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かつて魔王の冒険者  作者: 森の小豆
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大剣と小躯

俺の尋問官サリーが、

「私の前では嘘は通用しないと思え」

と、啖呵を切ったことで俺への尋問は開始された。


「では、お願いしますね」

そう言うとサリーは何かを机の上に置いた。

「私は見通すことを生業とする者、テルムだ」

「喋った!?」

俺が今見ているのは、緑色をしたもじゃもじゃのなにかである。喋ったことからおそらく魔物であると思うが、しかし俺はこんな魔物を知らない。

「テルムだ!」

俺がずっと黙っていることに痺れを切らしたのかもう一度自己紹介をするテルム。

「ああ、よろしく」

つい苦笑い気味になってしまったがテルムは満足したように頷く。頷いてんのかわかんないけど。

「では始めます」

サリーが何かの紙を取り出した。


「アルジェント、あなたは魔族ですね?」

こうして、いきなりにも俺への尋問が開始した。

「いいえ」

「...」

「あなたは魔族の使者ですか?」

「いいえ」

「...」


こんな感じで進んでいくのだろうか。さっきからテルムは黙ったままだし、なんでいるんだこいつ。

「あなたは何者ですか?」

ついにサリーは二択ではなく言葉で答えさせる質問に変えたようだ。

「俺は人間、Dランク冒険者だよ」

「...本当にそうか?」


テルムが喋った!?

今度はさっきとは違う意味で喋った事に驚いた。とうとうテルム自身からの質問が来たのだ。さっきまで(だんま)りだったテルムだが、今の俺の言葉に何か違和感を覚えたのか口を開いた。

「そうだな、嘘偽りは無い」

「...」


「これで質問は以上だ」

俺とテルムの数回のやり取りが終わるとサリーが場を仕切るように声をかけた。

「テルムさん、真偽の程は如何に」

「嘘は付いていない。ただ、真実も語っていない。こいつには何か隠していることがある。要観察」

結構痛いところを突くな。確かに元魔王であることを隠している。それをこいつはぼんやりとだが理解している。鋭い奴だ。


記録係の指が軽快な音をたてている中、サリーたちとの睨み合いが続く。

「そうだ、俺はこれから街を出る予定だがどうするればいいんだ?」

「それは困るな、今出ていかれると指名手配して二度と街に入れなくなるか、今の時点で拘束して牢に入れることになる」

つまり他の街への追っ手は来ないということか。おそらく領主の問題だろう。他の領地へ私兵を動かすと敵対行為とか宣戦布告とかそういうふうに捉えられてしまうかもしれないからな。


「分かった、とりあえずはこの街に残ろう」

俺がそう言うとサリーは少しだけほっとした様子で息をついた。




役所での聞き取りが終わった翌日、俺は無事に役所から解放された。


「アル、おかえりなさい」

宿に戻るとエリシアスが出迎えてくれた。出会い頭に抱きつかれたが、それをさりげなく躱す。


「一日で済んで良かったよ」

正直、今問題を起こしてこの街に居れなくなるのは困る。この街にいればいずれはSランク冒険者になれる。

「とりあえず、エリシアスはこの部屋を守っててくれ外に出たい時は戸締りよろしくな」

大事なことを伝え、とりあえず着替える。


「そう言えばお前血はどうしてるんだ?」

ふと疑問に思ったのだが、吸血鬼はその名の通り血を吸う生物だ。血液を摂取しなければ生きてはいけない。

「一週間に一度だけ、山賊とかを襲ってたわ。あなたがいなくなってからは本当に大変だったんだから」

俺が魔王だった頃は相互吸血でなんとかなっていたが、俺が死んでからの十二年間は血を共有する相手がいないため何者かから奪う必要がある。

太古からそうして生きてきたために吸血鬼というのは忌み嫌われ恐れられてきた。

相互吸血を考案したのも実は俺だったりする。ただ、吸血鬼にとっての相互吸血というのはそういう意味を持つ、と考えられている。

俺は別にそういうつもりで考えた訳では無いのだが、多くの吸血鬼の間では相互吸血は気を許した相手としかしないらしい。


「それで、次はいつなんだ?」

「実は昨日から喉が渇いてて...」

吸血鬼にとって喉の渇きとは命に関わる症状で、飢餓状態に陥ると正気を失い、やがて灰となる。二日くらいなら耐えられるが一週間放置すれば並の吸血鬼では死んでしまう。

俺も出来るならば一週間置きに血を吸っていた。

「今すぐ飲め、かなり我慢してただろ」


俺は上着を脱ぎ首筋を晒す。

「ごめん、ありがとう」

「今更だ、気にするな」

エリシアスが八重歯をたて俺の首筋に噛み付く。血の抜ける感覚はやけに懐かしく少しこそばゆい。

「アルの、濃いのが入ってくる...(魔力が)」

「バカ、お前吸いすぎだ...」

今の俺は吸血鬼ではないため血を吸う必要は無いが、血がなくなれば死ぬのは同じ。余り血を抜かれると意識が無くなってしまう。

「前よりずっと濃い(魔力が)」

血を吸うエリシアスの表情は恍惚としていて、頬は赤く染まっていた。息も荒くとても正常な状態ではない。

「もう終わりだ、流石に死ぬ」

少し強引にエリシアスを引き剥がす。

「あっ...」

どこか残念そうな顔のエリシアスだが、これ以上は本当に死んでしまう。

「お前は加減を知らなすぎる。昔もそうだった...」


俺は長々と昔のことを思い出しながら話した。


「ふふ。なんか懐かしい、この感じ」

「そうだな」

こうしてエリシアスと言い争いをするのもかなり懐かしい。エリシアスは十二年も俺のことを待っていてくれたのだ。

「そう言えばなんで俺がここに居るって分かった?」

「あなたが転生の秘術を使ったって聞いたから旅をしてたの」

エリシアスの話を聞くと、俺が転生の秘術を使った日、俺が死んだ後の城に遊びに来たエリシアスはそのまま俺の魂を探しに旅に出たと。そして十二年たった頃に、俺と同じ魔力の反応を感じたから近くまで来たら、見つかった。概ねそんなところだ。

「まぁ何にせよ、この街からは当分出られない。俺の疑いが晴れるまではのんびりと行こうか」

エリシアスも納得はしたようで、後はオリシスにもまだこの街に滞在することを伝えるだけだ。


「忘れるところだった。剣を受け取りに行かないと」

俺が頼んだ剣が出来上がるのが一ヶ月程。もしかしたらもう出来てしまっているかもしれない。あのドワーフのことだ、遅れたら怒られるかもしれない。基本無口な奴ほど怒らせると怖いんだ。



「...」

ポールの店に訪れた俺たちだったが相変わらず挨拶のひとつもない。

「出来てるか?」

「ああ」

ポールはそれだけ言うと奥の部屋から一本の剣を持ってくる。

「注文通りのでかさだが、大丈夫か?」

ポールから身の丈ほどの大剣を受け取り手に持つ。

「店ん中壊すなよ」

ポールはそれだけ言うとまた自分の席に座る。ただし絶対にこっちから目を離そうとしない。そんなに信用ないだろうか俺は。

見た目まだ子供だから仕方ないっちゃ仕方ないが。


「うん、良い重さだ。これなら多少硬い相手でも斬り伏せれるな」

軽く素振り...は、睨まれたからしないけど、柄の部分もよく手に馴染む大きさだ。これなら慣れるのにも時間はかからないだろう。

「ありがとうポール、何かあったらまた来るよ」

「雷霆竜の頭だが、余った素材はどうする?」

「んー、ポールにあげるよ」

「本気で言ってるのか?」

何だか、今日のポールはよく喋るな。何かあったのだろうか。それとも俺が言ったことが予想外すぎて言葉が自然と出ているのか。明らかに後者だな。

「いいよ、いつでも手に入るし」

「いや、雷霆竜ってのはレアモンスターだぞ?」

「それでもいいんだよ。今の俺には必要ない。まだ用事があるからもう行くぞ」

俺は出口を目指しエリシアスを連れて歩く。

「ちょっと待て、」

まだ何かあるのだろうか。

「金払え」

すいません。

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『かつて魔王の冒険者』を読んでいただきありがとうございます まだまだ発展途中ですが、賛否両論の評価を受け付けております。些細なことでもコメントしてくれるとありがたいです。 これからもよろしくお願いします!
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