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第3章 第20話 レベル

――――――――――



「お前の魔法は知ってる。魔石との位置交換だろ? そんなもので俺に勝てると思ってるのか?」



 スーラ、イユ対カッパのキャバ。傷一つ与えられなかったスーラに代わり、カースロープから解放されたイユが前に出る。



「悔しいけど奴の言う通りよ。今のあたしたちにはあの盾を突破する火力がない。どうするつもり?」

「まー任せといてよー。ていうか怪我してないよね? イユちゃん青の悪魔さんに殺されたくないんでー」



 キャバには目もくれず、スーラにそう訊ねるスーラ。全身の骨がボッキボキに砕けたが、既に××トラップダンジョンの効果で回復しているが……。



「とりあえず話はちゃんと聞けやっ!」

「イユさん、前っ!」

 キャバの盾が開き、銃口が現れたのを見たスーラが叫ぶが、既に仕掛けは打っておいた。



 いや、撃っておいた。



天使の翼(エクレア)

 イユが引き金を引いた瞬間、キャバの盾が消え失せた。いや、



「はいこれでおわりー」

 盾はイユの足元へと移動していた。縄から解き放たれたイユはまず魔石を足元に撃っておいたのだ。



「すご……!」

 思わずスーラが感嘆の声を漏らす。一手。たった一手でスーラがどうやったって勝てなかった相手を詰ませてみせた。



「武器がなくちゃ戦えないとでも思ったか? これでも一応ヒャドレッドの一員なんだ。舐めんじゃねぇーっ!」

 床の触手に溶かされていく盾を一つも気に留めないまま、キャバは腕を後ろに引く。何らかの魔法を使うつもりだ。



「マスケット銃のいいところってー、なんでも弾になるとこなんだよねー。一説では煙草でも人を殺せるとかなんとかー……」

 だがイユに至っては敵すらも気に留めていない。どんどん小さくなっていく盾に手を添えながらぶつぶつとつぶやき、



豪縮(メガ・コーラ)

 魔法を唱えた。


 その魔法の効果は縮小化。盾は一瞬の内に弾丸ほどの大きさになり、イユの手の中に収められた。



「これがヒャドレッドだーっ! ギガ・アクラっ!」

 キャバの水かきがついた手から猛級の水流が放たれる。スーラの渾身の水魔法と同等、いやそれ以上の勢いだ。人間がまともに受けたらひとたまりもない。



天使の翼(エクレア)

 しかしその瞬間、イユはキャバの足元にいた。最初に交換した魔石と再度位置を交換したのだ。


「なっ……!」

「ばーん」



 銃弾へと変えられた甲羅の盾がキャバの腹の下から上へと撃ち込まれる。元々が暴級魔法すら耐える盾だ。その強固な装甲で、スーラの飛び蹴りを耐えた身体を撃ち抜いていく。



「がぁっ……!」

 しかし通常よりも強力な重力がその勢いを弱め、盾はキャバの胸の辺りで動きを止めた。



 そしてこれで、勝負はついた。



「待てっ……!」

「かーいじょ」



 イユが縮魔法を解いた瞬間、



「ごばぁっ!」

 キャバの上半身は、元の姿を取り戻した盾により内部から破壊された。



「ふー、つかれたー」

 身体の半分を失い、その場に倒れるキャバの半身。その頭上では行き場を失った大量の鮮血が重力に従って落ちてきている。



「でもこれで6700万ゲットー。やったー!」



 その血を一身に受けながら、イユは微笑みを浮かべる。



 だが彼女の着ている赤い秘書官服のおかげで、見た目はそこまで汚れていなかった。



「すごい……!」

 瞬殺。という言葉がこれほど似合うこともあるまい。魔王軍幹部が、まるで手のひらの上だった。



「まー相性的なものもあるしねー」

 スーラの下に歩きながら、スカートから一枚の証明書を取り出すイユ。



「おー、やったー。一つレベル上がってるー」

 その紙はギルドカード。自身の体力や状態などがリアルタイムで反映される冒険者が必ず持っているものだ。



「これでレベル43。まだまだ先は長いなー」

「よん……さ……!」


 その発言に愕然としてしまうスーラ。レベルとは全員一律の物差しではない。個人の潜在能力をどれだけ引き出せているかが表示されるからだ。



 一般的には、才能がなければないほどレベルが上がるのが早くなるとされている。才能の上限値が低いからだ。たとえばスーラがそれに当たり、ヒャドレッドに手も足も出ないにも関わらず、既にレベルは79。もうほとんど上限に近い。



 それなのにヒャドレッドを圧倒したイユは、スーラの半分ほどの数値だ。どれだけ才能に差があるんだ。



「くそっ……!」

 わかっていた。最初からわかっていたんだ。



 でもスーラは、自分がいかに無力な存在なのかを改めて思い知らされた。

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