何処かにある答えを探して
「司祭には」
「当然話はした。だが無理だそうだ。竜神教をもってしても……いや竜神教だからこそ出来ないと言われた。そりゃそうだよな大地から生まれた神の使いに酷い事をした結果の呪いだ。同じく大地から生まれた神の使いを崇める者が同じ人間だからと言って救えない」
「何か解決策はあるんじゃ」
「お前さんがシンラを倒したと聞いて呪いが元に戻ったかと思ったんだが御覧の通りだ」
力なく笑うクライドさん。アンナさんも寂しそうに笑いながらローブを握る。唯一のチャンスが来た上にそれを達成したと聞いた時の二人を思うと、何とも言えなかった。シシリーは少し間を開けた後、肩からアンナさんの周辺に移動し一周してから戻って来る。
「シンラは凄いわね。神様の使いの呪いも強引に移せるんだから。その才能を違う方に向ければ多くの人を救えたでしょうけど……呪い神になったヨシズミシープと同じような境遇なのかもしれないわね」
「呪い神?」
「そう、ヨシズミシープは神様の使いで恐らく初代の妻が神に対して敬虔であったからこそ遣わされたんだと思うわ。予想だけど妻が亡くなれば同時に亡くなってたんじゃないかしら。それを殺意を持って殺したのは神をも恐れず敬わない者。ヨシズミシープからすれば悪魔と同等となった彼らに対し、神の代行者となり彼らに罰を与えるべくこの地に居る筈。恐らく男だからというよりも卑しい人なら女でも掛かってたと思う」
「何処にいるのか分かるか?」
「神様が何処にいるのかって聞かれてるのと同じよ? 私には魔法の痕跡は見えても神様までは見えない」
「何か方法は無いのか?」
「あるとは思うけど直ぐには分からないわ。でも何処かに必ずヒントがある筈なのよね。だって本当に憎いならその一族を滅ぼすでしょう?」
シシリーに言われてクライドさんとアンナさんと目を合わす。確かに早死にするがアンナさんの父親はアンナさんに呪いを移すまで生きていたじゃないか。
「あれ、そう言えばアンナさんの父親って」
「ヨダの村の守備隊長だ」
「お幾つで?」
「三十五とか」
「アンナさんは?」
「……アンナの年が何か関係あるのか?」
「つかぬことを伺いますが、クライドさんの奥様は?」
「何か関係が?」
場がシーンと静まり返る。露骨に目を逸らすクライドさん。アンナさんに視線を移すともじもじしていらっしゃる。あぁ~完全に理解した。
「そうと分かればこのジン・サガラ、出来る限り協力したい所存!」
「そんな張り切るな。お前はあくまでも冒険者なんだから、自分の仕事をしつつ気になったら教えてくれればいい。下衆の勘繰りをしているようだが宰相の指名もあってのことだ。アンナの病が良くなれば相応しい相手のところに嫁がせるつもりだ」
「……そんな……」
クライドさんはこちらがしているであろう下衆の勘繰りとやらを解消しようと早口で懸命に話した結果、アンナさんはショックを受けその場から走って居なくなってしまう。
「あ、アンナ待ってくれ! 糞ッ覚えてろよ!」
悪役の様な捨て台詞を吐いてアンナさんを追うべく風を巻いて走り出すクライドさん。つい自然とニヤついてしまったのをシシリーに見つかり頬を抓られながらそれを見送り、ブランさんたちに夕食のお礼を告げてクライド家を後にした。
ブランさんたちから今後とも二人と仲良くして欲しいと言われ、勿論と答えて宿に戻る。世の中悪い人も見つけ辛いが良い人はもっと見つけ辛く得難いものだと元の世界で学んだ。
「ジン、あの男を見掛けた話、しなかったのね」
「必要無いかなと思って。あの二人に話が行く前にケリを付ければ良い。シシリー、家で寝てるか?」
「私は全く問題無いわ! たっぷり寝てるし休んでるし」
昼間見掛けた例の商人とエダン。確実に連中が何かを企んでいてその狙いはヨシズミシープであるのも間違いない。一匹二匹なら直ぐ足が付く、となれば一気に連れ去る方法を考える筈。そして暗闇の夜明けとの関りを考えると何をしてくるか予想が付かない。
司祭に協力を依頼しようと考え教会へ向かう。奴らに当てがあるとしたら流石に自分一人では手に負えない。知識が豊富な司祭なら何か分かるかもしれない。
「ジ、ジン殿!」
兵士が一人、松明を手に町の北口の方向から走って来た。何かあったのかと思い邪魔しないよう道の脇へ移動すると、あっちも進路を変更しこちらへ向かってくる。そして声を掛けられた。
「どうしました?」
「これからどちらへ?」
「えっと……司祭の所へ行こうと思ったのですが」
「も、もしお急ぎでないなら北門まで御出でください。司祭様のところには私が参りますので」
どうやら急ぎの用らしいので司祭への伝言は良いと断り急いで一人北門へ向かう。閉められた門の前に居た兵士にどうしたのかと尋ねると、町の入口に変な者が居て”ジン・サガラを呼んで欲しい”と言う。
シシリーと見合い恐らく大型花だと思って脇にある小さな扉を開けて貰い外へ出ると、やはり大型花で少し離れた位置に居てこちらを見つけると手を挙げた。
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