない間に蓄積された疲れの所為だったのか。


「まぁ何事も無くて良かったじゃないですか。寝込みを襲われたら対処できなかったでしょうし」

「以後気を付けます本当に……とは言えどうやって回復させたら良いんですか? 毎日寝てるは寝てるんですけど」


「そうですね……ちょっとここのところ敵対する相手のレベルが著しく上がって来たので、そろそろ少しだけ鍛錬を変えますか。それをマスターすれば消費を抑えられるし何れは回復も即時おこなえるようになりますよ。さぁ中へどうぞ」


 いつも通り教会に入り長椅子を退けて鍛錬の場所を作る。そして向かい合うと司祭は徐に右手を突き出し目を閉じた。何が起こるのかと思って見ていたが徐々に体の力が抜けて行き、膝が笑い始めるとあっという間に地面についてしまう。司祭は手を突き出しているだけなのに……魔法か何かを使っているのだろうか。


「うーん……流石ですね。普通なら気を失うはずなのに堪えてしまうとは」

「こ、これは一体」


 司祭は少し不満げに言いながら手を下ろした。技か魔法かが終わったのだろうが、相変わらず全く力が入らず立ち上がるのも難しい状態に陥ってしまっている。命のやり取りの時にこうなってしまったら確実にやられる。想像しただけで冷や汗が止まらない。


「うんうん、しっかり想像出来ている様で宜しい。鍛錬だからとのんびり構えているようでしたら教えないでおこうと思いましたが……残念」


 本当に残念そうに苦笑いをしながら溜息を吐く司祭。竜神教っていうのがどう言う宗教なのか別の意味で興味が湧いて来る。司祭みたいなのが量産される宗教ならシンラに対して同情を禁じ得ない気がする。


「以前に話した通り、生きている人間は気を生成し余分な量を放出しています。そして我々の開祖はそれに着眼し覆気(マスキング)を会得しました。ただこれは初期段階。貴方も覚えているでしょうが、イグニ殿が使ったのは更に一つ上の段階なんです」


 イグニさんはベアトリスやルキナの父である不死鳥騎士団団長の副官だった人物だ。アリーザさんの父親に唆され団長を排除して団長に収まったが、暗闇の夜明けのデモンストレーションに使われ不死鳥騎士団は壊滅。団長も殺されその復讐をする為に旅をしている途中でシオスの町に来た。


今使っている不死鳥騎士団の盾はそのお古だ。暗闇の夜明けの首領であるシンラに体を貫かれた際に覆気(マスキング)を利用して体に腕を留め、腕をルキナに斬り落とさせ弱ったところを風神拳を放ち撃退した。あの戦いの功労者で今はあの村の近くに眠っている。


「通常覆気(マスキング)は体を覆い強化する為に使用しますが、それをある程度コントロール出来るようになれば方向を自由に決め放出出来る」

「風神拳を放つ時に拳に集中させているんですが、あれと同じですか?」


「そうです。貴方は実は教える前に一つ上の方法で拳を強化し放出していました。覆気(マスキング)した後で放出していた気も一緒に集めそれを拳に無理やり掻き集めていたのです。だからあんなに疲れていたんですよ。しっかりコントロール出来るようになれば一回放出なんて言う回りくどい方法をしなくても良くなります」


 どうやら知らずに効率が悪い方法で攻撃力を上げて使用していたからこそ、六日も眠る羽目になったらしい。司祭がさっきしたのは更に上の吸気(インヘル)と言う相手の気を無理やり奪う技だという。


「奪った気を更に生成して自分の物とする方法もあるのですが、それはまだ先の話。先ずは吸気(インヘル)をモノにしなければ先なんて無理ですからね」


 こうして朝の鍛錬が強化された。今までは覆気(マスキング)を常時していた訳では無かったが、今回から常時覆気(マスキング)して行いコントロールを身に付けていくというものに変更される。





読んで下さって有難うございます。宜しければ感想や評価を頂ければ嬉しいです。

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