二十二話 賑やか
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朝食を済ませた後、全チームに集合がかかった
テント群から離れた端のスペースに各々集まっている
オキナのような白衣を纏った人や鎧を着込んだ人までそろい、ざわめいていた
さすがにユベシやオハギのような格好は少ない
しかしいないわけではなかった
ここ最近見なかった大勢の人間に少しだけ圧倒される
けれどそれも五十人いるかいないかといった人数でしかない
チーム八月のように仲間を失ったチームも多いのだろう
私はそっと横にいたコガネに半歩だけ近づいた
夜中降り続いた雨は止み、しかし空はいまだ薄暗く曇っている
そういえば日曜日の天気予報は外れてしまった
なんとなく、そんなことを思い出した
ふと、人々の前に設置されていた台の上に一人の男が登った
がたいのいいその男は赤い甲冑を着込み、刀を三本腰にさしていた
大きな咳払いをひとつする
それだけで広場は静まり返った
「今日で三日目だ 我々の異世界ツクヨミへの進出という夢は多くの犠牲と共に予定外の結果を出した 我々は償わなければならない 異世界からの侵入者を殲滅するのだっ 我々の平和を取り戻すためにっ」
男の演説はまさしく熱血という声で広場に響いた
私はこっそりコガネをつついた
「あの人は探索部隊の総指揮官だ 名前はノブナガ」
小さな声で手短に教えてくれた
つまり偉い人ということだろう
長く退屈な熱い演説が終わり、自然と拍手が巻き起こった
私には理解できない
ああいった体育会系は嫌いなのだ
「コガネ、アメちゃん ちょっと挨拶に行こう 報告はしてるけど一応ね」
各々が解散し始めると、アオが微かに嫌そうな顔をして声をかけてきた
コガネも嫌そうな顔をしている
どうやら彼らもああいうタイプは嫌いなようだ
「ほう、あんたがアメか 女だろうが子供だろうが戦いを選んだなら贔屓はしない せいぜい犬死にしないようにしてくれよ ただでさえ装備が足りないんだ、全く」
髭面のノブナガは嫌な奴だった
適当に話を聞き流し、オキナ達と合流した
今日の予定を確認する
「さっきノブナガ隊長が言ってたように使える装備が不足しているんだ 今日はチーム総出で素材集めに出ることになってる」
どうやら、日を追うごとにツクヨミとの重なりが増えてしまっているそうだ
確かに遠くに見えるビルは緑で覆われ、アスファルトの地面から木が生えたりしている
それに伴い出現する魔物の種類も増えてしまった
昨日はまだそれほどでもなかったはずだが、偵察チームの報告ではやはりその兆候は見られていたらしい
連日の戦闘で装備が壊れてしまった者は少なくない
そこで、チームの大半を動員した素材狩りとなったのだ
「今日は私が仕切っちゃうよ~ 開発担当だからねっ」
オキナがどや顔で胸をそらした
「俺とコガネとオハギは偵察チームの補助に入るから別行動をとる くれぐれも無茶はしないでくれよ」
アオはそんなオキナに不安気に言い聞かせている
前衛二人が不在は確かに痛手だろう
しかし先日の戦いぶりからあまり心配はいらないような気がした
「アメも怪我、しないようにな」
ぽつりとコガネは言い残し、アオ達と共に別れる
残ったのはユベシとコナシ、オキナだ
雨が降らなければいいなと、私は曇天を見上げた




