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俺の恋敵が人間じゃないなんて聞いてないんだが  作者: 水無月やぎ
第3章 てんこ盛りの11月
34/80

#34 カオスでハードモードな1日

・・・・・・・・・

 早いもので、文化祭当日はあっという間にやってきた。準備期間はめっちゃ長く感じるのに、いざ本番を迎えると秒のように過ぎている。人間の時間感覚は奇妙過ぎる。


 学校の雰囲気もガラリと変わり、校内にはジャニーズメドレーやアニソンが絶えず流れている。ジャニーズのグループ、今年のデビュー組に偏りすぎでしょ。……そう言えば、今年の放送委員会の委員長は筋金入りのジャニヲタだとか言ってたな。担当、つまり“推し”のために10万単位で貢ぐとか貢がないとか。忖度の度合いがすごいなぁ、やっぱ学校って社会の縮図なんだろうなぁ、とふと思う。

 本格的な仕込みも始まっているようだ。焼きそば、たこ焼き、おでん、焼き芋、りんご飴、スモア、ワッフル、チョコバナナ……様々な屋台の匂いが混じっていて、冷たいはずの空気がもわっとしている。


 今日は午前中が試合で、午後の1時間が模擬店のシフトと、明日の練習。明日も試合だけど、それは男子のバスケ部。午後の練習とは、要するに男バスのトレーニングを一緒に行うということだ。試合と模擬店後に男子用のメニューをこなすとは、なかなかハードモードな1日である。

 文化祭の後には、また別の試合が控えている。その試合でもメンバーに選ばれるためには、今日結果を残す必要がある。膝の痛みは先日よりだいぶ良くなってきた。良かった。

 次の試合メンバーの選考は、コーチとOG数名、男バスの2年のエースとキャプテンが今日の試合を見ながら行うらしい。つまり、今日だけが全てじゃないけど、かなり大事な試合になってくるのだ。今ひしめきあってる屋台のもわもわした空気は、今の私の心みたい。緊張と焦りとワクワクと不安と、よく分かんない感情と。全てがもわって融合してる感じ。まぁ言わばカオスってことよね。

 カオス。うん、なかなか的確な表現じゃないの。と心の中で自画自賛しながら、今年大ヒットしたアニソンの流れる廊下を歩いていく。


 みんなに、かっこいいとこ見せたいなあ。


 屋台を通り過ぎ、廊下に面した洗面で髪をポニーテールに結っていると、「おはよーう」と声をかけられた。鏡越しで確認しようとすると、細くて背の高い、こげ茶の髪をした男子生徒が映っていて、挨拶する前に「あっ」と言ってしまった。

 筋肉などなさそうなくらい細いのになぜかパワーがあって、182cmあって、頭髪検査引っかかりそうなレベルの明るい地毛を持っている、自称・純ジャパの男子生徒。

 ……そう、誰もが認める男バス2年のエース、大和やまと先輩が立っていた。

 あ、大和ってのは下の名前で、私が心の中で読んでいる名前。名字は皆川だ。


「皆川先輩! おはようございます」

「今日の試合頑張ってね、楽しみにしてる。1年で唯一だもんな、マジすごいと思う」

「はい、ありがとうございます! でも皆川先輩も去年唯一選ばれてたって聞きましたよ?」


 大和先輩はちょっと意地悪っぽい笑みを浮かべた。


「バスケ歴12年ですからねえ」

「エキスパートですよね、本当にすごいし憧れてます」

「おお! 直で後輩から憧れてるとか言われたことねえ! 嬉しいわー」


 素直に喜んでくれるところが、私も嬉しい。自分に正直になれる人って、本当に輝いて見える。


「じゃ後でね!」と大和先輩は言って、スタスタと歩いて行った。


 目の前の鏡を見据えて、一度深呼吸をする。

 今日は頑張るぞ。


 次の試合と、大和先輩のために。

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