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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第二章 副業を探して

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窮地に青く

「ハッ!」

「キィ!」


 スタートが向こうなので自然とこちらが受け身になる。ここは焦らずしっかりと太刀筋とスピードを見極めて確実に突こうと動く。だが大型スズメバチ亜種は生温い風が吹く中を自由に動き回り四方八方から攻めて来ていた。完全にあちらのペースだ。体力が尽きるとかあるのか? その前にこっちが尽きるんじゃないか?


「ジン、落ち着いて! 司祭との鍛錬を思い出して!」


 リーチでも劣るので返す事も出来ずジレ始めているのを感じたのか、シシリーがアドバイスしてくれる。そうだ我を忘れて勝てる相手じゃない。落ち着いて見るんだ……まだ一撃だって喰らっちゃいない。


「キッ!」


 少しずつタイミングが分かって来て、的確に当たる瞬間に力を入れられるようになってきた。こうなればしめたもの。こっちに来てから力が格段にアップしてるし分がある筈だ。気合を入れてぶつかる瞬間思い切り不死鳥騎士団の盾を突き出す。


「カアアッ!」

「頑張れジン!」


 押してたのが返され焦りを感じたのか、攻撃が荒く体勢もお構いなしで斬りつけて来た。激しさは増したがその分力の入れ方が御座なりになり弾き易くなる。


「おらぁ!」


 遂には当たる瞬間に思い切り叩き付け弾き飛ばすことに成功。大型スズメバチ亜種は思い切り羽を羽ばたかせ身をよじったが、勢いを殺しきれず地面を擦りながら着地しこちらを口を開けながら見た。


「やったねジン! 凄い! エライ!」

「まだだ!」


 まだ倒した訳じゃない。完全に停止させて捕縛するまでは油断できない。急いで大型スズメバチ亜種との距離を詰めるべく走り出す。


「キイイイイイイ!」


 大型スズメバチ亜種はあと一歩と言うところで口を大きく開け今までで一番大きな声で叫ぶ。一瞬驚いてしまい動きが鈍った間に、さっきまで微動だにせずにいた大型スズメバチがあっという間に近付いて来て亜種を抱えて距離を取り、残りは襲い掛かって来た。


亜種を追い詰めたと思って油断したその一瞬が命取りになったか。視界を埋め尽くす大型スズメバチに絶望しながらも最後まで抵抗すべく兜を被り不死鳥騎士団の盾を出しながら、シシリーだけは何とか助かるよう身を屈める。


「ジン殿!」


 大型スズメバチの針がこちらに迫って来た瞬間、何かがそれらを切り裂いて夜空が見える。そして次に現れたのは青い髪を靡かせ背丈よりも長い剣を振るう女性の剣士だった。


「でやっ!」


 初めて会った時の光景だと思い懐かしく感じる。この世界に来たばかりで、防具すらも無い状態でうろついていたのをゴブリンに襲われ助けて貰ったんだ。色々あったけどあの出会いは今も鮮明に思い出せる。


急いで横へ転がり、近くに居た同期で専務の息子の鈴木に似た大型スズメバチに一撃加え吹き飛ばす。


「ちぇいやー!」

「ちょわー!」


 シシリーも合わせて声を上げ次々と大型スズメバチを倒していく。


「お待たせしましたジン殿! 間に合いましたか?」

「最高のタイミングで来てくれて有難うアリーザさん!」


 背を合わせそう言葉を交わしてから再度周りの敵を倒すべく立ち向かっていく。大型スズメバチを操る亜種が混乱しているからなのか、さっきよりも若干遅く見えた。これなら対処するのも問題無い。


この勢いに乗って一気に叩き潰さないと次は何をしてくるか分からないと考え飛ばしていく。


「おのれ……アリーザまで我らの理想を阻むというのか!」

「誰だ貴方は!」


「私だエダンだ! お前の代理人であり自警団団長であるモグに力添えし、祖国再興の夢の為援助したのだ! 何故その私の邪魔をする!?」

「祖国再興は目指していたが、お前の様な化け物に助けられた覚えはない!」


 アリーザさんの言葉を聞いて吹き出しそうになるのを堪えながら、他の大型スズメバチを叩きのめしていく。亜種は発狂しアリーザさんへと兵を集中させたが、それを難なく切り伏せてしまった。アリーザさんは出会った頃強いと思ったが、今こうして共に戦っても強いと感じる。


涼しい顔をしながら亜種へ近付いて行くアリーザさん。それを邪魔しようと寄ってくる大型スズメバチを殴り飛ばしていく。


「い、いい気になるなよ!? 兵はまだまだ居るんだ! 出て来い!」


 亜種の掛け声で暗い森の奥からブゥンと言う音を立てて大型スズメバチたちがゆっくりとこちらに向かってくる。


「……? 何故だ兵の数が」


 嬉々としていた亜種は戸惑いの声を上げ森を覗き見るような恰好をした。アリーザさんやシシリーを見たが同じように首を傾げている。後ろを見るとアラクネが居なくなっていてピンときた。アラクネの仲間たちが森で大型スズメバチを留めてくれているんだ、と。


「悪いが待ってやるほど甘くは無い」

「くっ糞っ……」


 狼狽したじろぐ亜種に対してじわりじわりと詰め寄って行く。供給源を断てばもう居るのは目の前の亜種のみ。魔法を理解していれば解けるのであれば、瀕死で良いから確保して教会に連れて行く。そして呪いの件もさっき聞いたテオドールの話をして何か手立てが無いか相談してみよう。移した張本人が居れば何とかなるかもしれない。


「アンナさんはまだ生きている。だがお前の理想は今こうして終わりを告げるんだ。せめて娘一人くらい救って見せろ」




読んで下さって有難うございます。宜しければ感想や評価を頂ければ嬉しいです。

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