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俺の恋敵が人間じゃないなんて聞いてないんだが  作者: 水無月やぎ
第1章 出会いの9月
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#2 好奇心に従え

 勝さんが出て行くと、僕は一人になった。

 京汰は昨日の夕方に出かけたらしく、まだ帰ってきていない。

 京汰がいないのなら、従者としての僕の仕事も始まらない。ってことは、自由だぁぁ! と叫びたい所ではあったのだけれど……。

 だからといって、何をしたらいいのだろう? 一人で自由を得たって、結局は何もできないのである。

 とりあえず歩く? 部屋を探索する? ん〜、どうしよう。迷っちゃうなぁ。探索って言ってもプライバシーの侵害になったらマズいし。家の中を歩くだけなら多分5分で終わるし。京汰いつ帰ってくるのか分かんないし。

 ……とまぁこんな感じで悩み込み、僕は棒立ちになっていた。


 ちょっとだけ“無”の時間を過ごしたような気がしたけれど、バサっと何かが落ちた音で、そんな感覚はどこかへと消えてしまった。


 何が落ちたんだ? どこで落ちたの? しかも、たった一人しかいないこの家で。……いや待てよ、もしかしたらこれは怪奇現象か何かで、人外のものが実は潜んでいて……。まさかポルターガイスト?!

 そこまで考えて、頭を振った。何考えてんだ。

 ……僕だって、立派な人外のモノじゃないか。怪しいの僕じゃん。多分妖怪にビビられる立場だよ僕は。

 埒もなく色々なことを考えながら、僕は音のした方へと向かった。キッチンだ。

 そろそろと動いてキッチンへ向かうと、台の上にコンビニの袋があり、その中のペットボトルが、ぐしゃあと倒れていた。

 落ちていたのは、6枚切のうち、2枚が残った食パンだった。

 不安定な状態で袋が置かれたので、中のペットボトルが少しずつ動きだし、そのせいで食パンが落ちたのだろう。てかなんで、食べかけの物が袋に入っているんじゃい。……まぁいいや。それが京汰の性格なのだろう。……いや、さっきまでいた勝さんの食べ残し? とにかくどちらかがこういう性格なのね。察し。

 僕はしゃがみ込んで食パンを拾い、それを見つめた。


『消費期限、切れてる……』


 僕はかなり長い間、期限切れの食パンを手に立っていた。

 空腹を覚えた訳でもない。でも僕は今、目の前の期限切れの食パンに興味を抱いてしまった。

 式神が人間の食べ物を口にすると、どうなるのだろう。期限切れだと、式神もお腹を下すだろうか。

 ……やってみなくちゃ、分からない! 消費期限切れのパンを食うなとは主人に言われてない。これは人間を傷つけることでもないし、勝手な行動でもない……はず! 知的好奇心が溢れ出した僕は、無意識のうちに食パンを1枚、抜き出していた。くんくん。香りは美味しそうだよ? 僕にも食欲というものはあるみたいだ。

 どうやって食べようか。“トースターで焼くと香ばしくて美味しさup!”って書いてある。焼こうかな。

 ……ちょっと悩んだが、結局トースターを使うのはやめておいた。

 下手にいじって壊したらいけないと思ったのだ。人のパンを勝手に頂く僕にも、そのくらいの思いやりはある。

 まあいいか。そのままで食べてみようじゃないか。どうせ期限切れのなんて人間は食べないでしょう。それなら僕が食べれば無駄がなくなるもんね? いいよね? うん、いいんだいいんだ食べちゃおう。 


『いただきまーす』


 僕は構わずに、食パンをちぎって口に放り込んだ。

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