表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺の恋敵が人間じゃないなんて聞いてないんだが  作者: 水無月やぎ
第2章 決戦の10月
21/80

#21 京汰15面相

 色々な意味で俺の人生を変えてしまった、中間テストの成績表と平均点表の張り出された翌日。

 降りしきる雨の中、俺は恐らく、憔悴しきった顔で登校したのだと思う。クラスメイト達は気味の悪そうな顔をして、おはよう、も言わずに申し訳程度に片手を上げただけだった。

 おぉ、マジか……声もかけてくれねぇのか……。

 パラレルワールドに魂置いて来たから、話しかけても無駄だと思ってんのかな。それとも、幻覚見えてるヤバい奴とは本能的に距離置いとこう的なマインドなのかな。そもそもこの状況で登校してくるとかお前正気かよ的なことなのかな。

 でも学校休んだら、さらに正気ではいられなくなりそうな気がする。


 昨日、悠馬に極限まで罵倒されて、俺は相当精神が弱っていた。だって、まだセンチメンタルな思春期まっただ中の高校生だぜ? 俺はこう見えて、ガラスのハートの持ち主なんだ。昨日はハートがパリーンっていう音がした。確実に聞こえた。そして、悠馬の言葉のナイフは鋭かった。まぁ切れ味の良いこと。スパーンスパーン! って小気味いいくらいの音を立てて、俺の心を切り裂いていった。……まぁ、こうなったのも自業自得なんだけどな。


 本気で、スクールカウンセラーか保健室の先生に相談したいと思った。でも、なんと言えばいい?


——学校で式神に大声で話しかけちゃって、好きな子にドン引きされて、式神も俺のことフォローしてくれなくて、なんかめっちゃ罵倒されて..……。


 いくらカウンセラーと言えども、この手の話を信じるだろうか。いっそのこと、占い師に相談してみた方がいいのかな。でも占い師だって、そもそも陰陽師とか式神とかいうキーワードを知っているのか? それに、一般ピーポーにとって視えないヤツが相手じゃあ、埒あかないと見える。きっと恐らく多分確実に間違いなく、“ファンタスティックな想像力を持つ、ちょっとアブナい生徒”としか認識されないよな……。そしていつの間にか、近所の奥様方の美味しいネタになる……。ファンタスティックじゃねえんだって。現実に、俺の同居人兼家政夫兼恋敵の、要領が良くて顔も良くて絶妙にムカつくバケモンがいるんだって。朝はニワトリの如く起こして来て、試験中には俺の肩にぴったりと張り付いてて、ミニスカJKの生脚が好きなド変態のバケモンがいるんだって。誰か分かってくれよ……。 


 俺は教室の席につくなり、この深刻な問題を一人で悶々と考えていた。解決策なんて出やしない。悠馬はこういう時に限って俺の傍にいないし!

 華音様の所行ってるんだとしたら、マジでぶっ飛ばしたい。



 俺は、間抜けな顔で起き、表情の奪われた顔でパンを食べ、バケモンと見紛う顔(本当の化け物(=悠馬)に失礼か)で歯を磨き、ふぬけた顔で着替え、蒼い顔で登校し、深刻な顔で授業に耐え、半笑いの顔で昼食を食べ、害虫を10匹噛み潰した顔で授業中寝て、魂の抜けた顔でスーパーに寄り(俺は帰宅部員だからね)、ゾンビみたいな顔で夕飯を作り、ひょっとこみたいな顔でテレビを見て、泣き笑いの顔でSNSを開いて(友達少ないし最近通知ゼロだけど)、鬼みたいな顔で歯を磨いて、ブルドックみたいな顔で風呂に入り、疲れきった顔で寝る、という生活を4日間続けた。

 先日、視えない相手に向かい堂々と勝利宣言をした俺を未だ気味悪がるクラスメイトは、もはや必要最低限の会話しかしてこない(そこどいて、が大半だ)。



 俺のガラスのハートは既に粉々になっていた。悲しみの涙さえ枯渇している。ドライアイ故に。畜生。


 悠馬に至っては何も話さない。ただ黙って部屋を掃除し、お洗濯をし、買いすぎて期限の切れたパンを勝手に消費している(式神には無害なのだろう)。もう食べ物のことまで頭が回らなくて、とりあえず生きてればいいかなみたいな感じで、期限とか鮮度とか見ないまま買い物カゴに放り込んでいた。

 式神はかろうじて俺の服を洗ってくれているから優しいとは思うが、本当に話さない。「そこどいて」の発言すらない。完全冷戦状態である。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ