2─XIV(☆)
タミアスタイガーの攻撃対象がフェズへと移行した事を悟った三人は、即座に声を飛ばしながら、フェズの方へと駆ける。
しかし、タミアスタイガーの移動速度には、とても追い着くことなど出来ない。
つまり、フェズが行動を起こさなければ攻撃を食らってしまう──そう言うことではあるが、フェズもこの事態を予測していなかった訳では無い。
フェズは手に持った杖へと魔力を注ぎ、風属性の初級支援魔法「疾走」を発動して自身の素早さを強化する。
そして、意を決したフェズは、そのまま真正面へと駆け出した。
(え!?)
その光景に、ガイアは一瞬混乱した。
無理もない。フェズが真正面に向かえば、即ちそこにはタミアスタイガーが居るということである。
そして、タミアスタイガーはわざわざ自分に向かってくる愚かな邪魔者を仕留める為、牙を剥き出しにして飛び掛かった。
すると、それを見計らっていたフェズは、重心を落として草原に寝そべるような形で姿勢を低くし、走った勢いのまま仰向けの姿勢で一気にスライディングする。
タミアスタイガーが飛び掛かったが故に生まれた地面との間の空間へと滑り込んだフェズは、自分が相手と上下で入れ違いになる形で攻撃を回避したのだ。
フェズは、そこから即座に起き上がりつつ杖を腰のホルダーに仕舞い、攻撃目標を見失って混乱しているタミアスタイガーの方へと踵を返す。
そして、支援魔法で速度が上がっている走行速度を乗せて、タミアスタイガー目掛けて大きく跳躍した。
「あっ!?」
「よしっ!」
タミアスタイガーの方へと駆けつつ、その光景に驚くガイアと、しめたという顔をするシュウ。
跳躍したフェズの身体は見事な放物線を描き、タミアスタイガーの背中に影を落とす。
そして次の瞬間、フェズはタミアスタイガーの背中にしっかりとへばりついていた。
「ガッ……!?」
異物がへばりついたことを感じ取ったタミアスタイガーは、背中のフェズを振り落とそうと必死にもがき始める。
しかし、フェズはその両手足でしっかりとタミアスタイガーの身体を捉え、そのロデオに必死に食らいついている。
そして、ガイア、アスナ、シュウの三人は、巻き添えを食らわないよう、暴れまわるタミアスタイガーから一定の距離を保っていた。
「ガイア、今のうちに攻撃を叩き込めるよう構えとけ!」
「……っ、はい!」
シュウの言葉に従い、ガイアは片手半剣を両手で上段に構える。
アスナも、槍を自身の後ろに回して力を溜めている。
そうして三人は警戒を続けながら、フェズを振りほどこうと躍起になるタミアスタイガーの周囲に陣取っていった。
一方、タミアスタイガーの方はと言うと──その息は若干乱れが生じ、心なしか、その動きには精彩が欠かれているようにも見えた。
そして──
「ガゥ……ッ」
長時間にも思えるロデオにフェズが耐え抜き、疲労が蓄積したタミアスタイガーの動きが停止した。
フェズはその隙を見逃さず、左手でタイガーの背中を掴みながら右手で杖の持ち手の一番下を持ち、それを大きく振りかぶる。
振り下ろされた鉄製の杖の先端は、戦闘開始時にシュウが与えた、頭部の傷へと振り下ろされる。
そして、杖の初撃で傷口が開いたところへ、フェズは容赦なく追撃を加える。
タミアスタイガーはそのあまりの激痛に悶絶し、フェズを振り払おうとするが、その動きに先程までの力強さは見受けられない。
やがて、血塗れた杖の一撃が、脳髄を捉えた。
タミアスタイガーの動きから覇気が失われ、膨張していた筋肉は瞬く間に収縮していく。
そして、大きな隙を作り出したフェズが背中から飛び退いたのを皮切りに、三人は立て続けにスキルを発動する。
「"甲斬"!!」
ガイアの防御無視の一閃が、その獣皮を引き裂き。
「"鼓抉"!!」
シュウの両手剣の重撃が、それを更に抉り。
「"穿閃"!!」
アスナの槍の一撃が決定打となり、タミアスタイガーの瞳から闘気が消える。
そして、シュウがガイアに向かって目配せし──
「決めるぞ!」
「はい!」
その合図を皮切りに、ガイアは再び得物を両手持ちに切り替える。
そして、二人は得物を上段に構え、そこに魔力を注ぎ込む。
「「"渾身斬"!!」」
二つの得物が、重なった掛け声と共に標的目掛けて振り下ろされた。
ありったけの魔力を宿したその刃は、タミアスタイガーの身体を無理矢理すり潰しながら傷口を押し広げていき──。
タミアスタイガーの力無い断末魔が森の中に響き渡ったのは、その直後の出来事であった。
─スキルデータ─
◎甲斬
剣士で習得できる片手剣専用スキル。
攻撃対象の防御力を若干無視して攻撃する。
◎鼓抉
剣士で習得できる両手剣専用スキル。
敵の身体に剣を突き刺し、その部位を抉り取る攻撃を行う。
傷を負った部位や柔らかい部位に対し、大ダメージを与えられる。




