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バベルの塔  作者: ふーーたん
1/1

プロローグ

遥か大昔、生物の存在すら確認されていなかったかもしれない時代。

世界には一つの、塔が造られた。

一体それは、誰の手で造られたのか、何のために造られたのか。

今から千年近く前は、誰も解らなかったと言われていた。

それから約百年が過ぎた頃に、謎は解けた。

霧だ。

そう、全ての答えは霧だったのだ。

その霧に犯されると、人はみるみる内に理性を喪っていく、そして気が狂った様に眼に見えるもの全てを、本能の赴くままに壊す、それが人でもだ。

人々は霧から逃げるように、見上げることもできない巨大な塔に逃げ込んだ。

それが、バベルの塔《世界最古の塔》




霧の発生から九百年後



港町

アゼバル


「ハァハァ」


「走って来れてるか‼?」


「ハァハァ……平気」


「頑張れ‼」

「港までもう少しだ‼」


「うん‼」


二人の青年は、港町へと続く、細い路地を駆け抜けていく。


「ハァハァ」

少女は、額に汗を垂らし、金髪の長い髪を揺らしながら駆けていく。

その前には、銀髪の少年が道を先導する。


「ロック‼」

少女は、少年に向かって叫んだ。


「どうした‼?」

「ノア‼?」


「霧に追い付かれそう‼」

少女は、怯えた顔をしている。


「頑張れ‼」

「港はもう見えてるんだ‼」

「港に着けば、兵士の魔法で霧は入ってこれない‼」

少年の指差す方に、港が見える、路地の終わりが見えるのだ。


「ハァハァハァ」


「ハァハァハァ」


何とか二人は、港に出ることができた、だが港には船に逃げる人がごった返していた。

我先にと船に乗ろうとする者、子供を抱えて走る者、親とはぐれて泣きわめく子供、定員オーバーで、海へと投げ出される者、誰もが想っている、これが夢だといいなと。

だがこれは、現実そのものだ。


「ビキビキッ」


ヒビの入る音が、港に鳴り響く。

港にいた者は、皆が止まった。

数秒の静止の後、兵士が叫んだ。


「魔法が破れる‼」

「船に早く乗れぇーー‼」


さっきまでの静止が幻のように、皆慌ただしく動き始める。


「早く俺たちも船に乗ろう‼」


「うん‼」

ノアはロックの手を強く握りしめる。

それに応えるかのように、ロックも手を強く握る。


五分後


二人は、何とか船に乗ることができた。


街から逃げた者は船上から、自分達の造った物が壊れていくのを観ていく。


魔法がガラスのように壊れていく。


さっきまでのことが嘘のように、静寂だけがその場に取り残されていた。


「私たち死ななかったな」

満杯の船の上でノアはロックの肩にもたれ掛かって呟く。


「だな」

小さい声でノアに囁く

「でも、次は死んじゃうのかな?」


「死なないよ」

ロックはノアの事を見つめる。


ノアはロックが見つめてることに気付かず、話を続ける。


「そういえば、前に言ったこと覚えてる?」


「何のこと?」


「私が霧に、飲まれたときのこと」


「あれだっけ?」

「私を殺してってやつ」


「そうそれ」

ノアは少し嬉しそうな顔をしていた。


「俺には出来ないよ」

ロックは悲しそうな顔をしていた。


「何で?」


「お前のことが好きだから」

「お前は好きな奴を殺せるのか?」

ロックは残念そうな顔をしてノアを見る。


「出来るよ」

「だってそうしなきゃ、私が死んじゃうもん」


「そうか」

「もうこの話はやめにしよう」

「もうそろそろで、次の港に着く」


まだこの時は、誰も分からなかった。

霧の恐ろしさ、自分達の弱さを。
























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