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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第二章 副業を探して

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始まりの羊事件を終えて

「司祭は?」

「私は兵士の方に。貴方が私のところへ来ようとしていたというのと、変な生き物に呼ばれていたというのを聞きギルドに確認したんですよ。それでヨダの村はクライド殿の御嫁さんの先祖の故郷だと聞いていたので、話した方が良さそうだと思い話して連れて来たんです」


 そう言えば司祭の所に行こうとして兵士の人に声を掛けられたんだ。あの人が司祭に話してくれなかったらこの終わりはなかった。後でお礼を言っておかないと。


「ちなみにその兵士の御名前はジョンジュニアさんだそうです」

「有難う御座います!」


 町に帰ったら色々書類も出さないといけないのかなと考えつつ、先ずは町長のところへ行ってジョンジュニアさんの御蔭でとても助かったと報告しようと思った。悪い事は率先して報告したくはないけど、良い事はなるべく早めに報告したい。


「では我々はお邪魔でしょうから御暇しましょうか」

「そうですね」


 家族の大切な別れの時間を邪魔しないようその場を後にする。取り合えずアラクネたちは領土に戻り態勢を立て直すという。大型花は一旦同行して町の近くの花畑で休んでもらおうという話になりそのままシオスの町に共に移動する。


司祭は彼女たちを見て抵抗が無いのか尋ねると、私たちは竜の血を引いているのでと自嘲気味に笑った。見た目は人間族と変わりないのだけど怒りが頂点に達したら変身したりするのだろうか。そんなことを考えながら帰路に着く。


「と言う訳で竜神教の司祭として報告しますが、ジン・サガラの働きは見事でしたよ。未曽有の危機を未然に防いだのですから。この国の男爵として冒険者として素晴らしい結果を出したと思います」


 町に戻るとそのままギルドに赴き応接室へ通され司祭が先ず状況を説明してくれた。夜なのでミレーユさんでは無くダンドさんがこの件を対応する。以前の北の村壊滅と違い、事前にこちらから簡単ではあるが事件発生の報告がされており、ギルドから丁度居合わせた司祭に緊急事態を発動し調査官代理の依頼をしていたという。


こうして緊急事態として適切に処理されていた為、後は報告書の提出を求められただけで済んだ。国への報告なので細かい報告書を作るべくギルドに残り、司祭はアリーザさんと共にギルドを後にするというので大型花を花畑まで案内をお願いした。


「遅くまでお疲れ様でした。一応当事者の方で冒険者ギルドと直接関りがあるのがジン殿だけだったので」

「いえいえとんでもないです。では後宜しくお願いします」


 結局何度かやり直しが入り、明け方近くまで時間を掛けて何とか報告書を完成させ提出。そのままの足で町長の家に向かう。夜勤の門兵に挨拶し、町長が起きるまで地面に座りながら塀に寄りつつ待たせてもらった。


疲れからうとうとしながら座っていると声が掛かり、ゆっくり立ち上がると中へ通される。見上げると雨もすっかり上がり青空の広がる清々しい朝になっていた。


「朝早くから失礼します町長」

「おはようジン。こんな朝早くからとは昨夜の件か?」


「その件とそれに関する件で御伺い致しました」

「伺おう」


 町長の執務室で国へ提出した報告書に書いた内容をそのまま伝え、更にジョンジュニアさんの御蔭で命拾いしたとも伝える。


「最後の件がお前が私が起きるまで待っても伝えたかった件だな」

「申し訳ありません急かしたようで」


「急かされた覚えはない。だが起きると兵士が皆落ち着きが無くてな」


 町長が起きてから着替えを終えて部屋を出ると、既に秘書官と兵士が待ち構えていてその日の予定をいつものように伝えながら移動した。だが何度も噛むし転びそうになるしで明らかに変だったので話を聞いて見ると、昨夜から門兵の脇で座り込みながら待っていると伝えられたという。


「町や国として考えればお前には一刻も早く休養を取って貰い次に備えて貰いたいのだがな。司祭もクライド殿もギルドの者ではないのだし」

「以後気を付けます」


「そう願いたいものだな。まぁ良い、その件に関してはお前ならば報告書にも記載しただろうし、こちらから褒美を出したりはしないが、私から直々に褒めておく」

「宜しくお願いします。これで安心して眠れる」


「御苦労だった。ゆっくり休んでくれ」


 こうして町長の家を後にし、ギルドの御風呂屋さんに移動して汗やら雨やらを洗い流してから宿に戻り食事もとらずに爆睡した。その間何度か床に落ちては這い上がりを繰り返し、眠るのに疲れて目を覚まし起き上がる。


シシリーはと言うとこちらも爆睡しており、いつもの籠の中でタオルケットを蹴りだらしなく寝ていた。タオルケットを掛け直してから窓を開けると早朝のようで、空にはぼんやりと夜の後が残っている。帰って来たのも同じくらいの時間帯だし、何日寝てたんだろうと思いながら恐る恐る部屋を出て受付に行く。


「お、おはようございますジョルジさん……」

「おはようございますジン殿。漸くお目覚めですね」


 にっこり微笑みながら挨拶してくれるジョルジさん。ただ漸くってなるとやはりそれなりに連絡を付けたい人が多く居たんじゃなかろうかと思ってしまい嫌な汗を掻く。


「何かこう……大事な呼び出しとか、ありましたかぁ?」


 恐れるあまり妙な調子で尋ねてしまい、それがジョルジさんのツボに入ったようで暫く受付が機能停止に陥ってしまう。


「失礼しました。大丈夫ですよジン殿。陛下とクライド様の御計らいで気の済むまで寝かせてやるようにとのお達しでしたので」


 ……それはそれで全く大丈夫では無いんですけどどうしよう。






読んで下さって有難うございます。宜しければ感想や評価を頂ければ嬉しいです。

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