十六話 立ちなおるため
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オハギは猫とユベシが付き添って居住テントへ入っていった
しかしオキナは私のジャージの裾を引き、少し離れたところで芝生に腰を下ろした
「オハギさんはね、もともと一月のメンバーじゃなかったの」
体育座りで彼女はぽつりぽつりと事情を説明してくれた
研究員は全員、ツクヨミの力に対する実験を受けていた
その結果でランク付けされ、オハギはチーム八月のリーダーを任されていたそうだ
そして昨日魔物が出現し、八月は駅への探索に出た
決して強いチームではなかったが、周囲の魔物の強さから考えて十分な戦力だった
しかし、駅の魔物はボスを核に連携を取っていた
進むほど敵は強くなる
気づいたときには囲まれていたそうだ
五人だったチームはオハギだけとなった
逃げ帰ったオハギは本部に報告し、一月に配属された
「帰ってきてからずっと笑顔のままだったの とっても仲良しのチームだったから、自分が泣いてたらきっと悲しむって」
彼女はようやく泣けたのか
チームの仇を失って
オキナは悲しそうに笑む
「ユベシィはずっとそれを心配してたから ありがとね、アメっち オハギさんもきっと前を向けるよ」
彼女達は個性的で、似てないからこそお互いを深く理解できるのだろう
そもそも事件が起きる以前から知り合いだったはずだ
私には見えなかった深い絆を確かに感じた
だからこそ問う
『あなた達はどうして死んでまで戦おうとするの?』
大切な人がたくさんいるのに、自ら死の隣を歩く
私には理解できない
「私達はたくさんの人を自分達の夢に巻き込んでしまったからだよ」
オキナは風に飲み込まれそうな小さな声でそう言った
「もう、誰も後戻りなんてできないんだよ」
彼女の瞳は静かに芝生を映していた




