表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺の恋敵が人間じゃないなんて聞いてないんだが  作者: 水無月やぎ
第1章 出会いの9月
4/80

#4 奇妙な出会い

 悠馬の正体は、理解できた。うん、把握した。

 いや……でも、待ってくれ。待て待て。

 親が子どもの心配してくれんのは分かる。分かるんだけどさぁ……。


「世話なら、なんでお手伝いさんとかじゃなくて式神なんだよ……」


 思わず呟いた俺に、悠馬はにっこりと答えた。


『あぁ、お父さんによるとねぇ、金がかからないから、だって!』


 なるほど。金の節約の為に式神を作る家庭、か。まぁ一周回って賢い?

 ……ってそんなの、聞いたことねぇよっ!!!


 俺は靴を脱いで、家に上がった。あまりの事態に驚きすぎて、自分の家なのに上がるのを躊躇していたのだ。なんてこった。

 パンを食べ終わって、手についた細かいカスをパンパンと払っている悠馬を素通りして、階段を駆け上がった。

 とにかく、自分の部屋へ急ぐ。なぜだ。今日は自分の部屋が心なしか遠いぞ。早く部屋にこもりたい!!

 ……だって、家に帰ったら式神が挨拶してきたんだ! マトモじゃいられない。

 とにかく、とにかく今は、自分一人でこの状況を整理する時間が欲しかった。いくら陰陽師の家系とは言え、まだ俺は式神なるものにご対面したことがなかったからだ。


 何が遊び相手だ、全く。人外のモノと戯れるような物好きじゃないんだ、俺はっ!

 父親の作った代物に、割と本気で腹が立つ。

 いっそのこと、父親と式神にまとめて呪詛じゅそでもかけてやろうかこの野郎、と思ったのだが、下手すると父親からとんでもない呪詛返しが来そうなのでやめることにする。


 こんな具合で無駄に脳内がぐるぐると回転している間、背中の方で少し気配を感じた。


「…………?」

『ねぇ、何も言わずに部屋にこもるなんてひどいよ。こう、もっと赤裸々にお互いのこと話すとかさぁ……』


 すぐ後ろに、悠馬がひょろっと立っていた。背筋がゾワっとした。 “ゾ《《ク》》"っと、じゃない。

 “ゾ《《ワ》》"っと、だ。

 早速人外の本領発揮か。もう夏は終わったんだよ、妖怪のシーズン終わったんだって。


「ド、ドア開いた音しなかった……ぞ……? どうやって入って来た……??」


 ただ瞠目どうもくする俺を、悠馬は非難の色を帯びた目で見つめる。


『いやいや、そこは壁からするっ、とね。ねぇ京汰、僕は式神なんだよ? 人間じゃないのさ。陰陽師の血を引いているんだったら、こんなことでビビっちゃダメだよ。男じゃないぞっ☆』


 ずっと黙りこくって口を開かない俺に、悠馬はさらに続けた。


『なぁんで黙ってるのさ。最初からそんな態度じゃ、この先色々心配だよ』


 それ、こっちの台詞だろ完全に。

 ……どうもこいつも父に似て、お節介な所がありそうだ。


 こういうお節介な奴は、マジで腹が立つ。許さんぞ親父。


「……お前、消すぞ」

『そんな物騒なこと言わないで』

「お前の存在が物騒だ」

『な……っ……!』

「オンアビラ……」


 刀印を組んだ俺の手を、悠馬は慌てて強く握ってきた。


『分かった、分かったよ京汰! もう壁からするっと方式とかやらない! ごめん!』


 俺はスルーして呪文を唱え続けようとしたが、やめた。必死に謝る式神を見て、訳の分からない情が生まれてしまったのだ。

 仕方ねぇなぁ、と俺は刀印を外した。

 ほっとした表情で、ごめん! ごめんね、と悠馬は言って部屋を出て行った。

 もちろん、ドアから出て行った。

 1人になったのを確認してから、盛大なため息をついた。 勝手にパン食うし、何か俺より良い顔立ちだし、お節介だし……。


 もうちょい可愛げと遠慮のある奴を用意するという気遣いはないのかね、父さんよ。

 悠馬って奴はしょっぱなから、色々と憎たらしい式神だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ