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十二話 新ぴんの

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色々な説明をしようとコガネが口を開いた瞬間、狙ったようにオキナが声をあげた

「はいはーい そういうのは後にして、とりあえずアメっちのお着替えを提案しまぁす 男性陣の目の毒でぇす」

オキナの意味深な視線に私は改めて自分の格好を見た

パーカーは辛うじて繋がっているものの大きな穴が何ヵ所もあいている

ジャージも同様で、お腹や鎖骨の下など素肌が見えていた

恐る恐る視線を上げた

アオは悟った表情で何もない右上を見、コガネは私のお腹を凝視している

コナシは先程から動いていない

私はそっと手でお腹を隠した


オキナの提案で今日はもう解散という流れになった

外に出て気付いたがもう夕焼けも薄まり、暗くなってきている

「向こうに私達の居住テントあるから着替えたら夕御飯かなぁ」

チームの会議テントを離れながら、オキナはふわふわと説明してくれる

猫を抱えたオハギもユベシも無言だ

コガネ達男性は夕食の配給を取りに行っている

オキナは気まずい空気を気にした様子もなく、マイペースに進んでいく

前を行く三人の背中お互いにどこかよそよそしい

あまりチームというような一体感がないような気がする

私がいるからだろうか


入り口の横に一月と書かれたテントが彼女達の家だった

オキナはそこには入らずその後ろのやや小さなテントへと私を案内した

言われるがまま中に入って驚く

そこには整然と、しかしたくさんの装備品が収納されていた

「ここはチームのドロップ倉庫だ 魔物から手に入れたアイテムが揃ってるぞって猫が言ってる」

先程からずっと柔らかい笑みを浮かべたままのオハギが顔を洗っている眠そうな猫を操った

確かに動作はこの世界の猫と似ている

しかし背の高いオハギでも足を引きずるほど大きな獣は、どちらかというと狼や狐に近い顔をしていた

「ふんっ 私が付き合ってあげてるんだからさっさと装備を選びなさいっ」

ユベシがいまだにこちらを見ようともせずに言う

しかしその顔はどことなく照れているようなで、少し頬に赤味がさしていた

よくいうツンデレだろうか

あまり詳しくはないが、文句を言いつつここまで着いてきたのはいわゆるデレというやつか

ならこの人はただ不機嫌なだけではなく照れ屋なのだろう

しかし待たせるのはよくない

私は二人から目を離し、奥へ進んだ


ほとんどが金属製の鎧で、まれに毛皮のようなものやユベシ達のような奇抜なものが並んでいた

着なれないものはやはり避けるべきだろうか

しかしどれもピンとこない

進むうちに防具ではなく武器のある区画へ来た

様々な種類の剣や槍、装飾のされた大きな木の棒や鞭まであった

そのなかの一つを私は手に取った

それは大きめの果物ナイフのようなものだ

柄には細かな装飾が見えるが、くたびれた包帯のような布が乱雑に巻かれている

両刃なので果物ナイフではなくこれは短剣、というのだろうか

片刃だった包丁より使い勝手も良さそうだ

短剣のあった棚には鞘の納まった固定用のベルトもある

私はそれも手に取り、防具の方へと戻った

「お!短剣なんだねぇ 防具の方は決まらない?」

入り口付近で私を待っていたオキナが楽しそうに声をかけてきた

『できれば普段着なれたようなものがいいんだけど』

薄手の鎧に目をやるが、やはりこういうものは着る気になれない

「ふっふっふー とうとうあの伝説の装備の出番のようだね 私は気付いていたよ アメっちを見たときに、それを必ず選ぶと」

オキナが芝居がかった口調で大仰に話し、どこかへ歩き去る

意味は分からなかったが、とりあえず待つことにした


オキナはすぐに一揃えの装備を手に戻ってきた

私は少し驚く

「どうだっ チーム一月の開発担当の名は伊達ではないのだよっ 私が造った装備を貴様にくれてやろうぅ」

オキナはなんのへんてつもないジャージを私に差し出した

いわく、実験時代に羊のような魔物から手に入れた素材で造った品らしい

たしかに僅かにだが手触りが、普及しているものとは違う

ありがたくジャージに着替え、腰に短剣付きのベルトをつけた

なんとなく普通のジャージより心強い着心地に、私は少しだけ肩の力を抜いた

「さあて、飯だ飯だっ 男共も戻っているぞって猫が言ってる」

オハギが言いながら歩き去る

猫はくんくん鼻を動かし、微かに尾をふっていた


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