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難破したのでナンパします  作者: 小槌 美羽鵜
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第五章 旅立ち

その日の夜は宴会だった。エルフたちは皆抱き合ったり、肩を組んだりして酒を酌み交わし、あげくの果てには酔い潰れて倒れたり、吐いたりしているものも、ちらほら。仕方がない。人族の騎士団を返り討ちにしたのに加えて、今まで誘拐されていたエルフの子供たちも帰ってきたのだ。これほど喜ぶのも無理はない。そして、今回の戦いに勝利をもたらした黒影はというと...檻の中にいた。

「いや、なんで~~~!!」


遡ること、五時間前。騎士団との戦いが終結した頃


「人族に勝ったぞ~!!」と、エルフの一人が叫んだ。

「「うお~~~!!」」と、他のエルフたちも叫んだ。皆笑顔だった。黒影は、この勝利を素直に喜べなかった。この騎士団が本隊とは限らない。まだ他にも人族がいて、今回以上の数になるとまずい。敵兵も数人逃してしまったし、こちらの手の内がばれるかもしれない。そうなると次は負ける。俺は武器を持っていないし、何よりこのスキルに慣れていない。使うことで自分自身にどれだけの反動があるかわからないし、使用可能な状態、回数がまだわかりきっていないことなど、言い出したらきりがない。そう、黒影が心配していると、

「おいっ!まだ人族が残っているぞ。ぶっ殺せ~!!」と、一人のエルフが叫んだ。今さらではあるが、一つ断っておこう。黒影は、エルフたちが使っている言葉を何一つ理解していない。そもそも彼らが使っている言葉は地球上にはない言葉だった。そのため、黒影は牢獄で言われた例の美人エルフの捨て台詞も、騎士団に囲まれた美人エルフを助けるときの質問も、騎士団の言葉も、何一つとしてわかっていない。エルフと話していたときは、雰囲気で答え、騎士団は、自動翻訳という便利な魔道具を持っていたため黒影の言葉は翻訳されて伝わっていたが、その機械も万能ではなく、日本語は完璧には翻訳されず、ひどく稚拙な感じに翻訳されて黒影に伝わっていたので、もはや違う言語に聞こえていた。ここまで、雰囲気と勘で、会話が成立していたことは奇跡に等しかった。だが、その奇跡はここまで、もう、エルフが何を叫び、なぜこちらに向かって走ってくるのか検討もつかなかった。黒影は必死になって考えた。この状況下での会話は?どういう行動が必要か、そう考えていると、例の美人エルフが、黒影の前にたった。そして、迫り来るエルフたちに向かって、

「***********!」

(お待ちください、族長!)

と、叫んだ。もちろん黒影にはわからない。

「***********************************!」

(そこをどけ、戦士長よ。人族を庇うつもりか。そやつらは我らエルフの敵、そなたの親の敵でもあるのだぞ!)

 と、先頭を走っていたエルフが立ち止まりそう叫んだ。周りのエルフも止まった。やはり黒影にはなんの会話かわかっていなかった。胴上げの相談か?

「**********************************************」

(いいえ、私の両親を殺したのは彼ではない。他の人族だ。それに今回の戦い、彼がいなければ私も皆も殺されるか奴隷にされていた!)

と、美人エルフは叫んだ。なになに?俺への愛を叫んでるのかな?と、言っている意味がわからないことをいいことに想像を膨らませていた黒影であった。

「**********************************************」

(どういうことだ。彼のお陰だと...わかった。話を聞こう。それまでは彼を幽閉する。いいな?)

と、先頭のエルフが言った。これはうまく想像できない。いつしか黒影のなかではいかにうまく、面白く言葉を当てはめるかというゲームになっていた。

「***」

(わかりました。)


そして現在に至る。

「いや、わかるか~~!え、なに?もしかしてあの時話してた内容って俺の処分の仕方ってこと?え、どうなんの俺?」まだまだ理解していない黒影であった。すると、会議をしていた大きめの家から美人エルフを含めた族長たち、村の代表が出てきた。すると、美人エルフは牢に近づき、騎士団が首にぶら下げていたペンダントのようなものを黒影にかけた。そして、それを確認したかのように、族長は頷き、

「これより、代表会議の結果を発表する!」と、叫んだ。すごい。族長の言葉が瞬時に翻訳されて頭の中に入ってくる。と、黒影は思った。周りのエルフは静まり、耳を澄ませていた。結果が気になるのだろう。

「この人族は戦士長、ティーフォン-アルトランドの証言により、この村を救った英雄であることが判明した。しかし、英雄であると同時に人族である。その危険性を考慮し、この村にとって害悪でないかを判断するため、戦士長監視のもと、一時、解放する!」

「...は?」ということで、予期せぬ展開から、彼は美人エルフのもとへ転がり込んだのだった。


三年後...


「今日でこの村ともお別れか。みんなありがとなー!!」と、黒影は村の入り口に立って、エルフたちに向かって叫んだ。

「はっ、結構流暢になったじゃねーか。エルフ語。三年前はティーフォンがかわいそうになるくらい下手くそだったのによ」

「おにーちゃんは今ではこの世界のほとんどの言語が話せるようになったからね。がんばったもんね~」

「旅に出るからって迷子になるんじゃねーぞ」

「ティーをよろしくな!」

「元気でなー」と、様々な激励を受けた。そう、黒影はティーフォンと共に旅に出るのだ。まだ見ぬ、新たな世界に。


この旅がいずれ世界を揺るがすとも知らず...

後に世界を揺るがすことになる、きっかけの旅。まだ見ぬ世界に期待膨らむ黒影の未来はいかに⁉


次回新章、獣王国編突入⁉


次回 10月27日更新予定

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