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第十話 14歳 正騎士叙任

 ―――本日王宮内大聖堂にて、新任の正騎士の叙任式が執り行われている。


 壇上には、国王陛下、王太子殿下を始めとした王族方と、司教ら高位聖職者が列席している。さらに会場奥には、宰相、大臣などの主要貴族らと、師団長以上の上位騎士らも式に立ち会っていた。この国では、見習いである准騎士が、1年に一度の考査を経て正騎士への昇格が認められる。将来的な王国軍上級職に就く可能性がある人間となるので、その考査内容は剣術、馬術などの実技はもちろん、兵法、地形学、気象学などの知識、さらには礼節などの立ち居振る舞いに関する高度な教養が求められる。一般的には10歳から15歳の間が見習いとして下積みをし、その後20歳くらいまでに能力に応じて昇格する。

 しかし、幼少から王宮勤めを始めても、一生を准騎士で終える騎士が大半だ。本人の能力と同時に、ある程度の生家の身分も重要になるからだ。実際に正騎士に昇格できるのは100人に一人とも、200人に一人とも言われている。


 今年の正騎士昇格対象は、6人ほど。その中に、俺とルーシアの姿もあった。


 「エリック・カーシウス前へ」

 「……はっ」


 名を呼ばれた俺は、短く返事をしゆっくりと壇上へと歩みを進める。今日だけは伝統に乗っ取り、全身を甲冑で包んでいるから、一歩一歩進めるごとに、カシャ、と金属音が鳴り響く。また、背に流している厚手の紺色のマントが、ずっしりと重さを伝えて来る。まずは司教の前に片膝を床についた。その後頭を深く垂れる。


 「神の御名の下に、新たな剣となり盾となる若者に祝福を与える」


 厳かな司教の声が響いたかと思うと、頭上から細かな水雫が降って来た。聖水だ。正騎士はこの聖水によって、一度それまでの穢れを払われ、新たな身となって悪魔と戦う力を得ると宗教上の考えがあるからだ。


 その後、国王陛下が正騎士にのみ許される上位騎士の証が刻印された剣を手にし、抜き身の刃で騎士の肩を三度叩くのだ。

 

 「神の御名の下、この者エリック・カーシウスを新たな正騎士に叙す。汝、常に勇ましく、礼儀正しく、忠誠であれ」

 「神の御名の下、私エリック・カーシウスは神のため、王のため、民のため、常に勇ましく、礼儀正しく、忠誠であることを誓います」


 誓いの言葉を告げた俺に、国王陛下は鞘に納めた剣を下賜する、俺はそれを膝をついたまま拝受し、両手で頭上に掲げ持った。


 立ち上がると、壇上から立会人らを見下ろす。

 

 そこには、順番を待つルーシアの姿もある。今日ばかりは彼女も全身鎧に身を包んでいる、緊張した面持ちだがその目には、以前国王陛下に准騎士になることを打診された時のような、心細げな様子も迷いも見えなかった。もちろん、ウェスティンの事件の時のような頼りない雰囲気も完全に消えていた。王国唯一の女騎士になることを、彼女は受け入れ腹を括っているようだった。


 本当に、彼女は決めたのだ、騎士として生きることを。


 彼女が決めた以上、俺も腹を括るしかない―――前だけを見て進むと。


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