マルクと初めての買い物
先週は投稿できずに申し訳ありません。
寝落ちしました。(´・ω・`)
「オーレリー、情報が入った。行くぞ」
「了解」
短いやりとりをし二人組は裏路地を抜ける。月が夜道を照らす中、酔っ払いや仕事帰りの人の群れを躱して行く。二人の求める情報提供者によると名前を変えて活動しているらしく、今までは尻尾すら掴めないような状態だった。それが今日の昼頃にある噂を耳にした。Dランク冒険者がディスタカートという魔物から全員が生還した、というものだ。噂では偶然だとか、見知らぬ腕利き冒険者に助けてもらっただと憶測が飛び交っている。
名前を変えているというのはジブリルの勝手な想像だが、もし探している人物と同じ人物であれば名前は違う。だが、共通点がない訳では無いため軽視することも出来ない。
「受付嬢にこの名前の人物はいるか聞いてみる」
「分かった」
ギルドの中は日中ほど賑わってはいない。それでも夕餉を楽しもうという冒険者の姿は見れる。
「すまない」
「はい」
夜になっても受付の仕事はまだ続く。受付の人数も二人に減ってはいるが、緊急の依頼や深夜帰りの冒険者の為にこうして遅くまで残っている。
「アルジェントという人物を探しているんだが」
「アルジェント?少々お待ち下さい」
受付嬢はそう言い奥の棚を漁る。最近の依頼達成報告書の中に名前があったのを見かけていた。そこから冒険者の登録番号が分かれば後は資料から探すだけ。
「いらっしゃいますね。先日森の調査の報告を済ませております」
「そうか、俺はここに残る。もしアルジェントが来たら俺に声をかけてくれ」
「かしこまりました」
そう言ってジブリルは壁際の席に腰を掛ける。
「どうどう、いた?」
「該当する人物はいるみたいだ。俺はここに残るがお前はどうする?」
「僕も残るよ」
オーレリーもそう言ってジブリルの向かいに座る。
こうして二人がギルドに来てから十二時間後。アルジェントは現れた。
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森の調査が終わった翌々日。本当は翌日に行く予定だったマルクとの買い物の日だ。マルクたちの疲労を考えて一日は休みに当て、今日はシュラ達とは別行動だ。シュラも付いて行きたいと文句を言っていたが、それだとマルクにしっかりと集中出来ないような気がした。
エリシアスにもこの事は伝え今日は自由行動。
「アルさん、おはようございます」
「ああ」
ギルドの前で待ち合わせ軽く挨拶を交わす。それから移動しマルクのための買い出しと少しの戦闘指南。
「まずは武器屋だな。普段はどこで装備を見てる?」
「ギルド印のです」
ギルド印というのは、その名の通りギルドが認めた優良店及びギルドが経営している店で、駆け出し冒険者だけでなく幅広いランク層に需要のある市場最大規模の武具屋だ。武器、防具、回復アイテムなんでもござれの店が各地に点在している。
多くの店員はギルド職員という扱いになり接客態度も良い。ギルドが抱えている専属の職人もいるため駆け出しは安心して武具を買うことができる。
「ギルドのか、悪くは無い」
ここらで下手に冒険をさせて不良品を掴まされるようなことになっては俺の名が廃る。ここは買い慣れた店でいい品を探した方が良さそうだ。
「よしその店に行くぞ」
「はい」
マルクを連れ立って街の一番大きな店に向かう。そこならば武器や防具だけでなく回復アイテムも売っている。回復役のマルクは持っていた方がいい品もある。
「マルク、その杖は使うか?」
「出来れば使いたいです」
杖はマルクの胸あたりまでの長さで先端には小さな宝石が付いている。長さ太さ共に取り回しが聞きやすい形状でマルクの手にも馴染んでいる。
「腰帯はあるだろ?そこに短剣を二...いや、三本だな」
店に着いたら直ぐに装備を見直し、近くの棚からちょうどいい長さの短剣を取る。
「持ってみろ」
マルクに手渡すと少しぎこちない動きで構える。あまり様にはなっていないがこればかりは慣れだから仕方がない。
「どうだ?」
「よくわからないです」
そうだろうな。だが俺がマルクに持たせたのは一般的な探検で抜刀から納刀、刺突斬撃打撃。どの動作でもいい代物だ。他方の特殊な形状のものと違って汎用性が高い。後衛のマルクでも慣れればそれなりに扱えるはずだ。
「利き手は?」
「右です」
「杖は普段どっちで持ってる?」
「左手です」
本来、杖というのは魔法の成功率を上げるためのものだ。先端に付いた宝石が媒体となって魔法の補助を務める。マルクは利き手と逆に持っているようだがそうなると右手は普段何に使っているのか。
「その間右手は?」
「イメージ作りに...」
イメージ作り。マルクは回復職だ。対象に魔法をかけるにはイメージが大切だ。そのため右手を相手に向ける。理には適っている。そして利き手が空いているという状況は悪くない。
「右の腰帯に二つ、左に一つだな」
俺は迷わず六つの短剣を買う。三つはマルクの腰に装備させ残りの三つは自分の腰に。
「お金払います!」
「いいよ、どうせ余ってる」
嘘だ。余ってはいない。だが、俺はあまり装備にお金をかける人間でもない。そのうち余って持ちきれなくなるのは目に見えている。だからここは先輩冒険者として一肌脱いでやろう。
「お前が装備を新調し稼ぐようになればそのうち俺に返ってくるかもしれないだろ。遠慮なく受け取れ」
「あ、ありがとうございます」
マルクはまだ、遠慮しているのか渋々とそう言った。だがここで終わるわけがない。やるからには徹底的にだ。次は防具である。武器エリアから防具エリアへと足を向ける。
マルクには防御力も足りていない。白い外套に緑の線が三本入っているそれは内側には何も装備していない。よくこれで今まで生きていたものだ。
「マルクの場合は足がないから重いのはダメだな。必要最低限で急所を守れればいいか」
手近にあったライトアーマーのサイズを見ながらマルクの身体に当てていく。
肘、胸、膝。必要最低限で守りを固める。関節部位は動きを妨げないような作りのものを。胸は貫通力に対して丈夫で軽いものを選ぶ。
「後はグリーブか」
最後に見たのは靴と一体化した長靴だ。脛を足を守るだけでなく攻撃にも使える。硬い長靴で蹴りを入れればそれなりのダメージが期待できる。
「何から何まですいません」
「気にするな今度何か奢ってくれればいい」
「はい!」
もうマルクは気持ちを切り替えたようだ。それに次に会う約束というのは冒険者の間では生きて帰ってこいという意味もある。そういう意味で人間の考える事は面白い。
「マルク、午後は特訓だな。探検の使い方と身のこなし、後は装備の感覚の確認」
「はい」
午後の予定をテキパキと決めていく。マルクはやる気に満ちた表情をしていた。パーティの役に立てていないのが本当に悔しいようだ。




