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第3章 第1話 世界の嫌われ者

「なんで……村が燃えて……?」



 魔王軍幹部、チュパカブラのチューバを倒した私、フィア、スーラの三人。半日という時間をかけて帰ってきた私たちを待っていたのは、炎に包まれている村だった。



「まさか魔王軍に……!」

「いや、それならもっとひどいことになってるはず」


 へたり込んでしまったフィアと、ギリっと歯を食いしばっているスーラに希望的観測を伝える。燃えていると言っても全焼ではない。木製の家屋に火が移っているが、まだせいぜいボヤ騒ぎと言ったところ。戦いの余波で火がついたって感じだろう。



「とにかくみんなを助けるわよっ!」

「そ……ですね……! わたしは水魔法で火を消してきますっ!」

「弱い魔法だからね! 強い魔法使っちゃ駄目だからねっ!」



 マジックスライムの群れを撃破した北の地点から二人が村へと入っていく。私も協力したいところだけど、何らかの事情でダンジョンマスターの権利が剥奪された私が行っても足手まといになるだけだ。全裸だし。



「そこの君!」

 現場に向かうことは無理だが、それ以外にはやりようがある。とりあえず村の周囲を探ろうと思っていたその時、後ろから声がした。



「……国王軍の方ですか?」

 私に声をかけたのは、同じ鎧を纏った男性二人。胴に彫られた鳥の紋章はカウン王国の証だ。私の時代からデザインは変わっているが、国王軍であることは間違いないだろう。



 というかまずいな。国王軍がこんな辺鄙な村にいるということは、この事態の報せを受けたからということ。だとすると問題が起きてからそれなりの時間が経ったということになる。これじゃあ村はもう……!



「今二人の女の子が村に入っていきました。救出をお願いできますか」

 もしまだ村の中にこれを引き起こした何かがいるなら、飛び込んでいったフィアたちが危ない。私がそう頼むと、国王軍の兵士が腰からサーベルを引き抜く。そして、



「……え?」



 私に斬りかかった。



「――――!」

 すんでのところで後ろに下がって躱したが、それでも兵士たちは攻撃をやめない。何者かに操られているのか? いや、それよりも――!



「青の悪魔、ユリー・セクレタリー。貴様を討伐する!」



 私の名前を知っている。異名もだ。これはつまり、



「村の誰かが私を売った――!」



 私は村の住民から信用されていない。それはスーラから聞いていたことで、納得もしていた。モンスターの言うことを黙って信じろという方が無理な話だ。



 でもいざこうなってみると。



「中々クるものがあるなぁ……」



 私にとっては住民なんてどうでもいい存在だ。疎まれたって構わない。でも『私たちはあなたを迫害します』と伝えられて平気でいられるほど今の私は崇高ではない。××(チョメチョメ)トラップダンジョンの中で王様を気取っていた頃なら別だっただろうが。



「さて……」

 兵士に立ち向かって勝てるはずがないし、草原を走ってもただの女の子の私じゃ確実に追いつかれる。だとしたら逃げ場はたった一つしかない。



「あーもう……!」

 私は兵士たちに背を向け、村の中へと駆け出した。ここならフィアとスーラがいる。合流できれば何とかなる。



 それはそれとして、だ。国王軍は私を追っている。じゃあ何で村が燃やされてるんだ。私をおびき寄せるための罠だとしたらやり過ぎだ。いや、青の悪魔を討伐するためならこれくらい当然の代償――



烈風渦旋(れっぷうかせん)っ!」

「! スーラ!」



 人っ子一人いない熱を帯びた村を走っていると、突風が私の頭上を突き抜け、背後の兵士二人を弾き飛ばした。



「事情が変わった! あんたを護衛するっ!」

「いや、私は村から離れる。だからフィアと一緒に消火に回って!」



 兵士たちを片付け着地したスーラにそう告げ、元来た道を戻る。村の中の家屋もまだ復旧可能な状況だ。私が遠ざかれば国王軍はこっちに来るだろうし、役目を終えた村を傷つける必要はなくなる。



 生まれ故郷が消えるというのは一生消えない傷みだ。しかも時が経つほどその傷は広がっていく。ここを私の故郷と同じにするわけにはいかない。



「違う、そうじゃないの! これは――!」

刺突(しとつ)(ごう)!」

「! ベロしまってっ!」



 私の身体が宙に浮く。正確にはスーラに抱えられ、空中を高速で移動した。それに気づいたのとほぼ同時に、さっきまで私がいた場所がなくなっていた。あるのは地面を割った鋭利な槍と、その長さの得物を扱うには小さすぎる少女の姿。



「これあたしじゃきついかも……!」

 私を抱えているせいで空中での制御が効かないスーラが地面へと降り立って声を漏らす。



 身に纏った鎧のデザインはさっきの兵士たちとよく似ている。だがその下のヤイナのチャイナ服のような大きくスリットの開いた独特なデザインの衣服が彼女を特別な存在だということを表している。おそらく制服を着なくても許される立場の人間。つまり部隊の隊長クラス……レベルで表すと50以上はあるだろう。間違いなくスーラよりも格上。



「国王軍・遊撃部隊隊長・イチョウ。これより青の悪魔を討伐する!」

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