第六章 目的地
獣王国編、本格始動!!
エルフの村を出てはや一週間、黒影たちは獣王国、アルタニアを目指していた。そこを目的地にしたのには理由がある。といっても黒影ではなく、ティーの方にだが。ティー曰く、アルタニアにはこの大陸で最強を決める大会がもうすぐ行われるらしく、出場してみたいと黒影に提案した。黒影自身、特に予定が決まっていたわけでもなく、面白そうだったので二つ返事で了承した。今はアルタニアへ向かう道中、絶賛迷子中である。
「何で迷子になるんだよ!お前何回も行ったことあるとかいってたじゃんか!」と、黒影は迷子になった森の中で嘆いた。
「仕方がないだろ!最後に行ったのは五十年以上前だったんだからな!」と、ティーも反論した。
「ん?ちょっと待て、お前今五十年前って言ったか?」
「ああ、言ったぞ」
「ちょっと待て。え?それじゃー何、お前今何歳なの?」
「今はちょうど九十歳くらいか」
「えっっっ~~~~~~~!!!マジで!!」と、くろかげは奇声を上げた。
「お、おう。マジだぞ。基本的にエルフは人族の寿命の二倍はいきるからな」と、ティーは黒影の声に驚きながら答えた。
「嘘だろ、俺はここに来て最初の恋が男だっただけでなく、六十才以上年上だったとか...もう死にたい...」と、黒影は膝から崩れていった。
「なんなら今ここでその望みを叶えてやろうか」と、ティーは腰に下げていた剣を抜いた。その顔はまさに鬼。その殺気はおそらくかの大剣豪、宮本武蔵でも尻込みしそうなほどだった。
「あ、いや、冗談だよ。恋とかじゃなかった、あれ、あれだよ~...逃げろ!!」と、黒影は走り出した。
「待てゴラァァ!!」と、ティーは剣を振り回しながら黒影を追った。本人たちは自分達がどのようなルートを走っているかわかってはいなかった。ときには森の中、ときには危険な魔物の巣窟、またあるときには平野、そして...
「お、おい。止まれよティー」と、先頭を逃げ回っていた黒影が止まった。
「はっ、とうとう覚悟を決めたか」
「いや、そうじゃねぇ。あれを見ろっ。あれがアルタニアじゃねぇ?」と、黒影は目の前を指差した。そこには広大な平野の中に巨大な城壁と城、ひとつの門に並ぶ多くの馬車や人らしき影。大きな門の上に垂れ下がっている旗は中央にライオンの顔、そしてその後ろに大きな剣が二本、交差して描かれていた。
「そう、ここが獣王国、アルタニア。そしてあれが今回我々が参加する大会の会場もある首都、王都ヘルペキニアだ」
獣王国アルタニアに到着した二人。この先の展開はいかに⁉
次回11月10日更新予定