十五話 其のおとはしずか
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翌朝、朝食を済ませた私達は会議テントに集まった
「とりあえず、アメちゃんに現状の説明をしたいと思う コガネから多少聞いてるらしいけど確認も含めて」
アオはそう話始めた
事の発端は一昨日の夜、長年の研究の成果である異世界への道を繋ぐ儀式を実行したこと
成功すれば事前に組んであったチームごとに異世界へ渡り、調査をする予定だった
「結果は言うまでもなく、失敗だったよ この世界と異世界、コード:ツクヨミは重なってしまった」
アオは無表情で続ける
魔物が現れ、多くの国民が犠牲になった
ただ、魔物はテリトリー内から出る習性がなく、それは県を境としている
「失敗することはある程度予測してたからねぇ 研究所があるところは研究員が、いないところは自衛隊が県民の救助をしてるよぉ この世界の武器はやつらには効かないんだけどね~」
つまり守りながら無事な県へ避難できれば命は保証されるということだろう
国の中枢にも研究員を兼業している人間がいるらしい
だからここまで民間の機関が現状を支配できているのだろう
「補足するのはこれくらいだ あと実験の発案者でありGulliverのボスは今せっせと対応策を探してる 俺達はそれまで魔物の駆逐を続けるのが任務だ」
コガネは苦い顔をしていた
「ねえ、説明はそれくらいでいいでしょ?
さっさと駅の探索を」
突然、痺れを切らしたように黙っていたユベシが話を遮る
アオは一瞥し、口を開いた
「いや、駅の探索はしないよ」
ユベシの顔が驚きに歪む
「しないって……… こいつのせいで探索が遅れてるのよ!?戦力が増えたのは嬉しいけどそれじゃオハギが………」
勢いよく叫び、私をにらむ
状況がわからない
ちらりとオハギを見たが、いつも通りふわふわと微笑んでいる
一瞬、重い沈黙がテントを包んだ
ユベシは泣きそうな顔をしている
「駅にいた魔物のボスは倒した」
コガネがはっきりと、オハギの方を見ながら言った
「駅構内の全ての魔物の駆逐も済んでいる そのほとんどはアメがやったことだ」
ユベシとオキナは驚いた顔でこちらを凝視し、少しだけ時が止まる
はらり、とオハギの頬を涙が伝った
猫が静かにその涙を舐める
しかし雫は止まることを知らず、声をあげてオハギは床に崩れ落ちた
猫はそっとその大きな身体を添わせる
オキナとユベシが慌てて駆け寄った
そのまま抱えあげるようにテントから連れ出していく
そこまで傍観し、迷った
横目で見たコガネは頷く
私は三人の後を追ってテントを出た




