冒険者ギルド
都市ハルクーベン。
人口二万人ほどの都市で、貴族ベイジット卿の領地である。ここに暮らす人々はこの領主をとても尊敬している。適切な税金に、政治的発言権も強く、しかもその権力を振りかざすことの無い人柄。
そんな人物の収める街は活気づいていた。
ドワーフの工房から聞こえる金属音。
猫人の経営する焼肉屋の香ばしい香り。
仲間内で談笑する冒険者たち。
通りを歩く人達の表情はとても明るかった。
そんな中を俺は1人で歩いていた。
「いつ来てもいい街だな」
木と石で造られた街並みを長めながらそう呟いた。
「この街の冒険者ギルドはどこにあったかな」
フラフラと人波に流されるように移動していく。途中、武具屋などもあり興味をそそられたが今は金がない。
またの機会に訪ねようと心に決め、さらに流されていく。
街の中央付近にまで流れてくると、一つだけ大きめな建物が見えてきた。
「あった」
見ると建物は四階建てで、一階は少々の酒場と受付カウンターがあった。
入口から見て部屋の右奥に受付カウンター、そして左側に酒場用のカウンターがあった。
俺は迷わず受付カウンターに向かう。
「冒険者の登録はできるか?」
受付にいた女性に声をかけると、
「あら僕、お母さんは?」
と、返されてしまった。
「死んだ。それで冒険者になりたいんだが…」
「ごめんなさい。規則で冒険者には15歳以上にならないとなれないの」
受付嬢は申し訳なさそうにそう言った。ごめんなさいにはきっと2つの意味が込められているんだろう。
「そうか。邪魔をしたな」
俺は少し残念に思いながらも冒険者ギルドをあとにする。
しかし、15歳以上か...。
これは少し予想外だった。
俺はあまり人間の世界のルールに詳しくない。冒険者になるのに年齢制限があったなんて思いもしなかった。実力至上主義で、強ければなれると思っていた。
しかしそうなるとこれからどうしようか。
冒険者になって生計を立てる予定が、それをするには最低でもあと2年経たなければならない。それだけではない。この見た目ではどこの店でも雇ってはくれないだろう。困った......
「待てよ...あの方法なら」
俺は1つの方法を思いつきそれを実行に移すことに決めた。