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かつて魔王の冒険者  作者: 森の小豆
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迷宮で稼ぎたい

部屋の窓を開け朝日の光を身体全体で受け止める。久しぶりの気持ちのいい目覚めに俺は伸びをする。


「今日も頑張るか」


俺は身支度を手早く済ませ部屋を出る。

今日の目標は武器を揃えるための資金を調達することだ。

ギルド職員として働いていた頃はギドに武器を借りていたため自分の武器というものはまだ持っていない。

Eランクの依頼であれば素手でも十分だが汚れるのが問題だ。リーチが短い分相手との距離も詰まる。すると返り血をもろに浴びてしまうのだ。

そうなると汚れだけでなく臭いも染み付いてしまう。

だが剣があれば少なくとも返り血を避けるだけの距離は作れる。

そう思い俺は武器を買うことにした。

一応の貯金はあるがそれも持ち歩ける程度だけ。長旅で無くしてもショックが大きいからお金は必要最低限しか貯めてこなかった。

そのため今の手持ち金では剣は買えない。なので、


「とうとう来たか、マースの迷宮!」

俺は目の前にある門のような入口でそう呟いた。


マースの迷宮。

この都市で最も難易度の高い迷宮。攻略適正ランクD以上の迷宮だ。

迷宮の入口は頑丈かつ巨大な門で閉ざされている。巨大な門の横に俺たち冒険者用の入口がある。そこにはギルド職員と衛兵が常駐して冒険者たちを調べている。これはEランク以下の冒険者がここに一攫千金を求めてやってくるのを防ぐためだ。Eランクの冒険者ではこの迷宮は攻略出来ない。

それこそどんなに人数を集めても魔物を倒せて4、5体だけだろう。

迷宮で冒険者を無駄死にさせないための策だ。Dランクの冒険者でも、この迷宮では絶対にパーティ組む。


「インビジリティ」

俺は透明化の魔法を使用し周囲の視界から消える。景色に溶け込み気配を消し空気になりきる。

俺はまだEランク冒険者。つまりこのマースの迷宮には入れないのだ。

だがマースの迷宮で取れる魔石は上質なものが多いと聞く。

魔石というのは日常の中でよく使う。街中や家の中を照らす明かりには魔石灯というのが用いられている。魔石というのは魔力の塊。つまりエネルギーの塊だ。

しかし魔石は消耗品なので需要はなくなることは無い。冒険者が世の中に溢れる理由の一つだ。

お金が必要な今の俺にはとっておきの場所ということだ。

しかしランクの低さ故にこの迷宮には入れない。ならこっそり入ってしまえばいいのだ。

という訳では俺は今、透明人間になっている。

検問の列に混じるように他の冒険者の後ろをついて行く。ギルド職員も衛兵も俺の存在には全く気づかず、余裕で迷宮への潜入は成功した。

それも無理はない。透明化の魔法など使える人間はほぼいない高等技術だからな。

俺は魔王の頃に使えた魔法は全部使える。

この身体は魔王の頃の俺を全てにおいて凌駕しているため、それに関しては自分でも驚きだ。

透明化の魔法は詠唱から発動は短いがその状態の維持が難しい。魔力も常に消費されるため一般ではまず使われない。

中に入ってからは透明化を解除し、迷宮に入る前に用意した地図を取り出す。現在の到達階層は31階層だが、他の階層にもまだ未踏破領域は存在する。


「だが今日の目的は魔石回収。少し深いところでバンバン倒しまくって稼ぎを上げなければ!」

俺は地図の通りに正規ルートを進み、下へ10回層分降りた。

迷宮のめんどくさい所は階段が縦に全て繋がっていないところだ。その階層ごとに階段の位置が違うため各階層で移動しなければならない。

俺は11階層まで来たところで足を止めた。

迷宮内は地上の明かりとは違い、薄ぼんやりとした光る鉱石が光源となっている。

「この階層で現れるのはトロールやオークか。どっちもパワー型の魔物代表格だな」

トロールやオークは身長が2mを超える大型の魔物で棍棒などの武器を使う程度の知性はある。そしてその巨体に似合わない俊敏さのトロール、圧倒的な破壊力のオークと戦闘スタイルは二者共に違う。そのために冒険者には戦う術と知識、経験が必要になってくる。


「さあ、狩りの時間だ」

早速俺の目の前には二体のオークが現れた。

通路は人五人が手を広げて並べるくらい広く高さも十分にある。オークたちには絶好の戦い場所だ。

俺はまだこちらに気づいていないオークめがけて突進する。魔闘気で身体能力を強化しオークの認知速度を超えて接近、手前で跳躍し背後から首を絞めるようにしがみつく。


「グゥォォオ!?」

隣を歩いていたオークは驚きで声をあげる。

俺がしがみついているオークは気道が塞がれ声が出ていない。


「グゥオオオ!」

隣のオークもいつまでも見ているわけがなく手に持った棍棒を俺にめがけて振りかぶってきた。


「やっぱりその程度の知力か」

俺は少し幻滅したように飛びついたオークから離れた。

俺めがけて振り下ろされた棍棒は、俺に掠りもせず、もう一匹のオークの頭を叩き潰した。頭の頂点から吹き出す血飛沫を離れて躱す。


「グゥァッ!!」

仲間を失ったオークは怒りに染まった表情で俺を睨みつける。


「残念ながらそのオークを殺したのはお前だ」

俺は死んだオークの手から棍棒を奪い取り上段に構える。


「いい重さだな。これならオークの頭を砕くのも可能だ」

俺は先程オークがやったように、棍棒を振り上げ脳天めがけて振り下ろす。

強化された腕から放たれる棍棒はオークに引けを取らない威力で頭を叩き割った。


「二匹討伐完了」

採取用の短剣でオークの胸部を切り開き中から魔石を取り出す。魔石はバックパックに放り込み死体は放置。

迷宮は不思議な存在で、死んだ魔物や冒険者たちは時間が経つと溶けるように迷宮に吸収される。


「さぁ、どんどん行くぞ!」

俺は両手に棍棒を装備して11階層の魔物を片っ端から葬った。

倒しては魔石を拾い、倒しては魔石を拾い、それを何度も繰り返していると、とうとう11階層の全域を踏破していた。


「魔物の気配がなくなった?」

俺はこの時全ての魔物を屠ったことに気が付いた。


「バックパックもいっぱいだし今日のところは帰るか」

俺は11階層を離れ上の階へと向かう。

今は何時だろうか。今日は陽の九の刻から迷宮に潜っていたが。

迷宮の中にいると時間の感覚無くなりやすい。時を数える道具もあるが、高価な上に大きい。持ち運べる大きさとなると城が買えてしまうくらいの値段がする。

なので一般市民は太陽の位置で大まかな時間を把握している。だが迷宮の中からは太陽が見えない。そのため時間の感覚が麻痺するのだ。

体感だとそんなに時間は経っていない気もするが、外に出てみれば分かるだろう。

そう結論づけ朝に通った道を戻る。


「今日の稼ぎでもしかしたら家が買えるかもな」

俺はバックパックの重みに、帰りの道のりニヤニヤが止まらなかった。

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『かつて魔王の冒険者』を読んでいただきありがとうございます まだまだ発展途中ですが、賛否両論の評価を受け付けております。些細なことでもコメントしてくれるとありがたいです。 これからもよろしくお願いします!
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