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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第二章 副業を探して

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夜の花畑攻防戦

「アラクネ! 糸を頼む!」

「了解。おチビ、皆をここに集めて来て」


 アラクネは俺たちを乗せてくれて待機していた蜘蛛にそう告げてから再度糸の製作に着手する。吐いて直ぐ大型花に渡し撚って端を持った俺が走り巻き付けていく。


「何か変よねやっぱり」

「だな。大型スズメバチはこんなにのっそり動かないだろう」


 強制的に動かされているのに抵抗しているのか、こちらに向かって来ては居るものの動きが遅い。このまま行けば何とかなりそうだ。そう思った瞬間。左から濃い殺気を感じそちらを見ずに不死鳥騎士団の盾を前にして横っ飛びする。


「っあ!」

「危ない!」


 シシリーの声より早くカットに入り、アラクネに斬り掛かろうとした殺気の主の得物側面を盾で引っ叩き弾く。その衝撃で殺気の主は大型スズメバチの中へ吹っ飛んで行った。


「おのれぇ!」


 どたどたと走りながら槍を片手にこちらに向かってくる例の小太りの商人。それを待っている暇も無いので素早く距離を詰め恰幅の良いボディへ一撃放つ。流石に何か着ていたようだけどお構いなしに振り切り、体が上空へ打ち上がった後地面に落ちた。


「アラクネ、糸をくれ」

「あいよ」


 アラクネから貰った糸で商人の手首と足首を縛り転がしておく。


「花、コイツらがこの畑に入って来たのか?」

「そうだ、間違いない。だがもう一人いた気がする」


 となるとそいつが主犯だろうな。大型スズメバチを操る力があるなら態々出てきたりはしないだろうし。取り合えずもう一人を確保して一旦村に行こうと思い吹っ飛んで行った方向へ行こうとすると


「フフ~ン」


 調子の外れた歌が夜の森に響く。辺りを見回していると、左奥の森に青白い光が見えたと同時に何かが飛んで来る。誰にも当たらないコースなので避け、それが落ちたところを見ると巨大蜘蛛(ハイアントスパイダー)が転がっていた。


こちらは見晴らしが良い場所に居るがあちらは森の中。相手に既に補捉されている状況でここから森に潜るのは少し分が悪い。幸い向こうがこちらに歩いて来てくれるのでそれを待つ。


「やぁごきげんよう諸君。今日も良い天気だねぇ」


 まるで清々しい朝を迎えたかような挨拶をしながら現れたのは、黒のベストにスラックスそして赤いネクタイをし、白衣を着て赤い短髪を逆立てた男だった。全てからズレている男は瓶底のように厚い黒縁眼鏡を中指で押し上げると、ニヤッと綺麗な歯を見せて笑う。


「皆僕の魅力に固まってしまったのかな? それは仕方ないね天才だからね僕は」

「あの、どちら様で?」


 大きな声でこちらを見ずに話す男。あまり突っ込みたくなかったが話が進まなそうなので恐る恐る問いかける。すると暫くあちこち見回してからギュン! と勢い良くこちらに顔を向けた。動きが全部おかしいんだけどロボットなのかなこの人。


「やぁこんにちはジン・サガラ! まさか今君に会うとは思わなかったよ! これも神の思し召しとでも言うのだろうか!」

「俺を知ってるんですか?」


「知っているとも界隈でなくとも君は有名人だからね! 正直なところ僕としてはもう少し時期が経ってからと思ったんだがね仕方ないねこれは」


 そんなに遠いところまで名が轟くような……と思った瞬間シンラの件を思い出し苦笑いをする。


「まぁそういう話だね。暗闇の夜明けは裏で暗躍していた。竜神教の特権である魔法を外部へ持ち出し利用しながら勢力を拡大。今やどの国の弱みも一つや二つ握ってる存在だ。それが名も知らぬ冒険者にやられたとあって界隈のみならず政治も賑やかさ。凄いね、ヨッ! 有名人!」


 ミュージカル俳優のように動きながら喋る男。出来ればあまり関わり合いになりたくない人物なのは間違いない。さっさと用件を聞いてお引き取り願おう。


「ところで貴方はここにどんな御用で?」

「御用? もっとフランクに聞いてくれ給えよジン! 胡散臭い男め! 何処から来たんだ!? と! 何処から来たかは教えてあげないが、ここには私の作品を回収しに来たんだよ!」


 夜も更けてるのに声がデカいし通るし耳キーンてなる。だが最後の言葉だけは聞き逃さなかったぞ? 私の作品……ひょっとして大型花を人型にしたのはこの人か?


「大型花を連れて行ってどうするつもりだ?」

「ん……? うーん……? ああ大型花ってAシリーズの事言ってる? Aシリーズを連れて行ってどうするつもりかと聞かれると僕も困るよ? 何か目的があって作った訳では無いんだよねぇ因みに……敢えて言うなら研究欲求を満たす為に? 的な?」


 ビックリマークの次ははてなマークの連続。前に渋谷で屯してた女子高生とでも喋ってる気分になって来た。全てが噛み合わないぞこの男。しんどくなって大型花に視線を向けると怯えている。間違いないこの男が彼女をあの姿にした張本人だ。


「危ない!」

「おやぁ? このタイミングなら確実に入ると思ったのにねぇ」


 一瞬視線を逸らしただけで躊躇いも迷いも無く飛び掛かって来たぞコイツ。袖の下に隠していたであろうメスを両手に持ちこちらの首を斬らんとして来たが不死鳥騎士団の盾で防ぐ。



 

読んで下さって有難うございます。宜しければ感想や評価を頂ければ嬉しいです。

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