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難破したのでナンパします  作者: 小槌 美羽鵜
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特別編 地獄の三年間

獣王国編に入る前に、前回書かれなかった三年間を紹介しましょう。それではどうぞ

「ここが私の家だ」と、ティーフォンが紹介した。その家は、村の中心部より少し離れていて、騎士団の攻撃を受けた形跡はなかった。造りは村の中心部の家と大きな差はなく、平屋だった。庭は広く、修練場なのか、訓練用の武器や、サンドバック代わりの丸太が立っていた。なかに入ると、部屋は四つ、入ってすぐの居間と寝室、浴室、奥の方には物置部屋があった。

「貴様は今後、あの部屋で寝泊まりしろ」と、ティーフォンが指差したのは物置部屋であった。

「え~もう少しましな部屋はないの~?」と、黒影は駄々をこねた。

「嫌なら別にいい。また牢屋に戻ってもらうだけだ。」

「いえ、滅相もございません。ここで過ごさせていただきます」と、黒影は焦った。またあの薄暗い部屋で過ごすのは勘弁だ。

「それにしても汚いな、湯は沸かしてある。さっさと風呂に入れ。使い方はわかるな」と、ティーフォンは鼻をつまみながら言った。

「汚いとは失礼だな~」と、黒影はタオルを借りて浴室に向かった。この世界にも風呂の文化はある。種族によって楽しみ方は異なるが、エルフの風呂の楽しみ方は、長湯のようだ。黒影は服を脱いで浴室に入った。

「ここが、あの美人おねーさんが使っている風呂か~。なんか興奮するな」と、黒影はニヤニヤしながら言った。すると、

「面倒だから、一緒に済ませるぞ」と、外から声がした。ティーフォンだった。

「は...いやちょっと待てよ、俺入ってんだぞ」

「だからなんだというのだ」

「いや、ちょっと待ってよ、心の準備が」黒影は焦った。

「何を準備することがある、男同士で入る風呂で」と、ティーフォンが入ってきた。

「いや、準備って、ほら、いろいろ...は」と、黒影はティーフォンの方を向いた。ティーフォンの股にはとてもよく見慣れたものがぶら下がっていた。

「え、えっーーーーー!!」




「だっははははははーー!!黒のあんちゃん、ティーのやつを女だと勘違いしてたのかよ。ぶわっはははーー!!こりゃ傑作だ」

「笑い事じゃねーよ。俺の夢がブチ壊されたんだぞ」と、黒影は机に突っ伏した。今話してる相手はディーン-アトランテ、酒場の亭主だ。ティーフォンが騎士団に囲まれているときに、彼が守っていた女の子の父親だ。エルフは基本的に、人族である黒影を警戒していて、冷たい態度をとるが、彼に恩を感じるエルフも少なくなく、彼らはとても友好的に接してくれる。

「おにーちゃん、その事ティーさんに言ったらダメだよ。すっごく気にしてるから」と、女の子が話しかけてきた。彼女はアン、ティーフォンが守っていた女の子、つまり、ディーンの娘だ。

「いや、もう遅いよ。その事でさっき殴られたから」

「ぶっははははーー、もう殴られたのか。やっぱおもしれ~」と、そのとき、

「くぉらぁぁ!!ここにいたのかぁ!さっさと勉強しんかぐぉらァァ!!」と、ティーフォンが勢いよく入ってきた。

「やべっ、逃げろ!おやっさん、ツケはティーにつけといて」と言い、黒影は逃げ出した。逃げる理由は、ティーにあった。勉強というのは言語についてで、今着けている人族の翻訳機に頼らずに話せるようにするためだ。しかし、ティーの教え方はスパルタで、間違えれば殴られた。しかも結構痛い。そのため、黒影は授業を抜け出して、逃げ回っていた。




「さて、今からは戦闘訓練だ。いつまでもこの村に居座られても困るからな。外に出ても生き残れるように私が鍛えてやる」と、ティーは張り切っていた。

「いや、訓練が大切なのはわかったけどさ、明日にしない?」

「なぜだ?」

「いやだってさっきまで村中走り回って鬼ごっこしてたんだよ。しかも最後に捕まったときなんかボコボコにされたし」と、黒影は今にも死にそうな顔で言った。

「お前が逃げ出したのが悪い」と、ティーは正論を突きつけた。

「そんなことよりも訓練を始めるぞ。まずは自分自身の現状把握だ。試しにステータスオープンと言ってみろ」と、ティーは言った。

「えっ」

「なんだ、文句あるのか?」

「いや、なんか恥ずかしいな、と思って」

「さっさと言わんか」と、ティーは手を上げた。

「あーわかったわかった。言えばいいんだろ。ステータスオープン」すると、目の前に画面が出てきた。画面といっても機械などではなく、薄型で、透明な板に文字が書いてある。手で触れてみようとすると、スルリと抜けてしまった。完全にファンタジーの世界だなと、黒影は感じた。そこには、


黒影 深夜   人族   レベル15


職業 なし


特技 格闘技Ⅰ 剣術Ⅰ


スキル 幻影


とあった。

「ステータスで自分だけ、ステータスオープンで、他者と共有することができる。お前はなかなか筋がいいな。格闘技にも剣術にも適正がある」と、ティーが覗き込みながら言った。

「へー」と、黒影は言った。この前の戦いで使った裏スキル、ステータス上には出ないのか。ちょうどいい。と、黒影は考えた。

「そんなことよりも訓練だ。さっさと格闘技も剣術もレベルをあげていくぞ。スキルにも馴れておけ」この日から黒影の地獄のような訓練が始まった。語学では椅子に縛り付けられ正解するまで殴られ、戦闘訓練では、半ばサンドバック扱いされ、時には魔物が生息する森に武器なしで放り込まれたことも。その間でも黒影は村のエルフとのコミュニケーションを欠かさず、次第に村人は黒影に心を開き、晴れて、村の一員に迎えられた。




そして出発の日、村のエルフたち全員に見送られ、ティーと共に旅に出たのであった。なぜティーも一緒なのかというと、最初こそ敵意むき出しのスパルタだったが一ヶ月もたつと、語学の勉強中も攻撃を避け始め、戦闘訓練もティーに勝ち始めていた。今では黒影の方が実力は上になっていた。そのため、武者修行と言って黒影に同伴。まだ見ぬ世界から多くを吸収して黒影を倒すと息巻いている。そうして二人は旅に出た。このコンビがいずれ起きる世界の大混乱の中心人物になるとは知らずに...

次週、とうとう獣王国編スタート!次回11月3日更新予定

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