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俺の恋敵が人間じゃないなんて聞いてないんだが  作者: 水無月やぎ
第3章 てんこ盛りの11月
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#46 ごめんねヒツジ

 文化祭2日目。

 悠馬に告白タイムの話題を出されてから、今まで以上に華音様のことが頭から離れなくなってしまった。

 彼女が夢に出てくるのは至上の慶びのはずなのに、昨晩はうなされる結果になった。ここまで寝起きが悪いのは久々だ。


 昨晩は、控えめに言って最悪だった。

 時計の針は止められない。このまま明日が来てしまう! うう、どうしよう。

 俺は布団の中で1人、脳裏に華音様が浮かんでは消え、を延々と繰り返していた。

 自分からアタックする勇気がないくせに、誰かのものになったらきっと俺は嫉妬で狂いまくって、また頭おかしくなりそうな気がするのは割と目に見えている。もう俺クズ過ぎるな。手に入れようとするのも、手に入れられないのもどっちも嫌って、駄々こねる子どもと同じじゃんか……うう、俺の精神年齢……。

 そんな考えが永遠にグルグルしそうだったので。俺は脳の端っこからヒツジを引っ張り出して、それを数え始めたら少しは寝られた。ありがとうヒツジ。でもヒツジも朝5時台に勤務させられるとは思っていなかったのだろう。心なしか疲れた表情しながら1匹ずつ柵を飛び越えていたことは、妙にリアルに覚えている。


 元気のないヒツジを無理やり働かせてしまったことに申し訳なさを感じながら、のろのろと目を開ける。すまんヒツジ達よ、時間外手当は後で支払うさ。


『あら、どうしたのよ、元気ないじゃない。今日もお祭りなんだから楽しく行くわよ』

「告白タイムとか言われたら祭りどころじゃねえだろもうううう! 俺ぜんっぜん寝られなかったんだぞ」

『なんか京汰くんとこのヒツジがサービス残業させられたんでしょ』

「人聞き悪いし、なんで俺の脳みそにまで入り込んでくんだよ」


 ヒツジが可愛そう、と言いながらジンギスカンを口ずさむ式神を見て、矛盾の2文字が脳内にでかでかと映し出されて駆け巡る。

 そして乱れた精神状態のまま、俺はシフトを務めることになってしまった。


<クマひどくてジャケット似合ってないよ>


 机にもたれかかってボーッとしている俺の横で、またも失礼極まりない発言をする悠馬。

 てめぇのせいだっての!


 ……まぁ、華音様がこの場にいないのは、今日はある意味救いだ。

 展示で手持ち無沙汰の他クラスの人間や、歩き疲れた父母の方々が、絶え間なく俺のクラスにやってくる。お陰で女子が丹精込めて作ったクッキーも、もうすぐ売り切れそうだ。

 ただ、訪れる女子の数は、昨日よりもなぜか少なく感じる。


<ダンス部の発表も、女子人気爆発してる皆川先輩の試合も今日だもんね~>

(あーそゆことか)


 そりゃあ女子はごっそり持っていかれるねぇ。

 あれ、なんか遠くで俺を呼ぶ声がしているような気がするよ。


「……おい。おい藤井お前生きてんのか」


 同じシフトのクラスメイトに肩を叩かれた。あまりにボーッとしていたみたいで、俺の体は予想以上にビクッとする。


「あーごめん何」

「紅茶入れろってば! 魂抜けたお前マジで使えねぇぞ」

「すみません……」


 ヤバいヤバい。せめてシフトの間はしっかりせねば。

 自分の頬をつねってから、こぼさないように紅茶を入れる。

 チラッと悠馬がいた方を見ると、もういない。何見に行ったんだろ? 皆川先輩のバスケ?

 いや、女子の生脚好きだからダンス部だろうか……。

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