表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺の恋敵が人間じゃないなんて聞いてないんだが  作者: 水無月やぎ
第3章 てんこ盛りの11月
37/80

#37 心の天秤

・・・・・・・・・

「じゃあ、これで解散! みんな色々頑張ってなー、俺も頑張るから」

「いや教師が何頑張るの」

「演劇部の公演準備は顧問の仕事だって」

「どうせ泣くんでしょ。公演後、引退する部員よりも泣くって毎年有名らしいじゃん」

「お、お前ら1年なのになぜそれを……!」


 涙腺崩壊のハードルが異常に低い担任の先生は、今日もしっかりイジられている。生徒の活動見て泣けるって、私は素晴らしいことだと思うよ。


 朝のHRが終わって、私たちは各自の持ち場に移動することになった。まずは控え室の理科室で着替えて、それから体育館に行かなくちゃ。

 演劇部とかダンス部とか吹奏楽部とか、舞台の上で何か披露するのも結構憧れる。でもセリフとか振り付けとか楽譜とか覚えるのはきっと向いてない。オリジナルの台本や振り付け、楽曲を披露することもあるらしいので、そうなったら私はもうキャパオーバーだ。だから、体育館という舞台で自分なりに頑張ろうと思っている。


 さっきまで教室では、いつも以上に何か視線を感じた。私のポニーテールが珍しいからかな?……ってそんな自惚れはダメだダメだ。試合前だってのに何を自惚れているの。

 それか、1年で唯一のレギュラー出場が気に入らないから……?

 ……ダメだダメだ、自惚れたと思ったら今度はすぐネガティブになっちゃう。別に誰からもやっかみとか言われてないし、陰湿なイジメも受けていないし、むしろ応援してくれてるのに。さっき女バスの友達がスポドリ差し入れしてくれたじゃない。人の好意を素直に受け取れるようになりたい。もっと良い性格になりたいなぁ。


 京汰くんみたいに?

 ……なんちゃって。


 彼のことを思い出したら、少し緊張もほぐれた。


「文化祭を超自由にまわれる! それこそが帰宅部の特権! 準備に追われたり、緊張に苛まれたりすることもなし! 飯食って冷やかしてればいいだけなんて、なんて楽チンなんだ! 帰宅部万歳! やっほーい!」


 ……とか何とか朝から叫んでる彼は、帰宅部だけどクラスの中心的存在で、何だかんだでいつも男子の輪の真ん中にいる。とにかくノリが良くて、そこが人気の秘訣だと思う。部活っていう権力の絡む帰属を持ってないのにだよ? 純粋にすごい。

 いつも「バカ」「世紀末の大バカ」「地球が生んだ奇跡のバカ」「もはや保護が必要なレベルで貴重なバカ」とか男女関係なく言われてるけど、裏を返せばみんなに好かれてるってことだし、顔立ちも割と整ってるんだよね、おバカキャラのせいでそこらへんはかなり曇っちゃってるんだけど。黙っていればモテそう。でも言動があれほど面白くて話題になる子もあまりいないから、やっぱ喋ってて欲しいかも。……どっちよ一体。


 彼が試合を見に来てくれることをちょっぴり楽しみにして、体育館へと向かう。

 ……あれ、自分浮き足立ってない? 一番見て欲しいのは大和先輩じゃないの?

 うん、大和先輩のはず。エースでイケメンで頭も良くてみんなに優しいけど、怒る時はきちんと怒れる、憧れの大和先輩。バスケ部以外からも、3年生の女の先輩からも大人気な大和先輩。私はきっと、彼が好きだ。


 でも、膝の痛みに気付いてくれたのは京汰くんだけ。痛くても試合に出ることの重要性を分かって、今日まで私との秘密を守ってくれたのは京汰くん。

 あの助けてくれた日から、心の中で無意識に、“藤井くん”じゃなくて“京汰くん”って呼んでしまう。そして教室に入れば、まず京汰くんを見ようとしてしまう自分に気づいている。



 あれ、私が本当に一番見て欲しいのって、誰なんだろう……?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ