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俺の恋敵が人間じゃないなんて聞いてないんだが  作者: 水無月やぎ
第3章 てんこ盛りの11月
74/80

#74 それなりに美味しいポジション

 屋上に着くと、華音様が小さく手を振る。

 朝日の下で密会。これはこれでまた良いシチュエーションだ。爽やかな日差しと、2人だけのスリルが絶妙なコラボをしている気がするよ。


「あ、良かった来てくれた」

「どしたん?」


 彼女は俺の元に駆け寄り、ちょっと小声で話す。密会だもんね。

 すると彼女は真似するように、ちょっと小声で話してきた。可愛い。


「あのさ、この映画興味ない?」


 スマホの画面を見せられ、覗くとそこには“今世紀史上最凶かつ最恐——あなたはついてこられるか?”という前書きがされた、ホラー映画のHPが開かれていた。

 まぁ一応ホラー大丈夫だけど……。待って、華音様こういうの好きなの?!

 ホラーはまぁ、大丈夫っちゃ大丈夫だし、だいじょばないっちゃだいじょばない。皆川先輩に悠馬というリアルバケモンホラーを一般人以上に体感している俺だが、フィクションはノンフィクションの斜め上を行く時があるのでそこが怖い。スプラッタ系のホラーはマジで死んじゃう。小学生の時、自分の擦り傷を見ただけで泣いた奴だ。さすがに免疫はついてきたが、俺はあの時に「医者には絶対なれねえ」って幼ながらに確信した記憶がある。

 華音様の開いたHPを見た所、スプラッタ系ではないらしい。それならきっと大丈夫なはずです。


「ま、まぁ、ホラー大丈夫だけど?」

「よかったぁ! じゃあこれ、今度の土曜日観に行かない?」

「え」


 いやまぁ、流れ的にそうなるかなとは思ってたけど。いざ現実になるとやっぱなんかちょっと胸のあたりがドキンドキンと……。


「ん?」

「あ、いや、仲良いグループの子、誘わないの?」

「それがみんなホラー嫌いでさぁ……こういうゾクゾクするのこそ、ただのラブコメよりお金払って観る価値あると思わない?」


 まぁ価値観は多様ですが。意外だ。

 ラブコメ好きそうってか、あなたがラブコメ出てそうなのにね。


「お、おう、そうだな……俺土曜空いてるから、いいよ」

「ほんと?! よかったぁ!」


 思ったよりあっさりデート成立。

 てかまぁ、俺はきっとただのホラー映画要員なのだけど。


「けどさ、他の男子とかでも良かったんじゃ?」

「え、京汰くん、やっぱ無理……?」

「いやいやいやいやそうじゃなくて! 俺も楽しみだし!」


 慌てて否定すると、華音様は意地悪っぽく笑った。あぁ、小悪魔。


「怖かったら、しがみつけそうだから」


 隣だと何か安心するって前にも言ったじゃーん、と俺の肩を軽く叩く。

 ホラー映画のしがみつき要員。

 ……うん、まぁそれなりに美味しいポジションではある。堪能させていただこうじゃないか。


「それから京汰くん」

「はい」

「私のこと、そろそろ名前で呼んでもいいんだよ?」

「へっ」

「へっ、じゃなくて! 華音でいいからさ!」

「かっ、かのんっ」

「普通に呼びなって!」


 朗らかに彼女は笑う。マジか。

 俺が長らく答えを出せなかった、呼び方問題。

 その解答を今、彼女が導き出してくれた。それはなんと、下の名前を呼び捨て!!

 ……昇天してもいいですかね。


「名前呼ぶのくらいどうってことないでしょ!」


 すると、朝礼を告げるチャイムが鳴った。

 あ、帰らなきゃね! と言って、俺の手首を掴む。

 俺はされるがままに屋上からの階段を下り、教室のある階に着いたところで手首が解放される。


 華音様と多分一応デート……。

 いやでも俺ホラー映画のしがみつき要員だもんな。これデートなの? 後でデートの意味辞書で調べておこう。



 今日まだ火曜日なんだけど。

 土曜日まで俺の心臓持つかな。

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