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学校1

あれから、数日が経ち、美琴は新たな住処としてガラクタ置き場に隠されていた小屋に住み着き、制服に着替えて朝食としてのエネルギーゼリーを食していた。

この学園にはカースト制度があり、神器を使う神子の中で優秀な生徒を上層、一般的な技能を持っている生徒を中層、そして一般よりも劣っている者たちを下層と呼ばれ、美琴はその中でもどのカミサマの神器を扱うことができない最下層に位置している。

そのせいか、食事はエネルギーゼリーを支給されるだけで、それ以外は自分で何とかするしかない。

中層で人並みの食事、上層ともなればレストランを利用できる。


「ねえ、いつも思うんだけどさ、それだけで足りるの?」


自称カミサマ(美琴曰く)であるナルビィは美琴のことを心配し、そう問いかけたが、美琴は意に介することなく、エネルギーゼリーの入っていたパックをごみ箱の中に捨て、カバンを手に取った。

 教室に着くと、教室に早く着いていた中層から上層の生徒達がそれぞれのグループを作って談笑していた。

美琴はその輪には入らず、ただ一人、自分の席に座った。

美琴の机は傷だらけであちこちに傷がついていた。

一部の生徒達は美琴が座った時、にやにやとした気色の悪い笑みを浮かべ、美琴を笑っていた。


「ねえ、笑われているけど良いの?」

「気にするな」


美琴は興味なさげに机に突っ伏し、欠伸を掻いた。

そうしていると、下層の生徒達が大慌てで教室に入り、みんな息を切らせながらそれぞれの席に座った。

見ていた中層、上層の生徒達は大笑いしていた。

もはや見慣れた光景だと言わんばかりに美琴は興味もなく、ただ横目で見るだけにしていた。

やがて時間が経ち、このクラスの担任と思われる中年の男性が入ってきた。


「朝のホームルームを始めます、皆さん、静かにするように」


 担任の一言で生徒達は静まり返り、担任はそれを確認すると話を続けた。

その話というのも、いつものと変わらず、ただの事務的な報告であり、それが終わると直ぐに授業が始まった。

授業は何の滞りもなく進み、昼休みの時間となった。

美琴は購買部に向かい、適当な総菜パンを購入し、人気の少ない校舎裏で食べ始めていた。


「ねえ、みんなと食べなくてもいいの?」

「俺に親しい友人などいない、この学園はそう言う場所だ」


ナルビィが美琴のことを心配し、問いかけたが、美琴はぶっきら棒に答え、総菜パンを食べ終えた。

食べ終えると美琴は様々な格闘技の動きを取り始めていた。

美琴は神器が使えない、だからこそ自分の体を鍛えてそれを補っていかなくてはならない。

だが、それでも神器の圧倒的な力の前ではあまり意味がなく、負ける。

それがわかっていても美琴はそれを辞めない。

辞めてしまえばそれはカミサマに負けたということを認めることになる。

絶対に認められない、それを認めてしまえば自分の心は折れてしまう。

美琴はそのことを熟知している。

だからこそ辞めることはない。

ナルビィはそんな美琴を見て、どうしようかと考え始めた。

その時、三人の男子生徒達が美琴の元にやって来た。

生徒達は気味の悪い笑みを浮かべていた。


「何の用だ?」

「神無月君、そろそろ諦めたらどうかなぁ? いくら頑張ったって君は所詮最下層なんだし、それから君が勝ちあがることなんて出来ないよ」

「お前はどのカミサマにも見捨てられているしな」

「そうそう、お前はさっさと学校辞めて大人しくお家に引き籠ってろよ」


 三人の男子生徒は口々に美琴を侮蔑していたが、三人目の言葉を聞いて、美琴の目が憤怒に染まり、三人目の男子生徒の腹を思いっきり蹴り上げ、三人目の男子は壁の方に飛んでいった。

三人目の男子瀬音は壁に激突し肺の抜ける感覚を体験しながら崩れ落ちた。

それをきっかけに残り二人の男子生徒も美琴に襲い掛かってきた。

一人目はボディブローで沈め、二人目は殴り掛かってきた腕を躱して、そのまま足を払って転ばしてから蹴り飛ばした。


「ふぅ……こんなものか」

「強いんだね、美琴は」

「いや、今回はこいつらが神器を持っていなかっただけだ」

「それって、神器が無ければこいつらは弱いってことだよね?」


美琴は制服に着いた埃を払い、ナルビィは感心したように美琴をほめた。

だが、美琴は襲撃してきた三人の男子生徒が神器を持っていなかったことを言い、ナルビィはすぐに思ったことを言った。

美琴はそれを聞いて何も言わなくなった。


「お、覚えていろよ!!」


一人目の男子生徒がありきたりな捨て台詞を吐いて三人の男子生徒は逃げていった。

美琴はそれを静観し、これから起こる面倒ごとに頭を痛ませていた。

恐らく午後の授業の模擬戦の時に報復として神器を使って戦う。

美琴には神器はなく、素手で戦わざるを得ない状況になり、神器という絶対的な力の前では幾ら鍛えても勝つことは出来ず、ただ蹂躙されるのが最下層の結末である。

だが、それは今日、覆るとは美琴も予想していなかった。

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