第2章 第18話 馬鹿のやり方
やらかした。
フィアに見られると思ってなかった。目を覚ますまでもう少しかかると思っていた。こんなこと想定していなかった。
まずいまずいまずいまずいまずい。スーラをいじめて。住民を不安がらせているこの姿を見られたら。嫌われる!
嫌われたら一緒に暮らしてもらえなくなる! 友だちがいなくなっちゃう! また一人ぼっちになっちゃうっ!
「違うのフィア! 話を聞いてっ!」
「大丈夫です。全部わかってますから」
フィ……フィアの顔が怖い……。怒ってる感じはないけどすごい真剣……。
こうなったらもう、フィアの記憶なくす! こっちには記憶をなくすモンスターやトラップくらいいくらでもいるんだ。フィアには悪いけど少し痛めつけさせてもらおう。それに……。
「っ!」
フィアの杖が私の後ろのマジックマグネッツに引き寄せられた。これで中級魔法までしか使えないはず。これなら安全に、確実に倒せる!
「銃乱火!」
「!」
火球の連射! でも下級魔法だ。一発が小さいし、軌道は放射線状。しゃがんで近づけば当たらない! ……いや、空気がひりつく。これってもしかして……!
「豪放電!」
近づいたところで全方位への電撃! でもこれは読めていた。予想ではなく、直感で。
私とフィアが初めて出会った時。そこで行われた戦いと全く同じ流れだ。だったら次は猛氷を……。
「!?」
電撃が晴れ、目の前を覆った光が消えた時、フィアの姿も同時になくなっていた。まさか電気を目くらましに……! なるほど、そういうことか。
「フィアのくせに、頭脳プレーを……!」
「ユリーさんのおかげです」
フィアの声が聞こえたのは私の後方。ちょうどマジックマグネッツがあった場所。だが魔石を引き寄せる岩は粉々に砕け散っていた。最初の銃乱火は私に向かってではなくマジックマグネッツを壊すために放たれたんだ。そして電気を目くらましに回り込んだ。これで杖は解放。同時に超上級魔法の解禁でもある。でも。
「マジックシールド!」
私は目の前に半透明の魔法を遮断する盾を張る。これならどれだけ強力な魔法を使っても……!
私は舐めていた。
フィアを。フィアの頭を。
そうだった。フィアは――。
「起動っ!」
フィアが目にも止まらない速さで突っ込んでくる。これはフィアの魔法だがフィアの魔法ではない。
ほとんど視認すらできない状態で辛うじて確認できたフィアの後ろに伸びる腕。そこには杖と一緒に封じられていたスーラのガントレットが嵌っていた。
つまりフィアは、初級魔法の魔力ですら大きすぎるフライメイルに、上級魔法使いを遥かに凌ぐ魔力を注ぎ込んだのだ。速度はスーラのそれを遥かに凌ぐが、当然コントロールは不能。
すなわち、自滅前提の体当たりだ。
「「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」」
そして次の瞬間私とフィアの悲鳴が同時に聞こえ、視界が暗転する。
そう。私は舐めていたのだ。
フィアの頭の悪さを。




