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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第二章 副業を探して

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花畑を荒らす者

「わー! 綺麗!」

「そうだろう? ここは人間も偶に来てじっと眺めたりしている場所だ」


 微笑みながら花畑をシシリーに紹介する人型花。微笑ましい二人の顔を曇らせる低い音が先の方からしてくる。


「あれがこの花畑を荒らす元凶か」

「そうだ。アイツらは限度を知らない」


 濃い黄色と黒の体に悪役然とした顔の虫。それは集団で花畑に飛び込んでくると手当たり次第に荒らし始めた。元の世界でも事業所の軒先に巣を作られたが、駆除業者が来るまで出社する時に襲われたのを思い出し鳥肌が立つ。


小さくても怖いのにそれが巨大化していたら尚更だ。とは言え倒さない訳にはいかない。そうしないと大型花が人間に駆除されてしまう。個人的にはどちらを敵に回す方が良いかと問われれば目の前の山賊、スズメバチが巨大化した集団だろう。


この世界に来てパワーアップもし鍛錬もし、更に防具も青銅になった。先ず気持ちで負けないよう奮い立たせ退治に動く。


「行くぞ」

「おー!」


 連中の背後を取る為、一旦森に戻り花畑を回り込むように移動する。


「キシャアアア!」


 金切り声で叫び体を大きく広げ威嚇して来る大型スズメバチの集団。どうやらまだ仲間が居たようで丁度花畑に行く途中の連中と出くわしてしまった。不意打ちを仕掛けたかったが仕方ない。


「風神拳!」


 相手の尻に毒針があるので数を減らして戦わないとあっという間に殺される。完全に気が溜まらない状態の風神拳でも一瞬動きを止められると踏んで放つ。だが彼らは風が起こるのを察知したかのように流れを泳ぎその場に留まった。


「おい花! 下がっててくれ!」


 大型スズメバチは花の蜜を吸いに来たのだからこの中では真っ先に彼女が狙われる。現に奴らは俺を見ていない。手には得物は無く体をくの字に曲げて尻の針を彼女に向け襲い掛かろうとしていた。不死鳥騎士団の盾を構えて、彼女に撤退を促すとそれを追うように移動する大型スズメバチ。


「どりゃっ!」


 無視してくれているので側面から不死鳥騎士団の盾で殴りつけては木陰に隠れを繰り返す。大型花も察したのか大型スズメバチの視界に入るように逃げて行く。丁度ニンジンを目の前でぶら下げられて走る馬のような状態になった連中を次々に潰していった。

 

「花! 花畑のも森に!」


 倒しながら叫ぶと遠くの方で頷き花畑に入る。森の連中を叩き潰し終えてから森の中を大型花をみながら並走して走る。他の花の蜜を吸っていた他の連中も大型花を見るなり追い始め森に入って来た。


俺は花畑と森の境目に隠れ来たところを殴りつけていく。空腹のところに少し餌を取ったのが災いし、仲間が殴られてもものともせず追い掛けようとしては殴り倒されていった。


「終わったか?」

「また来た!」


 見るとこの連中が来たであろう森の奥から集団が目を赤く染めて飛んで来る。俺は気を練るべく構えを取る。


「危ない!」


 声に反応し後ろを見ると倒しきれていなかったのか隠れていたのか、大型スズメバチが一匹針を突き出しながら飛んで来ていた。貫通しないのを祈りながら受けるしかないと覚悟を決めながらも体を捻ろうとすると


「貸し一ね」


 横から何かが飛び出て来て俺を突き飛ばす。よろけながら見るとブロンドの髪を靡かせボンテージを着た美人が、大型スズメバチに回し蹴りを喰らわせ吹き飛ばしていた。


「アラクネ有難う! 助かる!」


 その間に俺は気を練り直し構えを取り風神拳を大型スズメバチの大群に向かって放つ。だが今度は全てを巻き込めず上手い具合に木の陰に隠れやり過ごされてしまった。これは竜神拳を打って直ぐ距離を詰め倒しを繰り返す他無いか。


「ちょっと行ってくる!」

「しょうがないわね」


「皆でやっつけるしかないか」

「いえ大丈夫!」


 シシリーが彼らの上を指さした。すると揺らされた木々から水がバサッと落ちて来て大型スズメバチに掛かる。


「あらまぁ運が良いわね」

「昨日の夜降った雨の残りか」


 そんなに多い量では無いが、水が掛かった大型スズメバチは羽の動きが鈍り地上に降り始める。そしてその隙を逃さず襲い掛かり蹴り飛ばしていく。アラクネや大型花も大型スズメバチを来た方向へ飛ばしていき、やがて彼らも逃げるのに必死になり始め戦闘は終了した。


「アラクネありがとう助かったよ」

「少しはお役に立てたのなら何よりよ。それにしてもまた珍しい人物と交流があるのねジンは」


「助かったが貴女は一体……」

「貴女とは少し違うけど似たような者よ。環境の変化と言うか世の中の変化に合わせて生まれた変異種」


「そうか背中から生えてる足からして蜘蛛の変異種か」

「そう。私たちは花を荒らしたりするよりも、貴女達の周りに群がってくる奴らを餌にしているわ」


「ひょっとして餌場を探しに来たのか?」

「察しが良いのねその通りよ。あそこでも今は困ってないけど何れ困るかもしれないから色々餌場は確保しておきたいの」


 大型花を見て頷く。アラクネが協力してくれれば大型スズメバチの荒らしを大分減らせる筈だ。大型花はぎこちないながらも勇気を出してアラクネに協力を依頼。アラクネも餌場を確保したいから喜んで協力してくれるという話で纏まり、何かあれば山を一つ越えた先にあるシオスの町に来てくれと伝えて解散となった。


村に戻ろうと来た道を歩いていると、例の商人が兵士を連れて戻って来て荷物を回収していた。





読んで下さって有難うございます。宜しければ感想や評価を頂ければ嬉しいです。

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