衛兵と副長と処罰
「なんで中から出てくるんですか!?」
俺が雷霆竜の頭を持って外に出ると、衛兵の男が声を上げた。
「これが原因の雷霆竜だ」
「いつ入ったんですか!?」
俺の話なんか聞かずに衛兵は詰め寄る。
「普通にお前の横を歩いて入ったぞ」
「は?」
衛兵は信じられないようで、
「とにかくギルドに行って処罰してもらいますよ。規制を守らなかったんですから」
「え...」
今度は俺がピンチのようだ。立ち入り禁止の所に入ったことでギルドに処罰されてしまうという。それは困るな。
「なんで俺が処罰されなきゃならないんだ。迷宮への侵入を許したお前の責任じゃないのか?」
「ぐっ、たしかに、...」
衛兵は動きを止め振り返る。自分の境遇にも気づいたのか葛藤している。
「いや、俺のことは濁して報告しよう!」
クズだな。衛兵は開き直って完全に私情をはさんでいる。
「俺とお前は一蓮托生か。処罰は一緒に受けてもらうぞ」
俺は一応衛兵の逃げ道を塞いでおく。
俺たちはギルドへと行き、事情を説明すると奥の応接間に通された。
「君の名前は?」
「私はマースの迷宮専属衛兵、セイブン・クォークです」
「俺はDランク冒険者、アルジェント・ローランドだ」
俺達が名乗ると目の前にいる人物、ギルド副長は紙をペラペラとめくる。
「ギルドは何かを罰する場でも命令する場でもありません」
副長は落ち着き払った様子だが、セイブンはソワソワしている。俺が不遜な態度をとったときも目と口をあんぐりと開けていた。
「ギルドの直属の衛兵ではないセイブンさんはギルドでは処分しかねます。そのため、役所の方に連絡をします」
「はい」
「アルジェントさんはギルド規則に則って処分させていただきます」
まぁそうなるだろうな。
「ちょっと待て。俺は雷霆竜の討伐を果たした。その功績は鑑みることはできないのか?」
「アルジェントさんがやらなくても精鋭の冒険者たちがあの場に集まっていました。つまり余計なお世話だったということです」
副長は落ち着いて優しそうな人相だが性格はねちねちしている。言い回しがいちいち挑発的で、俺が失言するのを待っているみたいだ。
「そうか、なら処分はどういうものなんだ?」
「選択肢が三つあります」
一つ目は罰金による処罰。規則違反の重要度に応じて払う金額が変わる。今回の俺の場合は十万ゴールド。払えない金額ではない。それに雷霆竜の魔石もある。あれを換金すれば軽く二十万ゴールドはいくだろう。質も魔力の純度も高いからな。
二つ目は数日間のギルド施設の使用禁止。これは稼ぎが無くなるため、貯金のない人間には相当な痛手だ。俺は買いたい装備もあるし、小竜の食事代もある。この選択肢はない。
そして三つ目がランクの格下げ。SランクならAランクに。Fランクなら資格の剥奪。これもないな。となると俺の選択肢は罰金だ。
「分かりました。では明日十万ゴールドの徴収に参りますので 定宿で待っていてください。今払えるなら払っていただいてもいいですが?」
「いや、明日までに用意しておく」
「お願いします」
こうして無事に事情聴取が終わり俺たちは開放された。
「お前はなんであんなに態度がでかいんだ!?」
セイブンは言葉遣いがすっかり変わり素が出ていた。先程までは業務用というか、仕事上の喋り方なのだろう。
「冒険者だからに決まってるだろ!」
「子供なんだからもっと自粛しろよ」
「俺は子供じゃねえよ!」
見た目以外はだけどな。今の俺は見た目がほぼ子供だ。十五歳にしては大きい方だが、最近身長が伸び悩んでいる。このまま身長が止まってしまったら俺はいつまでも子供だと馬鹿にされてしまうかもしれない。それに俺は元魔王だぞ。こんな糞ガキに子供扱いされるなんて御免だよ。
「言っとくけど俺はSランク冒険者になるからな?その時謝っても遅いんだぞ?」
「へー、頑張れよ」
絶対信じてないなこいつ。この調子だと俺が雷霆竜を倒したのも信じてないな。
「この後役所にいくんだろ?頑張れよ」
せめてものおかえしに現実を思い出させてやる。セイブンは見るからに肩を落とし去っていった。




