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俺の恋敵が人間じゃないなんて聞いてないんだが  作者: 水無月やぎ
第1章 出会いの9月
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#3 あんた誰やねん

・・・・・・・・・・・・・・・


 俺は家の戸を開けた。昨日の夕方から出かけて、友達の家に泊まり、今日、少し遊んで帰ってきたのだ。

 今朝方、父は出張にでかけたはず。一緒にいると、「おい京汰、勉強したか?」とか「すぐ寝るんだぞ」とか、何かと口うるさい父だ。現在母も海外出張のせいでいないこの家で、俺のことを考えてくれてるのは分かってる。分かってるけど……。

 いない方が、静かでいいと思ってしまうのだ。思春期ってやつは、色々と面倒だ。心も行動もなーんか自分の思い通りにならなくて、苛々する。

 また、俺だけの生活が始まる。……今度はかなり長期間だろう。


「ただいま」


 誰もいないことは知っていた。何となく口に出してしまったのだ。

 ……が。


『ん? あ、おかえり。ごめんね、勝手にパン食べちゃった。あ、や、でも、期限切れのやつなんだけどね……あ、そうそう、お父さんは出張に行ったよ、ちゃんと』


 応答があった! どういうこと?!

 他人の家に入っちゃったかな、これもしかして不法侵入? 初犯? と本気で思った。……いやいや、今さっき俺自分で鍵開けたし! ここは慣れ親しんだ俺の家。何があっても俺の家!


 怖くなって逃げ出したい衝動に駆られたが、必死で踏みとどまった。

 俺の家なんだ! 逃げる理由なんてないよな?!


「だ、誰だよ……」


 俺は一歩後ずさった。警戒を強める。

 と、ダイニングから食パンをくわえてひょっこりと現れたそいつは、あーそっかそっかそか、ごめん、と言って頭を掻いた。

 何がそっかそっかだよ。パン食い泥棒め……っ!!

 でも男のくせして何気に可愛い顔でパンをくわえたまま立っている正体不明の奴に惑わされて、どうでもいい言葉が口をついて出てしまった。


「それよりお前、期限切れの食パン、て……大丈夫なのか」

『まぁだいひょぶだよ、にんげんひゃないからねぇ。これがはあして、ひょーかひゃれるんだかでゅおーかもわかりまひぇん(まぁ大丈夫だよ、人間じゃないからねぇ。これが果たして、消化されるんだかどうかも分かりません)』


 奴の言葉が変なのは、パンをくわえてもぐもぐしたまま喋っているからだ。

 一度思考回路が止まって、「え?」と馬鹿みたいに聞き返した俺に、パンを口から外して、咀嚼していたものを飲み込んだ奴は答えた。


『僕は、悠馬。長い間1人になるから心配だって言って、君のお父さんが僕を作ったんだ。これからは君の……遊び相手兼同居人兼お世話係ってことだね。京汰、よろしく』


 俺は一瞬、固まった。

 人間じゃないって……。

 人外のモノがいる。存在している。

 そして彼は、“作られた"。

 父の正体を知っている俺は、そこで察しがついた。

 それって、もしかして……。


「し、しきがみ……?」

『ピンポーン。ご明察』


 そう。

 この悠馬とかいう奴は、陰陽師の父が勝手に作った式神だった。

 俺ももちろん、陰陽師の血を引いている。だから、俺には奴がえるんだ。

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