ドワーフのポール
ギルド本部の前でセイブンと別れた後、俺はあの武具屋へと来ていた。
店の名前は〈宝剣の楔〉街の路地裏の小さい工房だが、武器の質は十分。俺は店の戸を開けて中に入る。
「...」
店主のドワーフはチラリとだけ見て、また商品の手入れに戻ってしまった。相変わらず無愛想な男だ。
まだ二回目だが、何故かここは居心地がいい。店主は無愛想なのに。
「今日はあんたに頼みたいことがある」
今日の俺はお金もあるから大抵の物は買えるだろう。
「魔剣か?」
「いや、違うけど」
俺がそう言うと、店主の眉毛がピクリと動いた。この男の表情が動くとは少し意外だった。まだ二回目だけど。
「魔剣じゃなきゃなんだってんだ?」
「雷霆竜の素材で剣を作って欲しい」
「ほう」
俺は背中に持っている雷霆竜の頭を床に下ろす。入って来た時から持っていたのだがこの男は少しも驚かなかった。
「状態のいい素材だな、買ったのか?」
「狩った」
店主は立派な顎髭を手で撫で付けながら何かを考えている。
「お前さんランクは?」
「Dランクだ」
「武器っていうのはな自分の実力にあったものじゃなきゃいかん。出なければ武器に殺されることになる。お主はそれを理解しているか?」
何やら難しいことを言っているようだが、理解できないことじゃない。つまりは、武器の性能に頼り切った戦術では本当の窮地を脱せないということだろう。
「いいだろう、ただし金はかかるぞ?」
俺が頷くと店主は武器製作を引き受けてくれた。
今回の武器はおよそ十五万ゴールド。かかる時間は一ヶ月だという。それまでは今の剣を使うが壊れないという保証もない。素手で戦うというのもいいが華がない。そういう理由で戦っているから勇者に倒されたんだがな。
料金は後払いで言いそうだが前金はしっかりと持っていかれた。そのあとは武器のサイズやグリップの要望などを聞かれた。
今回の武器では、前世に出来なかった身の丈ほどの剣にした。前世の身長は190cオーバーだったから狭い所での戦闘に使えないため作れなかった。しかし、今の身長は150程度。悲しいことにこれ以上伸びる見込みもない。
それくらいの大きさであれば広い迷宮での取り回しに不便はない。俺は迷うことなく要望を伝えた。
「持てなきゃ意味が無い。これを持ってみろ」
店主はそう言うと大戦斧を手渡してくる。流石ドワーフだけあって、六十KGはありそうな物を軽々と持ち上げる。
「良い重さだな」
俺はそれを手の中でクルクルと回し様々な構えをとる。それを見ていた店主の表情が先程以上に動いた。驚愕だろうか。少しだけ目と口を開けている。
「分かった、とりあえず要望通りに作ろう」
こうして無事に俺の新武器の作製が決定した。
ちなみに、後でギルド職員に聞いたのだが、あの店主のドワーフはポールと言う名前らしい。ドワーフではあまり聞かない紳士的なイメージの名前だな。




